風水斎シリーズ
服部あゆみ
角川書店アスカコミックス
全18巻
1巻発行日 1993/3/17

家康に江戸の守護を任され、お祓いや占いを生業とする一族の次期首領、風水斎(かざみいつき)の活躍を描く。斎は強力な霊能者だが、霊が見えない(笑)。少女漫画なので、読者の要望に応えたかのような美少年（高校生）である。髪が長いのは、「霊が見えない」のを補い少しでも霊を感知しようとするためだが、この見える・見えないは俗にいう「霊感の強い人が（視覚的に）霊が見えてしまう」という意味の「見える」であって、霊感が弱いわけではない。実体化した化け物のような姿をした霊はもちろん見える。

各話タイトルが作品タイトルとなっているため、単行本も様々なタイトルで出ており、総称して「風水斎シリーズ」となっている。後期には番号が振られた。

第１話となるのが、コミックス３巻にあたる「ダークサイドシティ」に収録の「走霊の家」のはず。除霊のオーダーを受けた祈祷師で、祖父の代理という形である家を訪れる。応対に出たのは鈴木樹奈という斎と似たような年齢の女の子だ。樹奈には兄がいて、斎を見ると「かわいい子」と言って、顎に指をかけてくる。今にもキスしそうな距離感に、樹奈が兄を止めるのだが、そう、この作品にはちょこちょこBL要素が出てくるのである。おそらく、作者の趣味。

この家にモノノケが出るのは、裏の社の下に封じられていたものが、樹奈が裏庭にあった「千引の石」をそうと知らず部屋に持ってきて飾っていたからだった。封じられていたものが、出てきてしまったのだ。

コミックスとしての第１巻は、「死人使い」。ヤクザが、呪術でゾンビを操れる外国人女性（日本に来たがまともに給料を払ってもらえる仕事に就けないでいる）を雇い、ゾンビを操って一儲けしようとたくらんで事件を起こす。そのためにはゾンビを確保しなくてはならない。ターゲットは、病院の霊安室の遺体だ。遺体は呪術をかけられゾンビとなり、自ら歩いて病院を出ていく。

その様子を看護師など病院関係者に再々と目撃され、それを防御するために呼ばれたのが小野武である。斎の従兄弟にあたる。斎は別の案件で知り合った雑誌記者（こいつもゲイであり、ちょっと斎が油断を見せると、すぐに身体の関係を迫ってくる）と一緒に、武が依頼を受けた病院に別件で来ており、二人で事件の解決にあたる。

斎と武の協力関係で、ことの処理にあたることは、この後も何度も出てくる。

四神(青龍、朱雀、白虎、玄武)を知ったのはこの作品。ここにはさらに黄龍が登場。斎は格闘技では功夫を身に付けており、呪術では道教がベースとなっている。自身も道士だと言ってるし、戦闘では九字を切る。九字は、作中、2種が登場する。臨兵闘者皆陣列在前、というアレね。

服部先生の絵を知ったのは、コバルトシリーズ「星子一人旅シリーズ」（今で言うライトノベルである）のカバー絵や挿絵を担当されていたからだ。僕はいわゆる「挿絵画家」だと思っていたのだが、どうやらアニメーター出身の漫画家で、この「風水斎シリーズ」の人気が高く、何冊もの単行本が出ていると知った。

ただ、女の子から借りて少女漫画を読むことはあっても、自分で買ってまで読む、ということはしなかったのである。予算の都合だ。その後、徐々に集め始めて、１５冊ぐらいは所持できた記憶しているのだが、今回の整理の際に、紛失していることに気が付いた。そして、やっぱり持っておきたいなという衝動に駆られた。で、どうせなら全巻欲しいな、とも思った。

幸い、古書で全巻セットがあったので、購入。

漫画喫茶落ちのようでゴム印があったり、管理タグでもつけていたのかカバーと表紙にパンチ穴まである。どうりで600円と安すぎたわけだ。しかし満喫がなければ全巻セットなんて困難だったろうし、満喫は古書に貢献してますねえ。

風水斎シリーズは、このような「悪霊退治」的なものもあるが、斎が風水家の総量であり、またパワーも一番強いこともあって、風水家の内部での抗争なんかもからんでくる。ただ、常に１００％敵対しているわけでもなく、利害が一致すれば協力関係になることもある。

決定的な対立相手がいるというわけでもないから、もっと長く続けようとしたら、続けられたことだろう。絵柄に古さは感じるけれども、漫画家さんの描く絵は少しづつ変化するものでもあるし、よしんばそうならなかったとしても、十分、現在でも通じる画風だ。１８巻で終わっているのは残念だけれども、この頃の作品としては、ここまで連載が続くんはやはり支持者が多かったからだろう。１８巻で終わっているのが残念である。