缶コーヒーの女神

根岸岳春

小学館クリエイティブ　ヒーローズコミックス

全３巻

１巻発行日　2022/6/30

１巻カバー絵になっている女の子が、ブラックコーヒーの女神、「ムトウ」ちゃん。缶コーヒーを差し出すときの手の添え方や、大きく口を開いた笑顔。この表情を見ただけで、本当に癒されそうだ。帯にも「飲まれたからには必ず癒す」と書いてあるから、それが彼女の信念なのだろう。

いや、だが、しかし。彼女の持つ缶コーヒーがなにやら怪しげだ。ドクロと鎌の絵が描かれている。そう、実はムトウちゃんは、癒してなどくれないのだ。帯には「癒す」とか書いてあるけど、タイトルを見ればわかる。「缶コーヒーの女神」というタイトルだが、どこにも「必ず癒して差し上げます」というニュアンスなど含まれていない。

１巻１話。失恋した女の子に優しい声をかけるムトウちゃんの姿がある。でも、その子がホロリとしかけた途端に、態度が豹変する。

「そんなことだから、男に騙されるんだよ。おまけに私にまで騙された」と、ひどい言葉を叩きつける。

まあ、こんな風な酷い性格なのはムトウちゃんだけで、オーレちゃんなどほかの女神はそのようなことないのだけれど、酷くないというだけで、本当に飲んだ人を癒せているのかどうかはちょっと疑わしい面もあったりする。

漫画の展開としてはもちろんその方が面白いだろうし、読者うけもするんだろうけれど、僕としては甘々展開のちょっといい話みたいな感じで、飲んだ人のうつむいてため息つきたくなるようなエピソードを、ちょっと上向かせるような優しい声掛けや、新しい考え方の示唆で元気づけてあげるような、比較的ワンパターンの物語の方が、好きかもしれないね。

1916