国民クイズ(愛蔵版)
国民クイズ(愛蔵版)加藤伸吉(作画)杉本怜一(原作)太田出版全2巻 上巻発行日2023/5/27合格すればどんな望みも国が叶えてくれる「国民クイズ」。望みの難易度によって合格点数は異なる。それは憲法を含む全ての法律より優先される。ペットの捜索から気に入らない人間の抹殺まで何でもOK。ただし、そのルールは過酷である。まず、予選。望みの難易度によって設定された合格点の50%に達していなければ本選に進むことはできない。本選はテレビ中継され、それは毎日行われる。毎日、500人の合格者? ということは、この国民クイズに賭ける人々がいかに多いか、ということである。この日の本選出場者の「望み」は次のとおり。医師になりたいママにノックをさせて欲しい(ノックなしに自分の部屋に入ってほしくない)癌から救って欲しい隣の奥さんを殺して税金を払わない夫を無罪にして欲しい(銀行強盗をして銀行員を2人、逃走中に警察官を3人、看守を1人殺害)好きなだけお金が欲しい都内にマイホームが欲しい外国産ワインの輸入禁止(山梨でワイナリーを経営している)などなど本選ではまず100問の「ふるい落としクイズ」が出題される。1問正解するごとに100点が加算。合格点は1万点。すなわち全問正解しなくてはならない。決勝進出者は次の6名だった。決勝では、それぞれ設定された合格点数を得なくてはならない。「隣の奥さんを殺して」合格点数1,106,482点「とりあえず100億円」合格点数1,559,802点「自分に辞職勧告した会社の社長にさせろ」合格点数348,915点「愛犬のギルを捜して」合格点数190点「エッフェル塔が欲しい」合格点数60,211,905点「スペースシャトルに乗りたい」合格点数274,605点問題は人数分しか出題されない。出題ごとに自ら賭け点を申し出て、正解すればその点数を獲得、不正解または答えられなければ減点。こういうシステムなので、当然持ち点がマイナスになることもありえる。ただし、賭け点は出題前に申し出なくてはならないので、どこで勝負に出るかは勘と運しだい。合格者はその望みを国が保証している。だが、失格者はそのマイナス点数により「戦犯」としてA~Dの判決を受け、即囚人。人気司会者のK井も不合格者で、刑務として「国民クイズ」の司会をしている。決勝を終えて、合格者は「愛犬のギルを捜して」という少年と、「エッフェル塔」を獲得した横田さんの2人であった。そしてこの後、物語が動く。ここからがストーリーの本番である。このとんでもない「国民クイズ」体制打破をめざし、国民クイズに合格して佐渡島に独立国を立ち上げ大統領となった男が、本土のテロリストと共謀し、日本政府に挑むのだ。国民クイズ体制を潰すために佐渡島共和国とテロリストグループは「特攻回答者」を送り込む。合格すれば日本政府が何でも望みを叶えるクイズ番組。毎日ゴールデンタイムに放送され視聴率もバツグン。ここに不正を捏造し、人心を国民クイズから引き離すことが狙いである。その方法は、番組中に南硫黄島から送信される問題を傍受し、瞬時にコンピューターで回答を割り出し、特攻出演者に通信することだが、そううまくいくのか?そして、クーデターは成功するのか?日本を貶めたい海外各国はクーデター成功を望んでいる。そんな中でこれを成し遂げて果たして良いのか? 読者はクライマックスを前に様々な思いを抱く。クーデターの結末は描かれているが、それで作品内の「国民クイズ体制」の未来が結論づけられてはいない。国民は本当は、国民クイズを望んでいるのか、いないのか。人間の性や業を引きずり出した作品。そして、本当の結論はおそらく永遠に出ないのであろう。この愛蔵版は2023年の発行だが、初出は1993~1994年に連載されたモーニングである。3761