「サラバンド」 | こだわりの館blog版

「サラバンド」


サラバンド


すごい、すごい!イングマール・ベルイマン


11/25 ユーロスペース にて


監督・脚本:イングマール・ベルイマン
出演:リヴ・ウルマン、エルランド・ヨセフソン、ボリエ・アールステット、ユーリア・ダフヴェニウス、他


「野いちご」「第七の封印」「叫びとささやき」などを発表してきた
スウェーデンが生んだ巨匠、イングマール・ベルイマン現在85歳。
そして「ファニーとアレクサンデル」以来、実に20年ぶりの新作映画
「サラバンド」は1974年の「ある結婚の風景」 の後日談。


 30年前に別れた夫婦が久々に再開する。
 80歳を超えた夫(エルランド・ヨセフソン)は今や山奥で隠居生活。
 別れた妻(リブ・ウルマン)も子供達が独立し自身も落ち付いた事で
 別れた夫に会いに来たようだ。
 実に30年ぶりの再会はお互いの過去を洗い流すかのように穏やかであった。
 しかし物語はもう老夫婦の事では進まない。
 夫と息子(ボリエ・アールステット)、
 息子とその娘(ユーリア・ダフヴェニウス)、
 そして祖父と孫娘…
 現在進行形の親子3代の葛藤が剥き出しとなり
 別れた妻の前で進展していく…。


イングマール・ベルイマンというとどうしても【神への反発】など
我々にはわかりづらい要素を作品に含んでいるため【難解】なイメージがつきまとう。
この作品も20年ぶりの新作に胸躍らせつつも、
見る前はその日の自分の体調もあって 「こりゃ寝てしまうか?」の危惧すらあった。


しかしそんな危惧もなんのその。
ベルイマン20年ぶりの新作は【難解】どころか、その緊迫した映像と台詞に眠気も吹っ飛び
画面に吸い込まれながら「すごい!すごい!」とつぶやきの連発であった。
さすが85歳でも巨匠は巨匠、その力量はちっとも衰えていない。
いや、「ファニーとアレクサンデル」同様、
晩年のベルイマンは誰もが共感する【わかりやすい作家】に変貌し、
しかも新作で自身の旧作「ある結婚の風景」 の後日談を取り上げ、
2つの作品の間に流れる30年という月日を無駄にするどころか、
イングマール・ベルイマンという映像作家を、さらに大きく、さらに深くさせているのだから、
まさに驚嘆すべきイングマール・ベルイマン、
驚嘆すべき「サラバンド」であります。


全編動きも少なく夫と元妻、夫と息子、息子とその娘、そして祖父と孫娘が
もう輪廻の世界のごとく3世代に渡る想い、悩み、葛藤といった
剥き出しの会話に終始するまさに台詞重視の展開。
しかしリアルで緊迫感あふれる台詞の数々は映像を停滞させるどころか
デジタルハイビジョンで撮影した鮮明な画像を
さらに一層エモーショナルなものにしている。
台詞といい、映像といい、まさに生涯をかけて【人間】を追求し続けたベルイマンの
「サラバンド」はまさに真骨頂ともいえるのではないか。


なんでもこの「サラバンド」を
ベルイマンは「遺作である」と宣言しているという。
それほど「サラバンド」でベルイマンは【人間】を追求し尽くしたのであろう。
85歳にして過去の作品をさらに【深い世界】にまで到達させた映像作家・ベルイマン。


その姿はもう【崇高】の域にまで達してしまっていると私は思う。


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