坂田藤十郎襲名披露「寿初春大歌舞伎【夜の部】」(その参)
こんな贅沢な床下の場、見たことないっ!
●昨日の続き
●
『伽羅先代萩』【床下の場】は、
歌舞伎の舞台機能を最大限に使った、ものの15分くらいの場。
しかし今回の【床下の場】ほど期待した場もなかったのではないでしょうか。
なにせ荒獅子男之助が中村吉右衛門、仁木弾正が松本幸四郎。
名優そして兄弟が本当に珍しく同じ舞台に立つのです。
この配役の贅沢さ、そしてこのいろいろな意味での貴重さ。
これを見ずして夜の部は何を見るのでしょう。
この場を見るためにチケットを買ったといっても過言ではありません。
【御殿の場】から舞台が一気にせり上がって【床下】に
そして正面舞台のセリから鼠を足で押さえ込みながら堂々と上がってくる荒獅子男之助の播磨屋。
ひとしきり荒事の口上、その台詞まわしの豪快さに動きのダイナミックさ。
これぞ荒事のお手本のような芸、しばし陶酔。
言ってる事はよくわかりませんが
どうも「俺は荒獅子男之助、やっと念願の連判状を手に入れる事ができて嬉しい」と言ってるらしい。
しかし口上を言ってるうちに鼠に逃げられて、逃げた鼠は花道の七三のスッポンにスルリ。
するとスッポンからもうもうと煙が立ちあがり、口に連判状を咥えて、
スルスルと現れまするは悪の権化・仁木弾正、高麗屋。
連判状が再び悪の手に戻ってしまったと慌てた播磨屋は思わず小柄を投げるが、
悪の権化にかなうわけがなく無駄な抵抗。
「ちきしょう!逃げられた」と最後まで何を言ってるかわからぬまま播磨屋の豪快な出は終わり。
幕がスルスルと閉められて、ここからが高麗屋の見せ場。
悪の権化・仁木弾正がニヤリと笑い、連判状を懐に収めて
悠然と花道から立ち去って行く…。
荒事の台詞やしどころ満載の播磨屋に対し、悪の権化・仁木弾正には台詞はひとつもなし。
しかもしどころといえばニヤリと笑う仕草だけで、
あとはいるだけで悪の雰囲気を醸し出さなければならない大役。
この仁木弾正役の高麗屋は前に一度見ているが本当にウマイ。
父親譲りの“悪の華”が舞台上にパッと咲きほこるのであります。
豪快極まりない播磨屋の荒獅子男之助に悪の華が咲く高麗屋の仁木弾正。
待望の共演に、舞台に火花散る15分間の濃密な歌舞伎ワールド。
もう瞬きするのももったいない大御馳走…満足満足…大満足な一幕でありました。
そうそう、「床下の場」でもう9割方、見どころは終わってしまった感じでしたが、
最後の最後に踊り2題がありました。
後半の「関三奴」が中村橋之助と市川染五郎のキビキビした動きで楽しめました。
しかし私の頭の中は、まだ「床下の場」の陶酔感でいっぱい…。
☆人気blogランキング
に登録してます☆
☆ここをクリック
していただけるとうれしいです!☆