第3回入学式でのスピーチで、創立者は言われました。「最後に、私のこれからの最大の仕事も教育であり、私の死後三十年間をどう盤石なものとしていくかに専念していく決心であります。それは、二十一世紀の人類を、いかにしたら幸福と平和の方向へリードしていけるか、この一点しか、私の心にはないからあります。その心から、私は皆さんに、人類の未来を頼むと申し上げておきたい」こう語られました。

 池田先生との対談「対話の文明・平和の希望哲学を語る」を展開されているハーバード大学のドゥ・ウェイミン教授は、2004年1月東京で開催された「第19回国際宗教学・宗教史会議世界大会」に出席し講演を行いました。その席上ドゥ教授が「現代は第二の軸の時代を迎えているのかもしれない」と発言し、一般紙などに大きく取り上げられました。
 この「軸の時代」とはドイツの哲学者カール・ヤスパースが提示した概念で、釈尊、ソクラテス、孔子、そしてキリストの先駆といわれる第二イザヤが出現した紀元前8世紀から紀元前2世紀の時代をさします。この時代にその後の人類の精神世界をリードする思想の原型が生まれたとするものです。
 そしてヤスパースは、農業革命に匹敵する産業革命が起き、世界が大変革を遂げているにもかかわらず、その指導原理たる新たな思想、哲学はまだ現れていない。今こそ第二の枢軸時代として釈尊、ソクラテス、孔子に匹敵する思想家の出現が望まれていると言いました。ドゥ・ウェイミン教授の発言はまさに現代の世界が抱える本質的な危機感に立って、それを克服する思想とそれを説くリーダーの出現を待望しているわけです。その第二の枢軸時代の人類をリードする指導者こそ、創立者池田先生をおいて他にはないということ私たちは誰よりも知っております。
 著名な仏教学者である中村元さんという東京大学名誉教授の著作を読んでいた時に、釈迦教団がなぜあれほど簡単に分裂をしたかということに論及して、実は釈尊の教えを一人の弟子として真剣に実践した弟子はたくさんいた。しかし、釈迦教団の存続という責任感に立った弟子は皆無に等しかった、という言葉を中村さんが書いています。また、違う学者の仏教史の同じテーマに関する著作の中で、実は釈尊滅後の教団が100年から200年をかけて上座部と大衆部に分かれ、そこから更に分かれていったが、実はその分裂の萌芽は、もう滅後50年ぐらいから始まっていたんだと。逆に言えば、なぜ釈尊滅後50年ぐらいは分裂しなかったか。それは、釈尊の説法を直接聞いた弟子が生き残っていたから、という見解を示している。

 私は、この大学の母体である創価学会という団体、これを人類の宝として絶対に永続させたいし、そのことが私自身の道だと、こう思っていますが、実は過去の歴史を振り返ると、そういう分裂というもの、また崩壊、それは善と悪との戦いの中では起きないんだと。そういうはっきりと分かる場合は善が負けるか、悪が負けるかという問題はあるけれども、実は当事者にとっては善と善との対立、正義と正義との対立なんです。その中で、分裂とか崩壊というものが起きていく。
 そういうものに向かって、それをいかに回避する道を作り上げていくか、そんなものは個人の一生という、50年、100年の単位では当然出来ないと思うんです。しかし、何百年という歳月をかけて、そこまで本当にもつかという問題もシビアに見ていかなくてはいけないけれども、やっていかなければならないということを考えると、そこに果たすべき創価大学のあり方、使命は決定的なものがあると見ています。何百年という単位での闘争、関係性、連続性を考えたら、大学という場でしか多分できないだろうということも考えています。今何をなすべきかと問われたら、具体的なことはいっぱいあるが、そういう責任感と自覚にたった創大生としてのあり方をまず自分に問いかけることからすべてがスタートをしていくと思います。その上で、自分が携わった学問の分野、クラブ活動の分野、あらゆる行事での戦い、一つ一つを自分自身に対してそれを問いかけながら、自分の生き方を見ていってほしいと思います。