『おかけください。』
そう会長にうながされ、私は向かい側の席についた。
『佐藤さん、こちらの女性に飲み物を…』
どうも会長お付きのラウンジ担当のベテランらしき女性が近づいてきた。
私はコーヒーを頼むと、会長に話しかけた。
『会長はいつもこのホテルへ?』
『ええ、会員になっていますので。○○さんはどうしてこちらへ?』会長が質問を振る。
一瞬、回答につまった…
まさか、昨晩、『複数プレイしました』とは言えまい…
『リフレッシュに…』無難に流した。
しかし、あと数分、ずれていたら、会長にジュンをみられる事になっていた(汗)
そうなったら、もう、『主人です。』と言うしかなかっただろう(笑)
会長と2人で話をするのは、実に7年ぶりだ。しかも南の島で…
と、ここまで書くとかなり怪しいが、事実はいたって健全だ。
全国に独立採算の会社が三社、それぞれ社長がいる。
全国の支店、営業所合わせて300程。
会社自体はそんなに大きくはないが、誰もが一度は名前を聞いたことのある知名度の高い会社だ。
会長は企業のトップ…つまり、社長もひれ伏すオーナーだ。
なぜそんなVIPと話ができるのか…
毎年全国売上トップ10の支店、営業所長は会長のポケットマネーで海外豪遊ツアーに連れて行ってもらえる。私はそれに参加した。結婚後の事だ。
飛行機、ホテル代はもちろん、タクシー、飲食すべて会長もち、だ。
毎晩高級ワインを飲み干し、豪遊した。
でも…私の本当の目的は、遊びじゃない。会長とさしで話をすること。
そんな事、こんな機会でもなければできないであろう。
食事の後、私は会長を誘った。
『この後、少し会長とお話させていただいても、よろしいでしょうか?』
まわりの支店長どもが、怪訝そうな目でみる。私はお構いなしだ。
『ああ、いいですよ』会長は快く承諾してくれた。
結局、副社長と数人の支店長たちがゾロゾロと付いてきた。
副社長は会長の護衛だ。私が何か、直談判するのかと、思ったらしい。
まぁ、いろいろビジネスについてお堅い話をしました。
私は経営者と話をするのが好きだ。人間力が磨かれる。
そこで話した内容が深く会長の中の印象に残っていたらしい。
会長の言った一言が今でも頭に残っている。
『会社の規模は自分の大きさだ、と…』
で、ラウンジで7年ぶりの再会。
『娘さんもご立派になられて…』私が言った。
『ああ、今でも甘えてくるよ。東京に来るといつも食事をおごらされる。』
会長の娘さんも、また、7年前は無名だったが、今では有名なシンガーソングライターだ。
成功者の娘さんは、異業種でもまた成功するものなのか…
『さ、あまり時間を取らせては申し訳ない。』会長が席を立った。
すぐにラウンジの佐藤さんがきて、
『記念にお写真でもいかがですか?』と気を利かせてくれた。
その時の会長との写真は、私の宝物だ。