さすがに一週間、一睡もできないとなると、5日目くらいからだんだん思考能力が低下してくる。


人間、一週間寝なくても生きていられるんだ…と感心した。




いままで、仕事やプライベート、どんなストレスを受けても、眠れない事など、無かった。


自分はタフな人間だと、思っていた。



異常に気付いたのは会社の同僚と上司だった。



私の言動がおかしい、と言う。


何がおかしいのかは、自分では分からなかったが…



後から聞いた話では 目はうつろで、会話が成立せず、



帰ってくる言葉は



『睡眠って、どうすればできるんですかね?』 の一点張りだったようだ。




朝、出勤してすぐに強制的に早退させられる。



『病院に行ってきなさい』



の言葉どおり、病院に向かう。




とりあえず総合病院かな…



今思えば、よく車を運転していたと、思う。



センターラインが二重に見えたのを覚えている。




病院到着。すぐに看護師らしき女性が近づいてきた。



『眠れなくて…』



そういうと、看護師さんはやさしく言った



『精神科の前に内科に行きましょうね。』



何故か血液検査を受けた。異常なし。




薬を処方され、帰宅した。





その日から、実に半年以上、心療内科を受診し、睡眠剤なしでは眠れない不安定な夜が続いた。




複数プレイ後、私は夜あまり眠れなくなっていた。



興奮状態が続いたのか?


ジュンへの『好き』という気持ちに気付いたからなのか?



ジュンは…どう思っているのだろう。



ふと…ベンツが言ってた言葉を思い出した。



『不倫は恋愛ごっこにしておきなさい。最後は別れで終わるんだよ』



そんな事考えていたら、ますます眠れなくなっていった。





そして…2日後、不眠に追い打ちをかけるようにして、決定的な事件がおきた。



ジュンから、あるメールが送られてきたのだ。



『イベント』とかいてある


添付の写真をみて凍りついた。




そこには…信じられない自分の姿が…


三人の男にからまれている自分の姿。




思わず、目をそむけた。




涙が…とまらなかった。



ひどい…ひどすぎる…



ジュンは…ジュンは私の気持ちなど少しも分かっていない。こんなに苦しんでるのに。こんなに好きなのに。



あの人は私をセックスの道具にして楽しんでるだけなんだ。





でも言えなかった。


『どうしてこんなひどい事するの~!』って叫びたかったけど、言えなかった。


ジュンに嫌われたくなかったから。





その日から一週間、一睡もできない日が続いた。





『おかけください。』


そう会長にうながされ、私は向かい側の席についた。



『佐藤さん、こちらの女性に飲み物を…』


どうも会長お付きのラウンジ担当のベテランらしき女性が近づいてきた。


私はコーヒーを頼むと、会長に話しかけた。




『会長はいつもこのホテルへ?』


『ええ、会員になっていますので。○○さんはどうしてこちらへ?』会長が質問を振る。



一瞬、回答につまった…


まさか、昨晩、『複数プレイしました』とは言えまい…



『リフレッシュに…』無難に流した。



しかし、あと数分、ずれていたら、会長にジュンをみられる事になっていた(汗)


そうなったら、もう、『主人です。』と言うしかなかっただろう(笑)




会長と2人で話をするのは、実に7年ぶりだ。しかも南の島で…



と、ここまで書くとかなり怪しいが、事実はいたって健全だ。





全国に独立採算の会社が三社、それぞれ社長がいる。


全国の支店、営業所合わせて300程。


会社自体はそんなに大きくはないが、誰もが一度は名前を聞いたことのある知名度の高い会社だ。


会長は企業のトップ…つまり、社長もひれ伏すオーナーだ。




なぜそんなVIPと話ができるのか…





毎年全国売上トップ10の支店、営業所長は会長のポケットマネーで海外豪遊ツアーに連れて行ってもらえる。私はそれに参加した。結婚後の事だ。


飛行機、ホテル代はもちろん、タクシー、飲食すべて会長もち、だ。




毎晩高級ワインを飲み干し、豪遊した。




でも…私の本当の目的は、遊びじゃない。会長とさしで話をすること。


そんな事、こんな機会でもなければできないであろう。



食事の後、私は会長を誘った。


『この後、少し会長とお話させていただいても、よろしいでしょうか?』


まわりの支店長どもが、怪訝そうな目でみる。私はお構いなしだ。


『ああ、いいですよ』会長は快く承諾してくれた。



結局、副社長と数人の支店長たちがゾロゾロと付いてきた。


副社長は会長の護衛だ。私が何か、直談判するのかと、思ったらしい。



まぁ、いろいろビジネスについてお堅い話をしました。


私は経営者と話をするのが好きだ。人間力が磨かれる。


そこで話した内容が深く会長の中の印象に残っていたらしい。


会長の言った一言が今でも頭に残っている。



『会社の規模は自分の大きさだ、と…』





で、ラウンジで7年ぶりの再会。



『娘さんもご立派になられて…』私が言った。


『ああ、今でも甘えてくるよ。東京に来るといつも食事をおごらされる。』



会長の娘さんも、また、7年前は無名だったが、今では有名なシンガーソングライターだ。



成功者の娘さんは、異業種でもまた成功するものなのか…




『さ、あまり時間を取らせては申し訳ない。』会長が席を立った。


すぐにラウンジの佐藤さんがきて、


『記念にお写真でもいかがですか?』と気を利かせてくれた。



その時の会長との写真は、私の宝物だ。