私の飲み友達の河原くんは大の競馬ファンだ。子どもの頃から彼のおじいさんとお父さんに連れられて競馬場へ通っていたらしい。


お金をかけていたかどうかは知らないが、子どもの頃からおじいさんやお父さんから手ほどきを受けていたらしい。競馬の英才教育だっ。


彼ともう一人の友人と土曜日に飲みに行くことが多いのだけれど、河原くんは必ず「勝馬」という競馬新聞を持参してくる。

そして「明日の馬を予想してよ」と言ってくる。

とはいえ、私ともう一人は全くわからないので、彼が私たち聞いてくる頃にはすでに決めているので、「この馬でいいよね?」という同意を求めた質問がほとんどだ。

だからテキトーに「それでいいんじゃん。」って全くつれない返事をしてしまう。


彼が競馬に行った日曜日には必ず私たちにレースの結果と反省メールが届く。

さっぱりよくわからないのだけれど、とにかく手堅く勝っているのは事実だ。

さすがだと思う。

ものすごい研究熱心だし勘がよく働くらしい。


それにやたらと記憶力がよく、彼の一年の暦は全て競馬の日程と連動しているし、思い出話をするときもやはりレースや馬を基準に何年の何月に起きたことだと説明してくれる。


会社のデスクには競馬場で買った馬のぬいぐるみを飾ってあるらしい。

外資系企業だからあんまりうるさく言われないらしいので多分ぬいぐるみも増えているのだろう。


こんな筋金入りのファンといたら嫌でも馬の名前を覚えてしまう。


それでも今までは競馬場に足を運ぶことも馬券を購入することはなかった。


でもなぜか今年は有馬記念を買ってみようと思った。

だから軽い気持ちで彼にメールで何を買うべきか聞いてみた。

彼は快く教えてくれた。


初心者の私は賭け金は少額にすること、オルフェーヴルは買うこと、などアドバイスとともに、何をどれだけ買うか教えてくれた。

1000円ちょっとの賭け金だった。

なるほど、この程度なら別にいいやと思った。


彼と買いに行こうと思ったが、一年の締めくくりは有馬記念だという彼にとっては神事といっても過言ではないほど、神聖な行事で私とは全く意気込みも違うし、それに何よりも中山競馬場まで朝早くから行くらしいので、面倒くさそうなのでやめた。


近所に住む兄は有馬記念だけは買うというので、兄と一緒に買いに行く約束をした。


兄に河原くんの自慢をすると、

友達の予想なんか信じず、自分の勘を信じろ!」といってきた。


兄は以前、ビギナーズラックで500円を50万円にしたのだ!


私たちの会話を聞いていた母も馬券を買ってみたいというので買ってきてあげることにした。

たまに日曜日にボケーっと競馬のテレビを見るのだけれど、母は馬の状態を見ると勝敗がわかるらしく、馬券を買わないものの、

母が

この子(馬)、調子いいよ

という馬は勝つことが多く、

馬券買えばよかったね」と言うことがよくあるのだ。


で、12月22日、

いよいよ決戦の日。


兄が迎えにきた。

開口一番

馬券買うんだからさあ、もっとダメ人間っぽい格好しろよ。

といってきた。

ダメ人間の格好がどういうものかわからないでもないが相手にすると面倒くさいのでスルーした。


兄がそばにいた母に「思いついた番号は?聞くと、2-9と答えたので、その番号を500円分買うことにした。

私が「他の番号は?」と聞くと兄はそれを阻止し、初めの勘が大事と豪語した。

なぜ一点買いなのかよくわからなかった。


私は電車で行こうとしたのだけれど、兄が自転車で行くと言い出したので、教えてもらう立場の私としては兄に従い、自転車で行こうとしたがママチャリでかなりの道のりを走り、お尻が痛くなった。

近道しているのかよくわからないが路地裏のような所ばかり通るのでちっとも道がわからずに、ただただ、兄の後をついて行くだけだった。


馬券売り場に着くと、

ワンカップ大関買ってくれば?とまた兄はわけわからんことをいった。


酔っ払いながら馬券買うなんて・・・かなり本格的だぞ・・・


マークシートのようなものに書き込んだ。

1着と2着を当てる馬連(1着と2着が入れ替わっても金額は減るがお金はもらえる)と3連単(1着から3着まで当てる)、3連複(1着から3着の順番が変わっても当たり)などがあり、私は馬連3連単をマークした。


ビギナーズラックを信じて思いついた番号をマークしたが、河原くんのアドバイスも捨てがたい。

馬連で河原くんのオススメも少し買うことにした。(ただケータイを忘れてしまい、なんとなく覚えていた番号を買った)


いよいよ レース開始!


オルフェーヴル強い・・・あんなに後ろにいたのにぶっちぎりで抜いてちゃったよ。

有終の美を飾ったね、まさにレジェンドになるね、このレース!

オルフェーヴル買ってよかった!と思ったのも束の間、私はマークシートを間違って塗りつぶしていた。

レース結果は6-4-14だったけれど、4-6とマークしていた。


ハズレだと思ってがっかりしていたら近くのおっちゃんが私の馬券を覗き込んできて当たりだと教えてくれた。


860円のバック。


兄はゴールドラッシュに賭けていたので外したらしい。


レース後、兄の友達も同じ場所に来ていて、兄はこれからその友達と飲みに行くらしく私に先に帰れと言ってきたので、道がわからないと訴えると、

あの道まっすぐいって右に曲がれば、あとは知っている道だから。


と、かなりテキトーな道順を教えられ、そそくさとどこかに消えてしまった。


兄の言うとおりの道に行ったら行き止まりだった。

知っている道って何なんだよとツッコミたい気分だった。

なんだかだんだん腹が立ってきたが、まずは帰らなくては!


道もよくわからなかったが帰巣本能が働くのかどうにか大通りに沿ってなんとなくテキトーに走っていたら家に着いた。


母にテレビでレースをみたかと尋ねると、始めに馬が紹介された時点で2番と9番の馬は弱そうで、一目見てもう負けだと思ったからテレビを見るのをやめて洗濯物を取り込んでいたといった。


私はふと、河原くんのオススメが気になってメールを読み返すと、彼のとおりに買えば馬連、3連単、3連複、見事に当たっていたことが発覚した。


彼にメールすると大喜びの返信が返ってきた。

860円だけだったの?俺の言うとおりに買えばよかったのに


本当に・・・そうだ。

彼の言う通りに買っていたら・・・


それにしても・・・私のビギナーズラックもかなりショボイな。


母は兄を責めてはダメと言っていたが、河原くんの話をすると、一変した。


夜、兄が家にもどってくると、母が思いっきり兄に文句を言っていた。

あんたが余計なこというから!


えっ???なんで俺のせいになっているんだよ!


とブツブツと文句をいっていた。

いつの間にか悪者にされたと言っていたが全くそのとおり、あんたは悪者だ。


ギャンブルにのめり込まずに済むように、変に当たらなくて良かったのかなと思いつつもやっぱりちょっぴりくやしい。


桜花賞か皐月賞で挽回してやると密かに思っている自分がいる。


ヤバイ本当に競馬にハマりだしたかもしれない・・・

ワンカップ大関飲みながら、競馬新聞を小脇に抱えて千鳥足(イマドキいるんだろうか?)で競馬場に向かうことがないように注意しないと。