~黒いモンスター~


 突然出現した黒いモンスター。


 「あれは・・・!」


 動物たちのお墓辺りから出てきたようだけど・・・。


 「・・・動物たちの怨念のカタマリってとこかしらね。墓場で溜まっていたものが街に近づいてきてたドラゴンの怒りに触発されて実体化した・・・って感じかしら。」


 そんな落ち着いて言ってる場合じゃ・・・。


 「いけない・・・このままだと町が・・・!あの化け物を止めなくては・・・」


 そう言うと王女さまはバルコニーから部屋へ戻りそのまま部屋の外へ走っていった。たぶん王様とかに知らせに行ったんだろうけど・・・。


 「・・・お城の兵隊さんたちだけでなんとかなるかなあ?」


 「どうかしらね。」


 しばらくするとお城から大勢の兵隊さんが出てきた。


 「あっちからも・・・ドラゴンの方に行っていた兵隊も戻ってきたようね。」


 イッちゃんの示す方を向くと、さっきお城へ向かう時見た兵隊さんたちが。逃げる町の人たちを誘導しながらモンスターのいるほうへ進んでいっている。


 お城から出て行った兵隊さんたちはモンスターと戦っている状態に入っていた。


 たくさんの槍や矢が飛ぶけど、全然効果無いみたい。


 「イッちゃん、どうしたらいいんだろ。私に何かできること無い?」


 「・・・一番いいのはあいつの怒りを静めることでしょうけど・・・。」


 「・・・やってみる。」


 「え?」


 私はフワボールを出して飛び乗った。


 「レイナは危ないからここにいてね。」


 レイナをお城のバルコニーに残して私はフワボールを飛ばした。


 ゴロゴロ・・・雷の音?


 あまり雲の無かった空があっという間に真っ暗になり、所々光を放ち始めた。


 「ええ~私カミナリ嫌いなのに~!!」


 耳を塞ぎたいけど、フワボールを動かしている状態じゃ・・・。


 「大丈夫よ。」


 「なにがよ~!」


 「・・・物語の世界だもん。あんたが平気だって思えばカミナリに当たってもなんてことないわ。」


 「あ・・・そっか。」


 元々この世界の住人でない私は痛いものも痛くないって思えば・・・。


 そう考えると少し余裕が出てきた。


 グオオーーッ!


 雄叫びを上げるモンスターは、足元の兵隊さんたちを蹴散らすようにしてお城の方へ進み始めた。


 私はモンスターに接近するとモンスターの目の高さの周囲を回りながらフワボールを飛ばした。


 「モンスターさん!お願い怒りを静めて!」


 モンスターは私を振り払うかのように手を振り回す。


 ・・・やっぱり簡単には聞いてくれないか。


 「あなたたちに酷いことした人たちもいるかもしれないけど、大切にしてくれた人たちだっていたでしょう!?」


 ピシャーーッ!


 カミナリが地面に落ちた。


 「無闇に動物を捕ってきたりしないようにって王女さまに話したから!きっと王女さまは聞いてくれると思う!町の人たちもそんなことしなくなると思うから!!」


 なおも進もうとするモンスター。


 すると、兵隊さんたちを 掻き分けるようにして王女さまが姿を現わした。


 王女さまは後退していっている兵隊さんたちの集団から抜け出すと、モンスターの前に向かっていった。


 「王女さま!」


 王女さまを連れ戻そうと出ようとする兵隊さんたちだけど、迫るモンスターに近づけず身動きで機に酔うな状態になってしまっていた。


 王女さまはモンスターの前に立ち塞がった。


 「・・・私はこの国の王女です。あなたが町の人々に怒りをぶつけたいのならそれは私に向けてください!」


 王女様・・・?


 「町の人々がしたことは私を喜ばせるためのものでした。あなたたちを勝手に捕まえてきたりしたのは私のわがままのせいなのです。」


 ・・・本当はそうじゃないのに。王女さまが望んだことってわけじゃないのに、全部自分のせいにしようとしてるんだ。


 町の人たちを守るため・・・。


 私はフワボールを降ろすと、地面に降りて王女様の側に向かった。


 「あなたは・・。」


 「レイナと約束してるの。町の人たちが悲しいことにならないようにって。」


 私は王女さまの前に立った。



 ~つづく~