~ランチタイムからの恐怖~
午前中にある程度の乗り物に乗って、今はランチタイム・・・を終わって食後のデザート・タイム。
遊園地の中にある『妖精の森のケーキ屋さん』というお店でケーキ・バイキング中だ。
外観は大きな木をくり抜いてお家にしたようなカワイイお店。安全上の問題からか本物の木を使っているわけではないけど、特に女の子には人気のお店だ。
お店は二階建てで、大抵私たちは二階の遊園地の中が見渡せる奥の席に座る。
四つのイスに真由とちひろが隣同士、綾香ちゃんと私が隣同士で向かい合って座っている。
甘いものは別腹と言うけど、午後や明日の夜市のこともあるし、いつもよりは少なめの量に抑える私たちだった。
・・・綾香ちゃんはモンブランとチョコケーキか・・・なかなかの組み合わせだな。
真由は甘いものはそんなに食べないから一個で充分で、もう食べ終わってる。ちひろは三つくらい食べてたけどもう完食寸前だ。
綾香ちゃんのチョコケーキはほとんど手付かずだ。
んふ、ちょっと遊び心が起きた。
「綾香ちゃん、そのチョコケーキちょっともらってもいい?」
「え?ああ、ええ。」
お皿ごとこちらへ差し出そうとする綾香ちゃん。
「あ~ん。」
と口を開けてみる。えっ?とちょっと驚いた様子の綾香ちゃん。
そのまま赤くなって、気持ち慌てたようにケーキをカットしてフォークで私の口に運んでくれた。
最近綾香ちゃんの照れた顔を見るのがちょっとした快感になっていたりして。
真由には弟がいる。ちひろには妹と弟がいて、今日来ていないりっちゃんにはお兄さんとお姉さんがいる。
仲良しグループで一人っ子なのは私だけ。
だから綾香ちゃんをお姉ちゃんみたいに思って甘えてみたくなったのも、ちょこっと本音だ。
さっきのなっちゃん先生とお兄さんの仲良いの見たのも影響してるのかも。
「ありがと~。」
「う・・・うん。」
「ラブラブだね~。」
と真由がニヤニヤ。
幸せの絶頂に待ち構えていた落とし穴・・・これから”ホラー・ハウス”に入ろうとしている今の私の心境がそれだ。
”誰かが乗りたいと言ったものには必ず一度は乗る、入りたいと思った所には一度は入る。”
いつ決めたか知らないが、私たちの間ではいつの間にかそういうルールが出来上がっていた。(ほんとにいつ決めたのよ・・・)
というわけで、ちひろのリクエストにより”ホラー・ハウス”行きが決まった。
自分では分からないけど、今の私ゾンビみたいな顔色してない?
目的地にはあっさり着いた。
リューアルして一回り大きくなった感じ。総移動距離は前の倍くらいになったとか・・・ってそんなデータどうでもいいけど。
古い洋館ホテルがモチーフらしい、二・三人区切りで入っていくシステムだ。入り口の悪魔っ子メイドさんもウケているとか・・・ってそれもどうでもいい。
真由とちひろ、私と綾香ちゃんがコンビになって入ることにして、列に並んだ。
前で喋ってるちひろと真由、楽しそうだなあ。
ちひろに言わせるとホラー映画とかってお笑い番組と同じくらい笑えるんだとか。
私には一生かかっても理解できない感覚だよ、それ。
ふと、私の手を綾香ちゃんが握ってきた。えっ・・・と綾香ちゃんを見る私。
「・・・だいじょうぶ。」
優しく微笑む綾香ちゃん。いつもの照れた綾香ちゃんではなくて、妹や娘を見守るような・・・そんな表情に見えた。
「・・・うん。」
今度は私が照れてしまった。
青くなったり赤くなったり忙しい顔色だ。
~つづく~