さて、「Year-After-Effect 」企画パ・リーグ編である。


詳しくはひとつ前の記事、もしくはリンクか今月発売されている「Slugger」5月号を読んでいただきたいのだが、この理論は「25歳以下の投手の場合、前年よりも30イニング以上投げたシーズンの翌年には故障、もしくは成績が下降する可能性が高い」というものである。




この理論を日本球界に当てはめて、今シーズン故障のリスクが極めて高い投手達を2回に渡り紹介している。今回はパ・リーグについて




・辛島(楽天) 89イニング(2012年度1軍103.3+2軍37)-(2011年度2軍51)


・山田(オリックス) 73.6イニング(2012年度1軍17.3+2軍96.3)-(2011年度2軍40)


・吉川(日本ハム) 50.3イニング(2012年度1軍173.6+2012年度ポストシーズン13.6)-(2011年度1軍38+2011年度2軍99)


・南(ロッテ) 48イニング(2012年度1軍25+2軍23)-(2011年度投球回数0)


・菊池(楽天) 46イニング(2012年度1軍25+2軍101.3)-(2011年度1軍3.3+2軍77)


・塚原(オリックス) 38.3イニング(2012年度1軍35+2軍32.3)-(2011年度2軍29)



以上の6選手が「Year-After-Effect 」の理論に該当する投手である(昨季1軍登板のなかった投手は含んでいない)。30イニングの基準値を大きく超過し、100イニング以上危険数値を超えて投げている投手が二人もいたセ・リーグに比べれば全体的にマシだが、この中でも、すでに吉川は昨季終了時点で故障しており、辛島も左肩痛を訴えて開幕2軍スタートとなっている。ある種「Year-After-Effect 」の有用性が実証され始めており、残りの4人の投手も心配である。この4人の投手の結果については、2013シーズン終了後に再び議論することとする。








 メジャーリーグでは投手の肩は消耗品という考えが普及しており、投手のケアに非常に注意を払っている。昨今の日本球界にも少しずつではあるがこの考えが広まってきている。


しかし、実際は故障に強い投手もいれば、頻繁に故障する投手もいる。どの程度ケアすれば故障を防げるのかという絶対的な概念は存在しない。


とはいえ過去のデータを踏まえることで、可能な限り故障のリスクを予測することができる。その中で最も有名なものが「Year-After-Effect」と呼ばれる理論である。


詳しくはリンクか今月発売されている「Slugger」5月号を読んでいただきたいのだが、この理論は「25歳以下の投手の場合、前年よりも30イニング以上投げたシーズンの翌年には故障、もしくは成績が下降する可能性が高い」というものである。


実際、メジャーにおいて、この条件にあてはまる投手は、調査開始後から2012年まで69名おり、そのうち80%にあたる55人が不振や故障に見舞われている。今シーズンもクリス・セールやスティーブン・ストラスバーグなどの投手が赤信号リストに載っている。


前置きが長くなったが、この理論を日本球界に当てはめて、今シーズン故障のリスクが極めて高い投手達を2回に渡り紹介したい。まずはセ・リーグから





・八木(ヤクルト) 123イニング(2012年度1軍投球回数15+2軍127.3)-(2011年度2軍投球回数19.3)*2011年度1軍投球回数は0


・宮國(巨人) 104イニング(2012年度1軍97+2012年度ポストシーズン12+2軍14)-(2011年度2軍19)


・加賀美(横浜) 86.6イニング(2012年1軍57.6+2軍46)-(2011年1軍6+2軍11)


・秋山(阪神) 80イニング(2012年1軍18.6+2軍74)-(2011年2軍12.6)


・大野(中日) 70.3イニング(2012年度1軍44.6+ポストシーズン8.6+2軍65.6)-(2011年度1軍4+2軍44.6)


・国吉(横浜) 53.3イニング(2012年度1軍112.6+2軍30)-(2011年度1軍47+2軍42.3)


・小山(巨人) 38.6イニング (2012年度1軍43.3+ポストシーズン3.6+2軍88)-(2011年度1軍13+2軍83.3)



 今期セ・リーグで危険な投手はこの7人である。(昨季1軍登板のない投手は集計していない)特に八木は、2010年に肩の故障をしており、極めて不安である。宮國や大野、国吉など開幕ローテーションに入っている投手も多く、彼らの今後が心配である。しかしメジャーリーグの指標がどこまで日本プロ野球に反映されるかは定かではなく、また、彼らが故障に強い体質である可能性も残されている。果たしてどれだけ的中するのかは今シーズンが終わってからまた考察することとする。


次回はパ・リーグ編






そして「Year-After-Effect」のリンク(海外サイト)


http://sportsillustrated.cnn.com/2012/writers/tom_verducci/01/18/year.after.effect/index.html


http://sportsillustrated.cnn.com/mlb/news/20130122/year-after-effect-verducci-stephen-strasburg-chris-sale/


http://sportsillustrated.cnn.com/mlb/photos/1301/verducci-year-after-effect-pitchers-2013/








2013シーズン序盤予想メンバー


野手オーダー


1,中 陽岱鋼

2,ニ 西川

3,三 小谷野

4,左 中田

5,一 稲葉

6,指 アブレイユNEW

7,遊 大引NEW

8,右 杉谷

9,捕 鶴岡


控え


捕 大野


内 ニ岡、ホフパワー、中島


外 大谷NEW、赤田NEW



故障中


金子


その他の選手


中嶋、近藤、飯山、岩舘、今浪、鵜久森、村田



 今オフに田中がジャイアンツマイナーへ、糸井が電撃トレードでオリックスへと移籍。この二人がいなくなったため、今期の打線の弱体化は免れない。非常に問題なのは、二人が移籍したことではなく、その二人にとって代わる選手が出てきていない点である。セカンドの定位置争いはどの選手も、帯に短し襷に長しといった状況であり、ライトの定位置も鵜久森がいまいちな結果で、予想布陣は杉谷にした。鵜久森の長打力はだれしも認める点であり、また開幕一軍に入っていることから、選手の入れ替えがある2カード目までの開幕3連戦の内に、結果を残しておきたい。


 この西川と杉谷の二人合わせても、下手をしたら田中一人分程度の成績にしかならない可能性もある。他の選手がカバーするにしても、オープン戦好調の新外国人アブレイユは明るい材料だが、それ以外には昨季大不振の小谷野と、中田の確実性が多少改善されているか程度しか上澄みがなく、むしろ、昨季打撃成績がキャリアハイだった鶴岡と41歳と高齢の稲葉の成績は下降する可能性が高く、カバーどころか揃って足を引っ張ることにもなりかねない。特に稲葉はWBCでかなり直球に振り遅れるシーンが目立ち、調整不足であるならいいが、単純に能力の衰えが原因である場合、第二の小笠原となる危険性もある。今後の成績に要注目である。


 ただ、選手層自体は比較的厚い。控えにニ岡、ホフパワーがおり、左右の代打要員としてはこれ以上ない。また、糸井放出によって、日本ハムは抜け目なく大引と赤田を獲得しており、特に大引は選手生活の晩年に入った金子の後釜として最適な人材で、今後5年間ショートのレギュラーを務められる選手が加入したのは大きい。


 最後に大谷についてだが、オープン戦では積極的にライトで起用されたものの、2軍で投手をやりつつ1軍の試合に打者として出るのは体力的に容易ではなく、また打者としての実力も1軍レベルであるかどうかは疑問符が付く。開幕戦はスタメン濃厚だが、いずれはベンチに落ち着くと思われる。とはいえ、過去になく魅力的な選手であることは間違いなく、体作りがしっかりしてきた2,3年後に、先発ローテを守り、休養日にライトなりDHなりでラインナップに名を連ねるという全く新しい野球選手が誕生するのも見たいところではある。



投手オーダー


先発


1 武田勝

2 ウルフ

3 谷本

4 吉川

5 木佐貫NEW

6 多田野


中継ぎ


増井、宮西、モルケン、森内、石井、根本


抑え


武田久



故障中


ケッペル、斎藤


その他の選手


榊原、乾、矢貫、中村



 投手陣も全体的に層が薄い。先発陣は、ケッペルの復帰遅れと斎藤の故障離脱が痛い。武田勝、ウルフ、木佐貫は信頼できるものの、吉川は故障明けなため、慎重な起用が求められ、谷本と多田野については、フルシーズンの実績がなく、多くは期待しないほうが賢明である。現状先発陣の頭数はギリギリの状態で、木佐貫を獲得していなかったらどうなっていたか考えるのも恐ろしい。日本ハムのフロントは補強ポイントを的確に把握しているといえる。ダルビッシュ2世と期待を受ける中村は、ノーコン病完治までもう少しかかりそうか。


 中継ぎ陣も、増井、宮西、武田久の3人はしっかりしてるものの、彼ら以外の選手が物足りない。ただ中継ぎに関しては楽しみな若手が2軍に多いため、彼らの奮起を期待したい。



まとめ


 優勝は厳しい。野手陣は打力低下、投手陣は層の薄さが要因である。CS争いには絡むが、故障者続出など予定外の事態が起こった場合、4位程度に終わる可能性も十分ある。ただ、日本ハムは戦力補強、若手育成が非常に上手な球団であるため、来期以降に期待は持てる。


また、将来的に大谷が先発ローテに入る場合、首脳陣が打者としての調整が投手活動の妨げになると判断した場合、それでも大谷の意思を尊重するのか、首脳陣の判断が問われることになりそうである。