日本のプロ加盟ジムに所属しているプロボクサーは全国に?(すみません、全然分からなかったので知ってる方教えてください)人。その内、ボクシング一本で生活が出来ている人は(年収でいうと最低でも約200万円は欲しいだろう)1割に満たないだろう。ほんのひと握り。これが昨今の日本のプロボクサーの現状だ。実際にプロボクサーが稼ぐいわゆるファイトマネーはどの程度なのか説明しておく。(あくまで僕、日本ランキング10位の自分が知っている範囲だ。ちなみに僕もこの1割には属していない仕事掛け持ちボクサーだ。)

まず始めに、プロボクサーといっても3段階に分けられる。C級、ライセンスを取得して4勝(引き分け2回で1勝扱いみたいなのもあったような)するとB級に昇格される。C級では1R3分を4R闘う。12分間。インターバル、(休憩)が全てのプロボクサーが1分間。その間にセコンドからアドバイス、作戦が伝えられる。そして、4R闘ってのファイトマネーはジムによってまちまちだが大体が約4〜5万円。
B級に昇格すると、闘うのは6Rに増える。アマチュアボクシングは3Rなので、ここで大きくプロとアマの違いが出てくる。当然ファイトマネーも増える。僕のデビュー戦(アマチュアの実績がある者はB級デビューになるものが多い。)のファイトマネーが約9万円か8万円だったと思う。勝利した自分へのご褒美と思い出に18kのネックレス(20g)を買った。だいたいデビュー戦のファイトマネーと同じぐらいの金額だった。そして、このB級で2勝するとA級に昇格する。A級に上がってもランキングにはまだ入らない。だからノーランカーから世界チャンピオンまでこのA級に属することとなる。A級ボクサーは6〜12Rを闘う。日本タイトルマッチは10R、世界タイトルマッチは12Rだ。
僕はこのA級で3試合闘っている。4戦目で通称ランカーと呼ばれるランキング入りしている選手に勝利し僕もランカーとなった。ランカーになってからまた少しファイトマネーが上がった。ランキングが上がるにつれてファイトマネーも少し上がる仕組みだ。当然世界ランカーレベル、チャンピオンや挑戦者によってもファイトマネーの上下の仕組みは同じだろう。
A級になってからのファイトマネーが約15万円だ。試合の間隔としては3〜4ヶ月に1試合。当然これだけでは生活は出来ない。

もう一つの収入源はチケット販売だ。僕個人で応援してくれる人達からチケットを買ってもらうと少し自分にもバックがある。これもジムによってまちまちだがだいたい2割。例えば1万円のチケットが1枚売れたら2000円が自分に入るということ。そしてこのチケットはジムから、1万円から2000円を引いた8000円で僕が買っている。当然ジムは興行主から買っているだろう。この辺は詳しく知らないから割愛させて頂く。チケットの値段は座席によって変わる。(僕がいつも試合している後楽園ホールの場合)1番後ろの自由席はだいたい4000円。前に近づくにつれて6000円、8000円、背もたれのない木の椅子の辺りが8000円から10000円、リングサイドが12000円となっている。(高えよ!)正直に言うと後楽園ホールは狭いから4000円でもよく見える。応援してくれる人達が気を遣って高い席を買ってくれる事もある。でも、本当にわざわざ会場まで駆けつけてくれるだけで嬉しいので安い席で十分。いつもありがとうございます。(試合は平日が多い。日曜日の後楽園ホールは「笑点」でスケジュールが埋まっている。)皆さん仕事終わりに来てくれる。わざわざ、地元の和歌山や大阪から駆けつけてくれる人もいる。交通費を合わせれば3万円を超えている。ボクシングの興行では5〜8試合ぐらい1日に観戦する事が出来る。が、全く知らない人の試合を応援したり楽しんだりする事はあまり無いので基本的には僕1試合の為にこの金額を払ってもらうことになる。チケットが100枚売れて1000枚売れない理由は無い。1000枚売れればボクシング一本で食べていける。と考えていたけど、コロナがある限りは1枚売れるということは100枚売れる、ぐらいの考えに変わった。ここで大事なのはチケット1枚が人1人ということ。SNSのフォロワーが1000人だから100人くらい応援に来てくれるとかそんな甘い話しではない。いくら強くてもだ。いやいや、ボクサーは沢山練習やって強くなって面白いボクシングを見せるのが仕事だよ!って言われたらごもっともだと思うし、競技のレベルが上がるにはそうならないとな。

そもそもボクシングをなぜ生で観戦するのか?
僕は音楽のライブに行ったことがないけどどこでも聴けるものをわざわざ聴きに行く。映画を映画館に観に行くのはなぜか?サッカーや野球、他のスポーツはどうか。ボクシングの生観戦は圧倒的にこれだ。興奮だ。殴り合いという非日常、見ることの出来ないもの。パンチが当たる音、それを紙一重で避けるスリリング、駆け引き、騙し合い。テレビやスマホで伝わらないものもある。その辺の素人の喧嘩、YouTubeで流行りの喧嘩自慢とスパーリング、とは訳が違う。プロ同士の殴り合いだ。僕はあまり格闘技をスポーツとは言いたくない。スポーツの定義でいうと範囲が広過ぎる。ボクシングの1試合は、濃厚だ。人にもよるか。僕は人生を賭けているし、命も賭けてると言っても過言ではない。大袈裟に聞こえるかも知れないけど一度派手に倒されて記憶も飛ばされてみると気持ちが分かってれると思う。このまま倒れて起きあがってこなかったら死んでたんだな…と。僕はあまり「死ぬ」とか「殺す」という言葉を使いたくないし使う人もよくないと思ってるけどやっぱりボクシングからは切り離せない。実際に亡くなっている選手がいるから。アマチュアの時は他人事だったけどプロになってあの8オンスのグローブで試合を始めて、考えが変わった。殺す気でくる奴もいるんだから覚悟しないと。
殺されるかもしれないこと、殺すことになるかもしれないこと。
両方あるのが覚悟だ。
ボクシングが衰退していく理由はこういう部分かもしれない。時代と合ってないんだろうな。それでもお構いなしでやるし、誇りを持ってやっている。こんなにカッコいいもんないだろって。
人気無いから言うし、自分の名前も売る。1人でも多くの人にボクシングを知ってもらいたいし、僕の試合を見てもらいたいから。ボクシング界を盛り上げる方法は稼げるようになる事だ。説明したファイトマネーで、仕事をしながらボクシングをやりたいと思う奴は考えが甘いかボクシングの中毒性にやられたかボクシングしか出来ないかだ。日本チャンピオンになっても他の仕事をしながらといのが現状。相当な気持ちがないと続けられない。でも、ダブルワークの経験は将来活かせるはずだ。凄く勉強になっているし、人として成長させてくれる貴重な経験だ。それに何をやっていてもボクシングにリンクさせるようにしている。仕事も生活も含めて全てだ。全ての行動がボクシングに繋がる。だから僕は強くなってきた。

時を戻そう。ボクサーの収入はファイトマネーとチケットバック。さらに激励賞という、激励をお金でしてくれる素晴らしい賞がある。ボクサーにとっては1番嬉しい賞かもしれない。その激励賞と似ているのだがスポンサーという活動資金を援助してくれる人達がいる。よくボクシングの試合でトランクスに企業の名前や個人名の入ったワッペンを見かけるのがそうだ。表面のどこどこはいくら、裏面は少し安くなっていくら、他にも練習着の提供、とか色々で基本的には自分で決めている。ちなみに僕は企業のスポンサーという感じではなく普通に個人での付き合いの方が多い。実際に「たっくん」とか個人名を入れさせて貰っている。形は激励賞と変わらない。最近流行りのクラウドファンディングとも似たようなものだ。自分が広告塔になって闘います、という事だけどはっきり言ってビジネスメリットはスポンサー側にはほぼ無い。井上尚弥選手ぐらいになればテレビやSNSで井上尚弥のスポンサーをしていれば広告になるだろうけど、それ以外の選手はほとんどスポンサーのご厚意のお陰様だ。今僕のスポンサーをしてくれている皆様、チケットの購入をしてくれてる皆様、少しでも僕を応援して良かったと思われる選手になります。今後とも応援の程、宜しくお願い致します。頑張ります。

このスポンサー制度が始まったのはそんなに昔の話しではないみたいだ。
ジムの会長のセレス小林(元WBA世界スーパーフライ級王者)が現役の時は無かったそうだ。
でもチケットを日本チャンピオンの時でも1000枚以上売ったと聞いた。今、日本チャンピオンでも1000枚売るのは簡単では無いと思う。時代のせいにはしたくないし、ボクシングが衰退していく理由の一つでもあると思う。チケットの手売りが減っていけば更にボクシング界は衰退していくだろう。YouTubeによる配信やその他の配信がどう選手に影響していくかは分からない。でも、とにかく動かないと食ってはいけないし強くもなれない。

前回の試合で派手に倒されてから、脱臼癖のついていた左拳の手術をした。コロナがきたけどタイミングとしては、「持ってるな」と思った。一年以上試合をしてないけどランキングから外されるどころか一つアップした。相変わらずではないが、強くなるためによく考えてトレーニングをした。人間変われるもんだなと思った。100キロマラソンにチャレンジしてみたり。全く考えていなかったけど結婚もした。貯金なんかしてなかったからデビュー戦で勝って記念に買ったネックレスを同じぐらいの値段で売って同じ値段の指輪を買った。…良い貯金をしてたし、良い話しのネタが出来た。笑
仕切り直して来年、カッコよく復活します。
応援宜しくお願い致します。



とんでもない所を目指しています。