「批判ばっかり」と非難するのは大政翼賛会だ | Minahei

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ライター戸塚美奈のブログです。

 

いろんな人が、今回の都知事選感を書いている。

あまりの結果にガックリきていたけれど、なに、考えてみれば、わかっていたことでもあった。

テレビの言った通りに物事がすすんでいくということは。

 

ユーゴ戦争ではセルビアを悪者にする。ウクライナの紛争では一方的に侵攻したロシアが悪い。

新型コロナが怖い、ワクチンを打ちましょう。テレビで言えば何の疑いもなく打ちに行く。みんなテレビの言う通りに従う。

昨日、くそ暑い中外で草をとっていたら、近所の人が自分のを買うついでに私にもスポーツドリンクを自販機で買ってくれた。行き倒れになりそうに見えたのか。ありがたい。「のどが渇いたな、と思う前に、飲まなきゃだめ、って、テレビで言ってましたよ!」テレビで言うことはたちまち広がる、そしてテレビで言っていることには皆まことに素直にしたがうのだ。

 

選挙運動が始まる前、ちょうど蓮舫さんが出馬する話が出たばかりのとき、親しいおばさま仲間とおしゃべりする機会があった。ちょうど話題は蓮舫さんのことに。私は現職に対抗できるのは蓮舫さんくらいだろうと思い、応援しようと思っていた。

ところが、そのときの反応が、みなさんイマイチだったので驚いた。「あんまり好きじゃない」「え~あの人嫌いなのよね」

「どうしてですか?どうして蓮舫さんのどこがイヤなんですか」と聞くと、「だって、あの人、批判ばっかりしてるじゃない」「言い方もきついものね」「ほら、『2位じゃいけないんですか』とか」。けっして、保守的な人たちではなく、リベラルで知的で常識的で心のあたたかい人たちが。

「どうしてそう思うんですか?」というと、「文春に書いてあったわよ」「テレビで言ってたよね」。

思わず言ってしまった。

「何言っているんですか、批判するのは野党の仕事じゃないですか。それ、きっちり議員の仕事しているっていうことじゃないですか?」

 

かつて、中曽根さんが、野党のことを「倫理、倫理と鈴虫のように鳴いて…」と言ったことを思い出した。批判する社会党をコケにした映像は何度もテレビで流れ、鈴虫発言は流行語となった。そのうち「ねじれ国会」などという言葉ができた。マスコミが作った言葉だ。ねじれて何が悪い。参院で野党が多いのは、けしからぬ法律を作らせないよう慎重に審議するため必要なことではないか。それを「ねじれ」と悪いことのように表現する。そのうち、世の中に、「批判するなら代案を出せ」という風潮が出てきた。

政権を批判する人たちを左翼をもじって「パヨク」と言う。しだいに、批判することをバカにする風潮も出てきた。原発を批判すれば、「反原発」と言う。ワクチンを批判すれば、「反ワクチン」と言う。

 

「批判ばっかり」という非難は、長い時間をかけて、反共勢力が大衆をコントロールするために進めてきたやり口だ。

今ではテレビは絶対に国のやっていることの批判はしない。新聞は「両論併記」を言い訳に、国のやることへの批判はしない。完全に国の広報機関になっている。そしてそれらマスコミで食べている芸能人や文化人が善人ぶって「批判はヤメマショウ」と広報する。糸井重里氏が繰り返し繰り返しやわらかな言い方で、「責めるな」「批判するな」ということをつぶやいて時折炎上しているが、糸井氏はまさにそれを手先としてやっているわけで。「批判するな」は大政翼賛会だと思ったほうがいい。

 

蓮舫さんがなぜダメだったのかを軽薄なニュース記事にしてどんどん流している。蓮舫さんが清潔感はあるけど、親しみを持てない、可愛げがない、だから支持を得られなかったのでは、という記事が朝日新聞に載っていた(「正しさ高潔さより『完璧でない』一面に親近感」)。可愛げがない?そんなもの、美しく華奢な蓮舫さんのビジュアルを利用して、マスコミが巧妙に作り上げたイメージだ。痩せて美しい女性に対して、女性はものすごい嫉妬心を持つ。それをマスコミは利用したのだ。過酷な選挙活動にすぐに汚れてしまうような白い服を纏っていたことさえ、その記事では働く庶民の女性たちの反感をかったと書いてあった。その書き方にぞっとするようなマスコミ側の悪意を感じた。熱い中、白い服を選んで少しでも太陽を避けようとするのは普通のことではないか。もし、蓮舫さんが、太ったおばさんで、鼠色のスーツを着ていたらどうなのだ。今度はマスコミは、怠惰で傲慢な怖い女、というイメージを作り上げるだろう。

 

私自身が見ていたX(ツイッター)での盛り上がりはすごかった。一人街宣をする若い人たちや、小泉今日子さんなど著名な方が蓮舫さん支持を打ち出していて、『日本会議の研究』でブレイクした菅野完さんがツイートでバックアップしていた。でも、結局、X(ツイッター)というものは蛸壺式で、自分が見たいものしか目に入らない。熱狂の渦ように見えていたが、Xをまったく見ない層はそんなこと知ったこっちゃないし、Xには石丸氏の胡散臭い情報しか流れてこなかった。まさか若者からそれほど支持されているとは思わなかった。X(ツイッター)というものは、仲間内に情報を共有するためのもので、拡散するものではないのだということがよくわかった。

選挙後、誰に投票したかを少し聞いて、選挙情報を追っていない人たちが、「好き」「嫌い」「なんとなく」というイメージで票を入れているということもよくわかった。これではいくらでもマスコミの力で選挙をコントロールできてしまうだろう。

 

選挙って、人気投票じゃないですよ。政権に対して突きつけるもので、現政権にイエス、なら現職に、ノーなら、対抗馬に入れて現職を落とす。そうしなければ政権は変わらない。

今の野党は、もうそれができない。野党は共産党とれいわと社民党しかいない。はっきり言って立憲はどっち側かわからない。そこへ政権側が、野党側を分断させようとさまざまなしかけをしてくる。今回の石丸氏しかり。維新や参政党はフェイク野党で、自民党、統一教会、創価学会とばっちりつながりがある人たちだ。

今回、共産党と共闘したから負けた、古い人たちだから負けたなんて言っている人がいるが、今回がんばって盛り上げていたのは往年の左派のおじさんやおばさんだったと思う。地元の蓮舫さんの演説を見に行ったが、平日ということもあったのか、ほとんど共産党としか思えないおじさんおばさん、おじいさんおばあさんがいっぱいいた。8日の朝、近所の都知事選の応援ポスターを、共産党のおじいさんが熱い中、はがしていた。

 

今回の選挙活動を見ていて、蓮舫さんが私利私欲のない、間違いなく信頼できる確かな人物だということがわかった。あの勇気、丹力! これだけマスコミに意地悪されるのは、政権とそのおこぼれをもらうマスコミにとってめちゃくちゃ怖い存在だからだ。負けないでほしい。これからも個人的に応援したい。