移動時間などにちょこちょこ読んでいる小説。せっかくなので備忘録として読書感想文を書いています。


【読書メモ】

○池井戸潤『民王』
内閣総理大臣である泰山と、バカ息子の翔の中身が入れ替わってしまうドタバタ劇。勉強をしなかった大学生の翔は、スピーチや討論で原稿の漢字が読めず、総理である泰山や側近達は支持率低下を恐れヒヤヒヤ。読者はニヤニヤ。

「えーと、なんつーかそのー。我が国はミゾユーの金融キキンにジカメンしており、経済はテイマイ致しております」

※原稿の漢字は未曾有、直面、低迷です(笑)。

実際に何年か前こんな政治家がいたんだから、尚更おかしい。これ、あの人のことをモデルにしたのかな~とか考えちゃいます。でもそういう無能な政治家に対する皮肉だけじゃなく、大人の駆け引きや利権、しがらみのない息子、翔が発する真っ直ぐな意見が人々の心を動かす様子も描かれています。

コメディなので明るく楽しく、テンポ良く進みますし、脇役たちもとても魅力的。テレビドラマでも見ていたので、役者さんの顔を思い浮かべながら楽しみました。配役、ピッタリだったな~ルンルン



○雫井脩介『火の粉』
こちらはドラマ化されたものを観たピュアな友人が「すっごく怖いの!ぞっとする!」と大騒ぎしていて気になった作品です。

裁判官を定年退職した主人公の梶間勲は、田舎に立派な二世帯住宅を建てのんびり暮らしています。ある日、一家惨殺事件の容疑者であり、かつて勲が無罪判決を下した武内が偶然隣に引っ越してきます。彼はとても紳士で親切であり、人懐っこい。武内は梶間一家にすっかり馴染んでいくが、平和だった家族が徐々に壊れていく…。

隣に越してきたのは果たして偶然なのか?武内は本当に無実だったのか。一体何を企んでいるのか…。どんな罠を仕掛けたのか?親切な隣人がテーマなだけに、読んでいるとちょっと怖いですね。

ドラマでは元裁判官の勲は伊武雅刀さん、疑惑の隣人である武内をユースケサンタマリアが演じています。個人的に武内はもっと紳士的でスマートな…例えば榎木隆明さんとかが似合うんじゃないかなと勝手に想像しています。

ドラマでは家族が壊れていく様子や、武内の得体の知れない恐ろしさが描かれますが、小説はもっと細かく家族それぞれの心情や状況が描写されています。ネタバレにならない程度に挙げますと、義母の介護と更年期障害が重なり倒れそうな妻を横目で見つつ、知らん顔の勲。俺はこれだけ立派な家を建てたんだから家事や介護なんて知らんという態度です。

また、武内に疑惑を持ち始めるまでも、自分の判決が間違っていたらキャリアに傷が付くことを懸念し、二の足を踏んでなかなか動き出さなかったり。肝心な時に不在だったりと、一家の大黒柱のはずが不甲斐ないし頼りにならない。なんだかどこの家庭も一緒だなと(笑)。

しかもこの作品を男性が書いているんだから驚きです。よくこんなに女性の気持ちが分かるもんだと関心しきり。

隣人の恐ろしさだけでなく、いち早く真相に気付いた嫁、雪美の孤軍奮闘ぶりも見所です。



○伊坂幸太郎『チルドレン』
屁理屈ばかりで口が達者なトラブルメーカーの陣内。彼と彼を取り巻く友人や同僚たちの話が描かれた短編集です。独自の正義と理論を持った陣内は不思議と憎めないので、毎回周りの人たちが巻き込まれていきます。

伊坂幸太郎さんらしく会話のテンポが良く、登場人物もみんな面白くて魅力的なのでサクサク読めちゃいます。陣内は、陽気なギャングシリーズの響野を連想するキャラクターですね。



以上、読書感想文でした!つい長々と書きすぎちゃった。需要ゼロだから、好き勝手に書けて楽しかったりするルンルン(まぁ基本好き勝手に書いているんだけどね)