妻の浮気 4
信哉との情事を終え 茜は 自分に言い訳を繰り返した。
『これは 夫への復讐だし 一回限りの想い出。 二度とないことなんだから いいのよ。
一生に一度くらい 羽目を外したり 過去を振り返ってしまうことって あるわ。
今から また ただの主婦になって 2人の母になって 元の生活に戻るんだわ。』
ホテルを出て 駅まで別々に歩いて欲しいと 茜は信哉に頼んだ。
さっきまで 密室で溶けるように甘い触れ合いをしていたことを 封印したかのように
振舞って欲しかったし 自分がそう振舞うことを 正当化して欲しかったのだ。
『連絡 して欲しい』 と信哉からわたされた携帯のアドレスを バッグにしまいこんで
茜は 背筋を伸ばして歩きながら 心は女として 信哉のぬくもりを求めているのだろうか
それとも 母親として 与えるだけの温もりで 満足できてるのだろうかと考えた。
信哉のメルアドを たんすにしまいこんで 数日が過ぎた金曜の朝。
結婚式で再会した 同級生の工藤美奈子から 電話がかかってきた。
『この前さ 佐々木信哉と 消えたでしょ?』
美奈子は 結婚しないと宣言してキャリア志向を貫いていたが 子供が好きで
年に何度か 茜の家に遊びに来ては 子供たちと戯れる 変わった独身女だった。
『あ 駅までね。』
『なにすらっトボケてんのよ。2人でタクシー乗り込むまで 見たわよ。』
『だから 駅まで・・・』
『駅と反対方向に向かってたよ。ばか。』
茜は 羞恥心と罪悪感と困惑で 立っていられなくなり ソファーに座り込んだ。
『いや、 あのね 美奈子はえっと。』
『いいよ。信哉が茜に未練持ったまま年食ってるのは 知ってたし。
まぁ 茜がなびくと思ってなかったからさ、びっくりしたっていうか、どうすんだって。』
『もう 会わないよ。 気まぐれっていうか 魔が差したってやつだし。』
無理やり言葉にしてから 茜は傷ついた自分に気がついた。 魔が差したのではない。
あの温もりも 優しさも 悦びも 開放感も 陶酔感も きまぐれではない。
信哉が 心から搾り出してくれた 茜への愛情に 包まれていた時間だった。
『まぁさ どうするか知らないけど 家庭を壊すようなことしたら ブッ飛ばす。』
うん と頷いてから 茜は涙が止まらないことに うろたえた。
どうしても 信哉と話をしなくては・・・・
前話へ 次話へ
みみぴのぼそっとでっかい独り言 で書いていたものを
つばさのほうは 本日もお休みさせていただいております
体調は復活しかけておりますが 執筆が追いついておりません。
午後も 妻の浮気 5の 掲載になります。