side M


もうすぐ大祐さんの誕生日だ。

何かプレゼントしたいと思うのだけど、大人の彼に学生の僕があげられる物って何だろうと考えてみても何が良いのかわからない。


どうしようかな。

色々考えても思い付かないなぁ。


そうだ。

こういう時は本人に聞いた方が早いかもね。



というわけで。


「大祐さん、もうすぐ誕生日だね。

何か欲しいものはある?」


二人でまったりとコーヒーを飲みながら話を切り出した。


「ん?真緒が俺に何かプレゼントしてくれるのか?

うーん、そうだなぁ・・」


空を見つめながら考える大祐さんを、僕は期待のこもった眼差しで見つめる。


「俺は真緒がいればそれで良いよ。

その日に真緒と一緒に過ごせるなら何もいらないよ。」


ニッコリと微笑む大祐さん。


「え、でもせっかくの大切な大祐さんの誕生日なのに・・」


何もないというのは淋しいよね。


「そうか。どうしてもプレゼントというなら真緒が欲しいかな。

俺に真緒をプレゼントしてよ。」


「えっ?」


それって・・プレゼントは僕、的な?


わーっ!

頭の中で自分にリボンを掛けてどうぞなんて言ってる姿を想像してしまい、一気に顔が熱くなる。


「ふふっ、真緒は本当可愛いよな。

誕生日、一緒にいてくれる?」


そんな僕の考えをわかっているかのように、大祐さんは更に笑顔になる。


「あ、うん。それはもちろん。

僕も大祐さんと一緒にいたいから。」


「ああ。楽しみにしてるよ。」



結局プレゼントは何が良いのか聞けずじまいだった。

でも、さすがにプレゼントは僕だなんて恥ずかしいし。


あー、どうしようかなぁ・・・




あれこれと悩んでいるうちに、あっという間に誕生日前日となってしまった。


ケーキは誕生日には欠かせないなという事で、早いうちに予約してある。

あとはシャンパンとかあればいいかな。

僕も20歳になったから飲めるようになったしね。


あとはプレゼントなのだけど・・・


あれから色々と考えてみてもこれという物が見つからなくて。

それなら大祐さんが欲しいと言っていたものにしようと思ったんだ。


だから、すごく恥ずかしいけれど僕をプレゼント・・する事にした。


いや。大祐さんも言っていたように、二人で一緒に過ごしたいって事なのだから。




誕生日当日は平日で大祐さんはお仕事、僕も学校がある。

僕のバイトがない日なので、大祐さんから合鍵を預かって彼の家で待つ事になった。



学校が終わって真っ直ぐ家に帰る。

夜まではまだ時間があるけれど、僕は早速準備を始める。


まずは、お風呂。

大祐さんの特別な日だから、やっぱり綺麗にしておきたい。


いつもより念入りに。

期待しているわけじゃないけど、そういう事になった時の為に・・ね。



あれもこれもとしていたら、思ったより時間が経っていたようだった。


支度して、予約してあったケーキを取りに行って買い物をしてから大祐さんの家に向かおう。



大祐さん、早く帰ってきてね。






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こんばんはニコニコ



大祐さんの誕生日のプレゼントはどうしようかと悩む真緒くん。


大祐さんは真緒くんがいればそれで良いと言います。

誕生日に一緒に過ごしたいとの事なのですが、プレゼントは僕、的な想像をしてしまった真緒くんは思わず赤面。

恥ずかしいけれど愛する恋人の為、ピカピカに自分を磨いて当日を迎えるのでした。



次回、大祐さんサイドの予定です。

お付き合いよろしくお願いします照れ


side D


暑かった夏が過ぎ季節は秋に、すぐに寒い冬がやってくる。

寒さは苦手ではないけれど、得意というわけでもない。

毎年それなりに冬を過ごしてきた。


しかし、今は前とは違って寒い時期がちょっと楽しみになっている。



俺の恋人は寒いのが苦手だ。


例えば外を二人で歩いている時に冷たい風が吹くと、キュッと首をすくめていかにも寒そうにしている。


こんな時はすぐにでも抱きしめて暖めてやりたくなるが、人目があるここではできないから・・・


「真緒、こっち。」


すっかり冷たくなった真緒の手を引き寄せ、俺のコートのポケットに入れて中で手を繋ぐ。


「ふふっ、あったかい。」


俺の体温を分けるように冷えた真緒の手を暖めると嬉しそうに笑う。


そのまま指を絡め恋人繋ぎにして、束の間の秘密の幸せを感じる。


俺のコートのポケットは真緒の手を暖める為にあるようだ。




二人で過ごす部屋の中。

エアコンはもちろん冬仕様、寝室にはポータブルのストーブを用意した。

リビングのラグは毛足が長いものに変えて、寒くないように準備は万端だ。


自分も暖かくしたいのもあるけれど、やっぱり大半は真緒の為だった。



一日が終わり、一緒に帰ってきた部屋は暖まるまで時間がかかる。


そんな時は、


「真緒、こっちおいで。」


外ではできなかった分、真緒を胸に抱きしめる。


「こうしてるとあったかいね。」


温もりを逃がさないように、真緒が更にギュッと抱きついてくる。


「ああ。俺も暖かいよ。」


体を寄せ合うとお互いの温もりが伝わってくる。

暖まるまでしばらくこのままでいよう。




夜になり、部屋も二人の体も暖まった頃。


「先に風呂に入っておいで。

ちゃんと暖まるんだぞ。」


「うん。ありがとう。

じゃ、お先に。」


真緒を先に浴室に送り出し、俺は寝室へ向かう。


ドアを開けて中に入ると空気がひんやりとしている。

誰もいなかった部屋は寒く、すぐにストーブのスイッチを入れる。

それからベッドに入りあらかじめ暖めておく。


暖かい布団って幸せーと笑う真緒を思い浮かべながら。

そんな真緒を抱きしめて眠る俺も幸せになるんだ。



「大祐さん、お待たせ。」


真緒が風呂から上がってきた。


「じゃ、俺も入ってくるかな。

布団暖めておいたから湯冷めしないうちにベッドに入っておけよ。」


「わあ、ありがとう。」


嬉しそうに笑う真緒。


ああ、この可愛い顔を見たら今すぐにでも抱きしめたくなってしまう。

早く風呂を済ませて、その後は・・・


暖まった体と部屋でなら、心おきなく愛し合える。


そして、


「大祐さ・・ん」


お互いの肌を感じればもっと暖かくなる。



真緒の為、そして二人の為に。

幸せそうな君の笑顔を思いながら、俺は今年も冬支度をする。






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こんばんはニコニコ



季節は秋、だんだんと寒くなってきました。


寒がりな恋人の為にあれこれと準備をします。

自分の為でもあるけれど、一番は二人で過ごす幸せな時間の為なのです。


彼の笑顔を想像すると、冬支度も楽しいものになるのでした。



読んでいただき、ありがとうございました照れ


side M


夏は海水浴場になっている海辺の近くの駐車場に車を停めると、僕達は車から降りた。


外に出ると潮の匂いがする。

焼け付くような夏の日差しとは違って秋の涼しい空気に、今の時期の海も良いなと思った。



大祐さんがうーんと伸びをする。


「大祐さん、運転お疲れ様。

ここまで長かったよね。」


「ああ。でも大丈夫だよ。

隣には真緒がいるし、疲れなんて感じなかった。」


朝に出発してから、もう結構陽が高くなっている。

長距離を一人で運転するのはやっぱり大変だよね。

僕も免許持っていればなぁ。


そんな事を考えつつ隣にいる大祐さんを見ると、彼も僕の方を見ていたみたいだった。


二人の視線が合い、何だかちょっぴり照れてしまう。


車の中では運転手の大祐さんはずっと前を向いていて、僕が一方的に彼を見つめるだけだったから。

こうして僕を見る大祐さんが久しぶりな気がするからなんだろうな。


「真緒、どうした?」


相変わらず微笑みを浮かべて僕を見つめる大祐さんに、


「あっ、ううん。何でもないよ。」


恥ずかしくなってしまって思わず視線を外す。


「そうか?

何だか真緒の顔をしばらくぶりに見たよな。

真緒はチラチラと俺を見ていたようだけど。」


「やっぱりわかってたよね?」


「それはそうだよ。

気付けばジーッと見られてたんだから。

運転に集中しないとならないから結構大変だったんだぞ。」


「えっ?あ、ごめんね。」


そうだよね。

集中したい時にジッと見られると気が散ってしまうよね。


「いや、そうじゃないよ。

運転中は俺も真緒の顔を見たくても見られないだろう?

やっとこうする事ができるって。」


大祐さんの手が僕の頰に触れ、真っ直ぐに見つめられる。


ドキッ


そのまま顔が近付いてくるかと思ったら・・・


「ここじゃ、できないよな。」


フッと笑う大祐さんのちょっと困ったような顔。


「あっ・・そうだよね。」


キスするのかな?と思ってしまったけれど、ここは外。

人目があるからさすがにそんな事はできないよね。


「がっかりした?」


「いや。そ、そういう事じゃなくて・・・」


そんなに残念そうな顔をしていたのだろうか。

まあ、ちょっぴり期待していたのもあるけれど・・


「なんてな。

俺の方こそ、ここで我慢しないと。

後は二人きりになった時までのお楽しみって事で。」


今度はニッコリと笑う大祐さん。


「もうっ・・」


僕の考えている事はお見通しだと言わんばかりの彼のこの笑顔。


「ま、それよりも。

せっかくの海なんだから近くまで行ってみよう。」


「うん。そうだね。」


そうだ。

大祐さんとの初めての海だから楽しまないとね。



海水浴の時期が終わった海は夏のような賑やかさはない。

所々に人がいるといった感じだ。


晴天のおかげで水面に太陽の光が反射してキラキラと輝いている。


僕と大祐さんは並んで砂浜を歩く。


「綺麗だね。」


「ああ、本当に。

秋の海も良いものだな。」


ザザーッと寄せては返す波音に癒されながら、ゆっくりと時間が流れていくようだ。


「水はもう冷たいのかな?」


ふと手を海に浸してみたくなり、指を伸ばしてみると少しひんやりとした感触がした。


「わっ、やっぱり冷たいね。」


「そりゃ、真夏のように海に入れる気温じゃないからね。」


「そうだよね・・・」


ちょっと残念そうな顔をする僕に、


「来年は夏に来ような。」


大祐さんが優しく微笑む。


来年の夏・・その時も大祐さんが僕の隣にいるんだ。


「うん。大祐さんと一緒にね。」


それがこの先の二人の未来が見えたようで。


僕達はお互いを見つめ微笑み合った。





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こんばんはニコニコ



海へとやって来た二人。

夏とは違って人出はあまりなく、ゆっくりと癒しの時間を過ごします。


来年は夏の海に来ようと、この先の未来も約束したかのようで嬉しくなる二人です。



もう少し続きます。

お付き合いよろしくお願いします照れ


side M


出発して少しすると車通りが多くなってきた。

市街地を抜けるまでは車の進みがゆっくりになりそうだ。


「渋滞ぎみ?」


「ああ。こればかりは仕方ないな。

多分もう少しで流れが良くなるはずだけど。」


渋滞にはまると運転する人はイライラしたり気持ちに余裕がなくなりがちだって聞くけれど、大祐さんにはそんな素振りはない。


「まあ時間はたっぷりあるんだし、のんびり行こう。

それに、真緒とのドライブが長く楽しめる。」


大祐さんが前を向いたまま、ニッコリと笑う。

僕はそんな彼の横顔を見つめる。


大祐さんも僕と同じ事を考えているのだと嬉しくなる。




それからまたしばらく走ると、だんだんと車の流れがスムーズになってきた。

周りの景色も建物よりも自然が多くなった。


「ようやく順調に走れるな。」


「そうだね。

大祐さん、疲れてない?」


「いや、大丈夫だよ。

真緒の方こそ疲れてないか?」


僕は乗ってるだけだから大丈夫だけど、運転する人の方が気を張るのではないかと思う。


「ううん。僕も全然平気だよ。」


「そうか。なら良かった。」


そう言って優しく微笑む大祐さん。

運転中だから相変わらず目線は前に向いたままだけど、僕は彼のその笑顔を見ているだけでキュンとしてしまう。



車窓から見る景色は最近まで夏だったけれど、いつの間にか秋へと変わりつつある。


良く晴れた天気と大祐さんの安全運転のおかげで、僕は快適なドライブを楽しめている。


景色を見て、時々隣の大祐さんを見つめて。


ハンドルを持つ骨ばった男らしい手や、遠くに視線を向ける真剣な眼差しにドキドキしながらも、二人だけのこの空間にいる事に安らぎを感じる。


そうしてゆったりと穏やかな時が流れる中、窓からは海が見えてきた。


「わあー、海だ。」


「真緒は海好き?」


「うん。海が好き、というか夏が大好き。

夏生まれだからかな。」


「そうか。

真緒は夏ってイメージだよな。

夏のキラキラした太陽のような笑顔。

俺が一番好きな真緒だよ。」


そう言って、大祐さんの指先が僕の手を探りギュッと握ってくる。


「大祐さん!?」


「車の中だから誰にも見られないよ。

それに・・俺からは真緒の顔が見えないからな。

せめて手ぐらい良いだろ?」


「うん・・」


何だか、二人きりの空間で内緒で手を繋いでいるようでドキドキするよ。



やがて、すぐ近くまで海が見えてきた所で、


「まずはここで降りようか。」


「え、良いの?」


もう海水浴は終わりの時期なので、車から見るだけだと思ってた。


「ああ。夏は真緒と海に来れなかったからな。

さすがに泳ぐ事はできないけど、空気だけでも感じられたらって。」


「嬉しいよ、大祐さん。」


隣に視線を向けると穏やかに微笑む大祐さん。

その顔を見て僕も笑みが溢れる。


初めての二人の海でのデートだね。






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こんばんはニコニコ



いよいよドライブに出発しました。


恋人同士の二人なら、移動の車中でも楽しくドキドキです。


快調に車は走り、やがて海が見えてきました。

二人の海でのデートも初めてです。



次回に続きます。

お付き合いよろしくお願いします照れ


side M


大祐さんとのドライブの日が決まった。


「ちょっと遠くまで行くけど大丈夫?」


「うん。僕は遠くても良いけど、大祐さんが運転するの大変じゃない?」


初めての大祐さんとのドライブだから少しでも長く乗っていたいと思うけれど、僕は免許を持っていないから運転するのはずっと大祐さんになる。


「それは全然良いんだよ。

真緒の方こそ、車酔いとかずっと座りっぱなしで平気?」


「車酔いはしないし、僕は乗せてもらうだけだから大丈夫だよ。」


「そうか。

じゃ、当日は体調万全にしておいてよ。」


「大祐さんもね。

楽しみにしてるね。お願いします。」


僕達はふふっと微笑み合った。



さて。

何を着て行こうかな。

持っていくものは何があるかな。


あ、そういえばどこに行くんだろう?

大祐さんはちょっと遠くまでと言ってたけど・・

一緒ならどこだって楽しいよね。



いよいよ当日。

朝から良い天気だ。


晴れて良かったな。

大祐さんも運転しやすいだろうし、乗っている僕も気持ちが良いと思うから。


今日はこれから大祐さんが迎えに来てくれる。

それまでに支度しておかないと。



準備が終わった頃、


『真緒、おはよう。

今から家出てそっちへ行くところだけど、準備できてる?』


大祐さんから連絡がきた。


『大祐さん、おはようございます。

大丈夫だよ。お願いします。』


そう返信してから、外に出て大祐さんが来るのを待つ事にした。




少しすると、大祐さんが運転する車が家の前まで来た。


「真緒。お待たせ。」


ドアを開けて大祐さんが車から降りる。


「大祐さん。

ううん、そんなに待ってないよ。

・・かっこいいね。」


車も。今日の大祐さんも。


「そう?ありがとう。

真緒を乗せるからいつもより念入りに綺麗にしたよ。」


そう言って笑顔を見せる大祐さん。


「それじゃ、どうぞ。」


大祐さんが助手席のドアを開ける。


「ありがとう。」


僕が乗り込むとドアを閉めてくれる。

そういったエスコートも様になっていて格好いい。


それから大祐さんも運転席に乗ると、


「シートベルトしてよ。」


「はい。」


僕がするのを見てから自分もしっかりと締める。


「大切な人を乗せるから、安全運転でいくよ。」


大祐さんが横を向いて僕の頭をポンと撫でた。


「うん。ありがとう。」


大切な人・・

そんな風に言ってくれると嬉しくて心が暖かくなるよ。


「それじゃ、出発。」


「ねえ、大祐さん。どこ行くの?」


「それはお楽しみという事で。

きっと真緒も気に入る所だと思うよ。」


「そうなの?」


どこだろう?

大祐さんならきっと素敵な場所に連れてってくれるよね。


到着するまでの二人っきりのドライブを楽しもう。






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こんばんはニコニコ



彼とのドライブの日が決まり、どこに行くのかとワクワク。

車で現れた彼はやっぱり格好良くてドキドキ。


ドライブデートに出発です。



次回に続きます。

お付き合いよろしくお願いします照れ