あと10日したら、犬が死んで2年になる。
ちょうど2年前のわたしに戻れて、10日後にあの子が死ぬのをわかっていたなら、わたしはあの子に何をしただろうと考えた。
たぶん特別なことは何もしないだろう
いつもみたいにおはようって言って目を覚まし、ふわふわの毛をなでて、頭にキスをして。
お散歩に出掛けて、おやつをあげて。ご飯を食べて。
一緒に寝床に行き、大好きだよまた明日ねといつもみたいに声をかけ、寝姿を見守る。
特別なことは何もない。
10日後に訪れる死を、わかっているかわかっていないかの違いは、ただただ、ここにある幸せに、猛烈に気づいているか、気づいていないまま過ごしているかの違いだけ。
あの子が、自分の命を使ってわたしに教えた、命の重さや尊さを、わたしは全部持って、また新たな命を迎えた。
あの子がいなくなって、死ぬほどの悲しみを経験して、よくまた犬を飼う気になれるねと周りの人は言ったけど。
心が壊れるほど悲しむくらい、自分以外の誰かを、何かを、愛せるものに出会うことは、それだけで自分が生まれてきた意味になるくらい、すごいことだと思った。
この世界で、こんな尊い生き物と共に暮らせること、そして、こんな尊い感情を抱かせてもらえること。
幸せ以外のなにものでもない。
わたしはこの先、また命を失いどんなに打ちのめされようと、何度だって壊れるくらい悲しみ、その悲しみと共存して、生き続けることを選ぶだろう。
もう同じことは繰り返さない。
今この瞬間、瞬間の幸せをちゃんとかみしめて生きる。この子がそばにいる幸せを。
この子のことだけじゃなくて、きっと全部そう。
当たり前の日常の中に、幸せが溢れていることを、教えてもらった。
特別なことは何もなくても。
こんなに幸せなことはない。