『こぐまくんのハーモニカ』
ジョン・セバスチャン 作、ガース・ウイリアムズ 絵・三木 卓 訳
リブリオ出版、2000年邦訳初版
突然ですがこのブログのタイトルを、しばらく前に変えました。
新しい名前には、入れたかった言葉をたくさん詰め込んだ感じです。
それまでの名前も好きだったのですけれど、今回はすこしだけ大人に。
タイトルの 「Bear Cub」 というのは くまの子 という意味です。
cub【カブ】 という単語は獣一般の子どもをさし、
たとえばキツネやトラの子どもなども。
人間の子どもに当てはめる場合は、男の子を指す場合が多いようです。
私はくまの子が好きなので
ブログネームは日本語から英語に変わりましたが
再びこぐまくんを登場させました。
その 「大好きなこぐま」 として真っ先に頭に浮かぶのが
『こぐまくんのハーモニカ』。
ガース・ウイリアムズの線画が無限に愛らしい、ちょっと頑固そうな顔の、この子です。
彼の両親。
お父さんはハーモニカ奏者。 お母さんは作家。
なんて羨ましい家族構成なのでしょう(笑)
彼はそのひとり息子です。
お父さんがハーモニカ奏者ですから、こぐまくんは
お父さんのところに届く新しいハーモニカをときどき吹いてみたりします。
そのうち上手な音が出ることがわかります。
うれしくなって、もっともっと吹いてみるのです。
するとまわりの人がこぐまくんをほめました。
「やぁ。お父さんみたいに上手だね」
「上手だね」 うん。うれしい。
だけど・・・ 「お・と・う・さ・ん・み・た・い・に」???
ぼくは「お父さんみたいに」なりたい?
ハーモニカを吹いたって、「お父さんみたいに」?
そんなこぐまくんの成長する心に、あたたかく背中を押すのはお母さん。
そして、こぐまくんは考えます。
じっと、考えるのです。
彼がたどりついた答えは・・・。
「ハーモニカを吹く」。
なんて愛らしくて、素敵な仕草なのだろう と
デジタルミュージックで育った私は思います。
すぐそばでお父さんの吹くハーモニカは、あったかい音をしていて
こぐまくんは大好きだったに違いありません。
しかしお父さんの、そしてお母さんの
それぞれの姿を見ながら育つこぐまくんは、「じぶん」のことを考えます。
ハーモニカの音を通して。
朝も、昼も、夜も。
じっと、考えるのです。
どうかこの本を開いて、考えるこぐまくんの姿をご覧になってください。
ほんとうに、愛おしい。
その姿は唯一無二です。
大人になったって、誰もが「自分が何者か」を確かに知っているとは限らない。
若い頃のように、行ってはぶつかり行ってはぶつかりを繰り返さない器用さを身につけただけで、
ダイレクトに問わなくなっただけで、
自分が何者であるかなんて、おそらく人生が終わる瞬間までわからないのかもしれません。
けれど小さなこぐまくんは
自分自身のもつ伸びようとする心、
自分であろうとする心に
真摯に、誠実に、向き合おうとします。
こんな誠実さを、大人になった私たちは今、もっているんだろうか。
動物を描いたらピカイチ! (と私が思っている)のガース・ウイリアムズ は
こぐまくんの姿を見事に愛らしく、
ときに逞しく、
その喜びや悲しみ、悔しさ、思い、悩む様を描いています。
モノトーンの絵の見事なこと。
こぐまくんは、この本の中で確実に命をもって動いています。
余談ですが、このこぐまくん、私の愛するある人にそっくり。ほんとうに。
頑固者(笑)
そしてもうひとつ素晴らしいことは、
この本の訳者が 三木 卓さんでいらっしゃること。
がまくんとかえるくんの『ふたりはともだち』などの訳者として
多くの子どもの本の翻訳も手がけていらっしゃる名訳者です。
この本を開くたびに 「じぶん」 という永遠の問いを思い出すようで
こんなに小さいのに、こんなにひたむきに
じっと考えるこぐまくんに、ときについ、ほろりとしてしまいます。
こんな本を子どもたちが読んでくれたら。
こぐまくん。
君こそが 旅する本棚 traveling bookshelf に乗った 空飛ぶ bear cub だよ。
世界中のほかの誰でもなく、君こそが。
追記:
この記事を掲載するにあたり、ご許可くださった
リブリオ出版 様 に、心よりお礼申し上げます。
ありがとうございました。
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