点在する「わかった」が……
○月○日
J練習場から会社に戻った。Mさんに報告しようと思ったが、今日から関西方面への出張らしい。帰京は1週間後、ということだ。
相談したいことがあったが、自分の身体が理解するまで、自己解決に挑戦してみよう!
帰宅後、早速C練習場へ行く。
新しい打ち方が身体にマッチしてきたようだ。何回振っても狂いが出ない。特にドライバーは、スイートスポット付近が、輝かり始めた。何回も同じ個所でインパクトしている証拠だ。しかもフルパワーで、
打球練習が100球を越えた頃、また記憶の奥底から沸きだしたことがある。
高校1年の時、野球部の先輩から、
「おまえ、ちょっとバットの素振りをやってみろ!」
と言われて1時間くらいやらされた記憶がある。
先輩から「バットが波うってるよ!だからボールが飛ばないんだよ。もっとシャープに振れ!」
「シャープに振る?か…」
もっと振り込まないとものに出来ないだろうな(>_<)
2年6ヶ月の野球部在籍で〝波うつ〟バットスイングは若干改善されたが完璧にはならなかった。
「シャープに振る……」
そうだ!
点在する〝わかった〟の項目が線になって結びつき始めた。
社命ゴルフ練習2日目
○月○日
またまた日中にJゴルフ練習場に来ている。今日も自分の身体が喜ぶ練習が出来るだろう。
まずはアプローチ。アプローチが「耳から」を一番実感出来るのではないかと思う。
PWのアプローチとフルショットで20球、7番アイアンで10球、5番アイアンでも10球、スプーンで10球、ドライバー20球。そしてPSのアプローチとフルショットで30球。ノルマの半分を終えて少し休憩を取る。
程良いインパクトの感触で爽快感が再び自分を覆っている。全身の心地よい疲労感が何とも言えない。
ふと、以前ゴルフ雑誌で読んだことのあるフレーズが記憶の奥底から甦ってきた。
〝飛ばしの筋肉は、背筋と腹筋だ〟
なんと今の自分の症状と共通項があるじゃないか!背筋と腹筋に張りが出てきたのだ。今までの打ち方では、絶対あり得なかった現象だ。
「これは、何かありそうだぞ。」と物思いに耽っていると、ちょっと離れた打席に〝安田大サーカス〟を彷彿させる、3人組の男性たちが賑やかにボールを打っている、ことに気が付いた。3人の中の一人が〝大デブ〟ということだけで〝安田大サーカス〟を連想してしまうのも失礼かな、と心の中で笑ってしまった。
後半の100球を黙々と打っていると、多分〝安田大サーカス〟の男性達の話が聞こえてきた。
「あの人、インパクトの音が凄いよ!あのように打たなくちゃ。」
周りを見回して、多分自分のことを言っているのだということは理解できた。
そうなのだ。この打ち方に変えてからインパクトの音がまるで違うのだ。だからボールの伸びも、飛距離も変わってきたようだ。
なんだか怖いような…世界で初めて、古代文明の財宝を発見したような、ドキドキ感が自分を包み始めた。
ワクワク感の報告
○月○日
翌朝、Mさんが出社してくるのが待ち遠しかった。Mさんが出社後、自分から率先して報告した。
「おはようございます。昨日の報告があります。今 宜しいですか?」
「Aさん、おはよう。大丈夫だよ。早速聞かせてもらおうかな。」
僕はJ練習場での結果、帰宅後も練習場でボール打ちを繰り返したことを伝えた。
「Aさんは、まだ30歳台だからのみこみが早いね。でも、まだ心許ない、とか恐々と打っているんじゃないかな。でも、ボールをしっかりと捉えられている。」
「そうです。」
「これからボール打ちを繰り返していくうちに不安が徐々に解消されていくと思うよ。そして、よりパワーアップしたインパクトになってくるはずだ。」
「でも何故、この打ち方を教えてくれなかったのですか?わざわざゴルフスクールに通わせましたよね。」
「そうだね。無駄なスクール通いだったかもしれないな。しかし、このレッスンは初心者には少し理解しにくいことなんだ。まずは、〝手打ち〟でも良いから、クラブの、トップ~インパクト~フォローの動きを、学んで欲しかった、ということなんだ。」
「そうなんですか。でも何故、こんなに確実なインパクトになるのですか?まるで手品のようですよ。」
「ハハハ、手品とは面白いね。ゴルフスイングとは、物理現象なんだよ。何故このような現象になるのか、ボール打ちを繰り返して自分自身の身体で理解して欲しいんだ。宜しく頼むよ!」
「了解しました。今日もJへ行って練習してきます。」
2005マスターズ最終日、16番で見せたタイガーのチップショット
タイガーのチップインバーディ(16番)が無ければ、ディマルコのメジャー初制覇になっていた、と思います。
彼のチップショットは、彼の〝技術〟と断定するのは簡単です。しかし、そうすれば話が終わります。彼の技術が何なのかを洞察する為には、もっと深い読みが必要です。
タイガーのティーショットは池を越えたグリーン左のラフ。池に向かってグリーンが傾斜しています。ホールに向かって直線的なアプローチは出来ません。ここで彼がスイングメカニズムとイメージが連動したショットの仕方を披露することになるのです。
そのショットの方法とは?
練習を終わって、こんな満足感・爽快感は初めて
○月○日
帰社してもMさんは外出中だった。今日は戻らないらしい。歓喜に似た気持ちを伝えたくてワクワクしていたのに……デスクワークをしていてもワクワク感は静まりもしなかった。「よし!今晩は酒を控えて地元のドライビングレンジで練習だ。」終業時間になったとたんに会社を出ていた。帰宅してすぐに地元のC練習場へ。午後8時をまわって打席はほぼ満席。左右隅の打席しか空いていない。フック打ちの自分としては、最後まで打球が確認できる右隅の打席にすることにした。ここもプリペイドカードを採用している。
このカードはプラスチックでできているのだろうけど、私鉄各社のパスネット、図書カード、量販店のポイントカード等、日本国内に1億枚以上は出回っているんだろうな、と感心してしまう。好景気なプラスティック業界の人たちが羨ましい。
さて、練習。昼間実行した練習通りにPWでアプローチ。いいぞ。インパクトの感じがなんとも言えない良い感じ。スピンの利き具合なんて、自分が打っているなんて信じられない。フルショットをいつも通りにこなしていくが、芯を捉えた状態が連続していく。ドローは出るもののフック球が全く出ない。
自分の身体が〝喜んでいる〟スイングとでも言うべきかもしれないな。
さあ!J練習場へ
○月○日
あくる日、Mさんは僕を呼びだしCD聴取の確認をした。そして「私は練習場で君をサポートしないよ。記憶に残ったことを身体に反応出来ることに気を付けて、一人で練習してきてくれ!」と指示された。日中の練習の許可が出て、早速近場のJ練習場へ向かった。自分にとっては初めて訪れる練習場だ。入場料200円を払って、〝ボールカード〟というプリペイドカードを自動販売機で購入する。1,000円、3,000円、5,000円、10,000円、4種類のカードがある。週3回トータルで600球くらいボールを打たなければならないから10,000円カードを買った方が良さそうだ。その方が特みたいだ。1階と2階で30打席ずつ60打席、奥行き200ヤードの中堅練習場。平日の昼間だというのに6割くらい打席がうまっている。受付エントランスからストレートに見える打席は、皆が嫌うのか当然の如く空いていた。その打席に、会社備え付けのクラブ6本入った練習用バックを置いた。
練習前にまずは、一服……
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さあ!ボール打ちの実践だ。ちょっと怖い感じもするのでPWを使ってバックスイングの小さいアプローチから始めよう。1球目=「ムムッ」、2球目=「へー」、3球目=「何故だ」 今まで味わったことの無いインパクトの感覚が身体に伝わってくる。次はフルショットに挑戦してみよう。バックスイングはCDのアドバイスでは仮の位置から始めろ、と言っていたのでスクールで習ったことで良いだろう。PWフルショット1球目=「ホーッ!」、2球目=「ヘーッ!」、3球目=「なんでだ?!」 ダフることがまったく無い。信じられないようなクリーンヒットの連続だ。この練習場はワンピースの団子ボールでなく〝ロストボール〟を使っているのでクラブフェイスにはクッキリとボール跡が残る。それも、殆ど狂いもなくスイートスポットに集まっている。「何故なんだろう?」何故だか気分が良くなってくる。あと5本のクラブも早速試してみよう。7番アイアン、5番アイアン、スプーン、ドライバー、全てがクリーンヒット出来ている。苦手だったスプーンは生まれて初めてのナイスショット連発である。最後にPSでアプローチ練習。ゴルフスクールでは、絶対無かった爽快感が沸いてきた。Mさんに早く報告しなくちゃ!200球のノルマも楽しく簡単に終わってしまった。ウキウキ気分でクラブをバックに入れて、練習場を後にした。