高校生になって間もなく、部屋に脱ぎ捨ててあった彼の制服のブレザーをハンガーにかけようと手にとったら、
胸ポケットにタバコとライターが入っていた。
びっくりして、彼に聞いた。
「いつから?」
高校に入ってすぐに仲良くなった友だちがタバコを吸っていて、吸わない彼に「ダサい」と言ったことがきっかけだったとか。
そんなきっけで吸い始める方がダサいよ、タバコなんて体に悪いし、止めるように言った。
彼はちょっと困った顔をして、そうだね、と言った。
それ以来、タバコを持っている姿を見なかった(わたしの前では吸わないと決めていたらしく、吸っているところは一度も見たことがなかった)けど、
たまに部屋とか服がタバコ臭いことがあった。
だけどそれはきっと、彼が吸ったタバコの臭いじゃないだろうと、わたしは思っていた。
でも、偶然、彼が友だち何人かでたむろっているところに出くわしたとき、見てしまった。
慌てて火を消す姿を。
いろいろな悲しさがわたしの胸を埋めつくした。
いちばんの悲しさは、わたしに隠していたことだった。
隠し事が二人の間にできることなんて、ないと思っていたから・・・。
気がついたら涙がポロポロこぼれていて、彼の友だちがみんな驚いていた。
彼が、ごめん、と言って、その場からわたしを連れ出した。
それから数日して、悔しさからか、どうしてもタバコを止めさせようと思ったわたしは、絶対に彼に効果のある方法を思いついた。
「タバコやめないなら、わたしも吸う。」
そう彼に言って、カバンの中からタバコとライターを出して見せた。
「体に悪くないって言うなら、わたしも吸って平気だよね?」と、1本取り出して火をつけようとしたところで、
彼は「ごめん。」と顔を赤らめ、わたしの手からタバコを奪った。
今にも泣き出しそうな顔で、「やめないなら別れる、って言われると思った。でも、それ以上にきつい。」
「お前はタバコになんて絶対興味持たないから、俺にやめさせるために考えたんだろ。」
わたしの気持ちも考えも、きちんと彼に届いた。
「彼女に言われてタバコ止めたなんてダサいよなぁ。」という彼に、
「それならわたしはダサい方が好きだよ。」と言った。
そして、わたしたちは初めてのキスをした。
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