日米首脳会談―「同盟深化」も、沖縄も

 日米関係もまた再スタートである。

 菅直人首相とオバマ米大統領が初の首脳会談を行った。両氏は「アジア太平洋の平和と安全の礎」として日米同盟の重要性を確認し、首相は9月の国連総会時 に訪米する意向を表明した。

 米海兵隊普天間飛行場の移設問題は、鳩山由紀夫前首相の稚拙な運びによるところが大きいとはいえ、歴史的な政権交代によって生まれた内閣を崩壊させる引 き金を引いた。

 日米関係の大局からみて、一基地の問題が両国関係全体をぎくしゃくさせ、日本の首相交代にまでつながったことは、双方にとって不幸だった。

 だからこそ、両首脳とも今回の会談を、信頼関係を築き直す第一歩と位置づけて臨んだに違いない。

 首相は鳩山前政権下で結ばれた日米合意の履行を約束し、大統領も「日本政府にとって簡単な課題でないことは理解している。米軍も地域に受け入れられる存 在であるよう努力したい」と応じた。

 大統領から首相の訪米を要請したのも、前首相との間で機能不全に陥った首脳外交を立て直す狙いからだろう。

 しかし、普天間移設を実現する政治的困難さは何ら変わっていない。

 沖縄の民意の大方は、日米合意に盛り込まれた名護市辺野古への移設に反対している。菅政権が合意に従い、地元の理解抜きでも、8月末までに滑走路の場所 や工法を決めた場合、県民の反発は一層強まるだろう。11月の県知事選で県内移設反対派が当選すれば、実現はさらに遠のく。

 首相は移設と並行して、沖縄の負担軽減に全力を尽くすことで地元の理解を得たい考えだ。今回、大統領にも直接、協力を求めた。

 しかし、首相にはさらに踏み込んで欲しかった。沖縄の厳しい現状や日米安保体制を安定的に維持するためにも沖縄の負担軽減が欠かせない事情を、もっと率 直に語れなかったものか。

 短時間の初顔合わせとはいえ、無難に調え過ぎた印象は否めない。難しい課題を脇に置いたままで日米のあるべき首脳関係を築けるとは思えない。

 両首脳は「同盟深化」の議論を続けることでも一致した。テロや核拡散、地球温暖化、大規模災害など、地球規模の新たな脅威にどう対応するかが中心となろ うが、米軍と自衛隊の役割分担の見直しに発展する可能性もある。

 首相は大統領に「日本国民自身が、日米同盟をどう受け止めるか、将来に向かってどういう選択を考えるか、もっと議論することが重要だ」と語った。沖縄の 基地問題についても、大きな文脈の中で打開策を考えたい。

 同盟深化と沖縄の負担軽減を一体的に考えるために、国民的な議論を始めなければいけない。首相にはそれを主導する責任がある。


角界賭博問題―開催優先では出直せない

 開催か、中止か。野球賭博問題にからみ、注目されていた大相撲名古屋場所について、日本相撲協会は28日の臨時理事会で、来月11日から開くことを決め た。

 外部有識者による特別調査委員会が「勧告」で、条件とした親方や力士らへの処分をほぼ受け入れた上での開催ではある。だが、まだ事件の全容が明らかでは ないままの場所開催には強い疑問を感じる。

 「条件」とは、野球賭博にかかわっていた大嶽親方と時津風親方、大関琴光喜関への懲戒処分のほか、関係した力士の謹慎休場、武蔵川理事長ら親方の謹慎処 分などだ。

 賭博問題は単なる特定の個人の不祥事ではない。51ある相撲部屋のうち、現時点で14部屋の親方や力士らが賭博に関与していた事実は、角界の構造汚染を 物語っている。維持員席が親方を介して暴力団関係者に渡っていた問題などを含め、角界そのものが反社会的勢力にむしばまれているのだ。

 そもそも賭博問題は警察の調べがまだ終わっていない。特別調査委の調べもまだ続いている。全協会員約千人を対象にした調査を書面で行っている。仮に追加 調査で重大な事例が判明した場合にはどうするのか。

 そんな現状を考えれば、場所開催を中止してでも、事件の全容解明に努め、角界の抜本的な改革を考える方が先ではないか。

 場所開催の中止は、暴力団に屈することになるという声があるが、倒錯した議論だ。角界の大掃除が中途半端なまま興行を続ける方が、暴力団には都合がいい だろう。

 名古屋場所では、琴光喜ら十両以上の70人のうち、2割近い力士が土俵に上がらない。勧告に従い、最高責任者である理事長が謹慎して、理事長代行が場所 運営を担うのも極めて異例だ。師匠が謹慎したまま場所に臨むことになる部屋も多数ある。

 そんな異常事態の中、あえて名古屋場所を開く理由は何なのか。

 入場料収入だけで10億円を超えるという興行的側面からの判断が優先的に考慮されたのだとしたら、当事者たちは、事態の深刻さをまだ理解していないとい うほかない。

 協会執行部は「死に体」も同然だ。外部理事を除く理事10人中、武蔵川理事長ら4人が謹慎である。場所開催の可否を判断する前に、執行部は自ら総辞職 し、まずは責任を取る。その上で監督官庁の文部科学省の指導を仰ぎながら、新しい顔ぶれで協会を立て直す方策を探るのが筋ではないか。

 角界は土俵を最も神聖視してきたはずだ。名古屋場所で下位力士の引き上げなど「水増し」で取りつくろうような運営をするのだとすれば、それは土俵を自ら 汚すことにもなる。

日米首脳会談 信頼回復へ共同作業を重ねよ(6月29日付・読売社説)

 まずは無難な初顔合わせだった。だが、傷ついた日米の信頼関係を再構築するためには、今後、政治、経済両面での共同作業を着実に積み重ねることが 肝心である。

 菅首相がカナダ・トロントでオバマ米大統領と会談した。日米同盟が「両国だけでなく、アジア全体の平和と繁栄の礎」と確認したうえ、安保条約改定 50周年に合わせた同盟深化の日米協議を加速させることで合意した。

 鳩山前首相が、民主党の掲げる「対等な日米同盟」というスローガンにとらわれて、日米関係を大混乱させた後だけに、同盟の意義を再確認したことは 良かった。

 「トラスト・ミー(私を信じて)」といった不見識な言動を繰り返した前任者と異なり、菅首相は、慎重な発言に終始している。日米関係を修復しよう との意思は、米側にも伝わったのではないか。

 米軍普天間飛行場の移設問題について菅首相とオバマ大統領は、移設先を沖縄県名護市辺野古周辺とした5月の日米合意を着実に実施するとともに、沖 縄の負担軽減に努めることで一致した。

 普天間問題がここまでこじれたのは前首相の「負の遺産」だが、日米両政府が14年も費やしてきた以上、停滞させてはおけない。

 代替施設の位置や建設方法の詳細を詰める日米協議と並行して、最大の難関である地元の理解を得る努力を続ける必要がある。

 普天間飛行場の辺野古移設の実現こそが、沖縄全体の基地負担を大幅に軽減するための最も現実的で有効な手段である、と粘り強く説得することが大切 だろう。

 韓国の哨戒艦沈没事件で両首脳は、国連安全保障理事会で北朝鮮を非難する明確なメッセージを出すべきだとの立場を確認した。

 主要8か国(G8)首脳宣言には、ロシアを押し切り、北朝鮮を非難する表現を明記できた。日米が連携し、議長国カナダなどに働きかけたことの成果 だ。

 中国が慎重なため、安保理協議の行方は予断を許さないが、国際会議における日米協力の有用性の実例と言えよう。

 日米の連携をより強固にするには、11月のオバマ大統領来日に向けて、同盟深化の作業を着実に進めるべきだ。米軍の抑止力、ミサイル防衛、サイ バー攻撃対策など安全保障面の日米協力を具体化させなければならない。

 同時に、北朝鮮、イラン、アフガニスタン情勢や世界経済、環境など、より幅広い分野で日米が緊密に協議することも重要だ。


名古屋場所開催 勧告踏まえて抜本的改革を(6月29日付・読売社説)

 幕内だけでも7人の力士を休場させ、理事長までもが謹慎という異常事態の中、日本相撲協会は7月11日からの名古屋場所の開催を決めた。

 野球賭博問題で相撲協会の信用は失墜した。場所開催を疑問視する声も少なくない。そうした中で場所を開くからには、協会は、ファンが納得する浄化 策を早急に示さねばならない。

 相撲協会の理事会は、外部の10人で構成する特別調査委員会から「名古屋場所開催の条件」として提示された勧告を受け入れることを決定した。

 勧告は、常習的に多額の金を賭けていた大嶽親方(元関脇貴闘力)と、恐喝事件に巻き込まれた大関琴光喜について、「解雇以上」とするよう求めた。

 さらに、野球賭博にかかわった力士と、所属する部屋の親方の謹慎も求め、これを受けて協会は、琴光喜ら14人の力士の休場を決定した。謹慎する親 方には、武蔵川理事長も含まれている。

 大嶽親方、琴光喜については、7月4日の理事会で改めて処分を決めるが、勧告通り、厳罰は避けられないだろう。大鵬部屋を継承した大嶽親方、日本 人力士最高位の琴光喜の不祥事を残念に思うファンも多いはずだ。

 協会は当初、賭博への関与を自己申告した者には、厳重注意でとどめようとした。しかし、一般社会では、とても通用しない甘い対応だ。勧告内容は、 そうした協会の認識に対するレッドカードだったといえる。

 不祥事の度に、相撲協会の危機管理の甘さが指摘されてきた。大相撲出身者が協会の運営を取り仕切る閉鎖体質が、自浄能力の欠如につながっているの だろう。

 親方までも関与していた野球賭博問題を通し、今のままでは角界の規律の維持は困難であることが明白になったといえる。

 時津風部屋の暴行死事件の教訓から、相撲協会の12人の理事のうち、2人が外部のメンバーとなっている。この外部理事の数を大幅に増やすなど、執 行体制の抜本改革が必要だ。

 理事長代行には、外部理事の村山弘義・元東京高検検事長が就く見通しだ。

 名古屋場所が開催されても、土俵に声援を送る気になれないというファンもいるだろう。懸賞金の提供中止を決めた企業もある。

 名古屋場所を大相撲再生のきっかけとするためには、協会の再建や力士教育の具体策作りを急がなければならない。

2010年6月29日01時40分

社説:日米首脳会談 再出発へ課題は重い

 「日米両国の安全だけでなくアジア太平洋地域の平和と繁栄にとっての礎でもある日米同盟をさらに深めていこう」。こうした認識を菅直人首相とオバ マ米大統領が確認し合った。普天間問題の処理という重い課題は残るが、関係修復へ日米首脳が出発点に立ち戻ったことをともかく歓迎したい。

 思い返せば、念願の政権交代を果たして初訪米した鳩山由紀夫前首相と、オバマ大統領が同盟関係の強化を確認したのは昨年9月だった。「日米同盟は 日本の安全保障の基軸だ」と強調する前首相に、大統領は「今日から長い付き合いになる。その中でひとつひとつ解決していこう」と応じた。

 あれから9カ月。日米関係は普天間問題で揺れ、同盟深化どころか首脳会談さえまともに開けない異常な状態が続いた。それだけに、菅、オバマの両首 脳には再出発の確認の場となった今回の首脳会談の重みを認識してもらいたい。

 菅首相はオバマ大統領との会談に向け、日米同盟に関する共通認識を持つことと、個人的信頼関係を築くことに期待を示していた。

 日米同盟に関しては「過去50年以上にわたりアジア太平洋の平和と安定の礎として不可欠な役割を果たしてきた」(首相)、「今後50年も素晴らし い歴史を築いていけることを確信している」(大統領)との認識を確認し合った。11月の横浜でのアジア太平洋経済協力会議(APEC)の際に訪日する大統 領との間で日米安保の新しい意義付けや経済、文化なども含めた同盟深化の具体策をどう練り上げるかが課題となる。

 日米関係修復への大きなハードルは言うまでもなく普天間問題だ。沖縄県名護市のキャンプ・シュワブ周辺への飛行場移設を盛り込んだ先の日米共同声 明は、代替施設の位置と工法の検討を8月末までに終わらせることを明記している。

 菅首相は共同声明に基づき移設実現に真剣に取り組む考えを大統領に伝え、それに先立つ記者会見では米軍基地の有無が日米のイコールパートナーシッ プ(対等な関係)に直結するとは考えていない、と語った。米側への配慮も込めた発言だろう。

 しかし、鳩山内閣が地元の頭越しに米側と合意したことに地元の反発は激しく先の見通しは立っていない。処理を誤れば前内閣の失敗を繰り返すことに もなりかねない。

 首相にまず求められるのは前内閣が県内移設に方針転換した事情をていねいに説明し、地元との信頼関係を築くことに全力を尽くすことだ。オバマ大統 領も理解を示したように、両政府は沖縄の負担軽減にも真剣に取り組む必要がある。


社説:名古屋場所開催 まだ土俵際の危機続く

 野球賭博をめぐる激震が続く中、日本相撲協会は、名古屋場所を予定通り開催することを決めた。胸をなで下ろす相撲ファンはいるかもしれないが、事 態は決して楽観できるものではない。相撲界が存亡の瀬戸際に立たされているというのに、協会の対応は依然として手ぬるく、「外圧」を受けないことには動か ない感度の鈍さを露呈している。

 協会は今月21日の理事会で、名古屋場所を開催するかどうかを7月4日の理事会で決めるとした。名古屋場所は同11日が初日で、4日はわずか1週 間前。あまりに悠長な協会の対応は、結論を抜き差しならないところまで先送りし、なし崩し的に名古屋場所開催にこぎ着ける作戦ではないかと疑われても仕方 がない。

 これに対し、同じ日の理事会で設置が決まった学識経験者ら10人で作る特別調査委は結論を急いだ。わずか2回の会合で9項目の勧告をまとめ、その 受け入れを条件に、名古屋場所開催を認めると協会に迫った。

 勧告は野球賭博に関与した力士らの処分を求めただけではない。武蔵川理事長の「指導責任」も問い、理事長代行を置くことも求めた厳しい内容だ。

 結果的に特別調査委は協会に「助け舟」を出したと思われる。早急に結論を出そうとした分、調査は十分といえず、今後、新たな疑惑が浮上したら、特 別調査委自体が批判を招く恐れもある。それでも結論を急いだのは、協会執行部の悠長な対応では名古屋場所の中止が避けられなくなる事態を恐れたからだろ う。

 その「温情」を協会は理解できているのだろうか。「勧告を受け入れる」としながらも、関係者の処分は7月4日に先送りし、理事長代行の人選もそれ まで持ち越した。この期に及んで、いまだ協会の体面を守ろうとしているように映る。

 毎日新聞が27、28日に実施した世論調査では名古屋場所を「中止すべきだ」という意見が61%に達し、「開催すべきだ」の33%を大きく上回っ た。国民が求めているのは相撲界の抜本的な体質改善であり、本場所だけ開催できれば危機は去ったと考えるのは大間違いだ。

 ここ数年、相撲界は相次ぐ不祥事に揺れ続けている。そのたびに協会幹部の対応に問題を残した。相撲界のことは大相撲出身者だけで決めればいい、と いう考えはもはや通用しない。相撲界の「内輪の論理」だけでことを解決しようとするなら「国技」と名乗るのはやめてもらいたい。公益法人としての税金の軽 減も返上すべきだ。

 大相撲が真に国民的娯楽として生まれ変わることができるか。名古屋場所以上に全国の相撲ファンが注目しているのはその点だ。