チェット・ベイカーの半生を描いたBorn To Be Blue『ブルーに生まれついて』を観てきた。
まだ公開されたばかりなので詳細は伏せるけど、見終わった後に生まれて初めて映画のパンフレットを買ったと言えば、この映画の素晴らしさが伝わるかな?
チェットを演じる主演のイーサン・ホークにチェットが乗り移った様で、喋り方や仕草が生前のチェットに激似。
又、作中に出てくるディジー・ガレスピーとマイルス・デイヴィスも雰囲気があって興奮した。
↑作中のディズ。そっくり(笑)
これから映画を観に行こうとしてる方には、チェットの生涯を時系列で簡単にまとめたので、これに目を通すだけで、『ブルーに生まれついて』が一層楽しめると自負しております。
1929年
チェット・ベイカー生まれる
1941年 チェット12歳
合唱団に入る
1942年 13歳
父親がトロンボーンを買い与える
高校時代にトランペットへ転向
1946年 17歳
徴兵により軍隊へ入隊。
この時、ディジー・ガレスピーのレコードを聴いて驚愕する
1948年 19歳
除隊後、エルカミーノ大学で音楽理論を習う。
1952年 22歳
LAでチャーリー・パーカーのオーディションに参加。
バード(パーカーの愛称)はチェットの演奏を聴いてオーディションを中断し、NYに居るディジー・ガレスピーとマイルス・デイヴィスに、『気を付けろ!LAには凄い[ひよっこ]が居る』と電話をする。
バードとチェットのライブは、BIRD & CHETとして残ってる。(廃盤)
※ソニー・クリスが激ヤバ
マイルスは自分のコピーをして人気を博してるチェットを見にLAに行き、最前列ど真ん中でライブを観る。
8月
バリトンサックス奏者、ジェリー・マリガンと出会う。
マリガンと当時としては珍しいピアノレス・カルテット結成。
『バーニズ・チューン』『木の葉の子守唄』が若者を中心に大ヒット。
チェットとマリガンのピアノレスカルテットは後世に名を残す。
1953年 23歳
麻薬の不法所持でマリガン逮捕。
3か月後に保釈。
チェットがマリガンと再び組もうと訪れるも、法外なギャラを要求され、マリガンと組むことを断念。
マイルスと対面
左から
チェット、マイルス、ロルフ・エリクソン(凄い画!!超豪華!)
10月
ラス・フリーマンと組んで初めて歌を吹き込む。
これが翌年発売される大名盤『CHET BAKER SINGS』
1955年 25歳
初のヨーロッパツアーで、神童ディック・ツワージク(p)と出会うも、ディックはツアー中にヘロインの過剰摂取で他界。
アメリカへ帰国。
LAで貯まった薬代を踏み倒すためNYへ渡るも、NYで逮捕(麻薬所持)
1959年 30歳
再び麻薬で投獄されるも、レコード会社『リヴァーサイド』が保釈金を払い保釈。
今度はNYの売人から薬代を踏み倒す形でヨーロッパへ渡欧。
ヨーロッパに行ってから演奏スタイルがコマーシャルになり、プレイに精彩を欠く。
麻薬絡みにより、ドイツで数回逮捕➡イタリアへ
1961年 31歳
イタリアで逮捕(麻薬)。懲役16ヶ月を言い渡されるが、有能な弁護士雇って刑期の短縮に成功。出所後イタリア国外追放。ドイツへ。
ドイツで逮捕(麻薬)。スイスへ追放
フランスでトランペットを盗まれる。
仕方なくフリューゲル・ホーンに転向。
1964年 34歳
ドイツで数回逮捕(麻薬)され、国外追放
1965年 35歳
アメリカへ帰国
1970年 40歳
サンフランシスコでのライブ後、5人の暴漢に襲われ、アゴは粉砕し唇も破壊。前歯を全てを失うリンチにあう。
(ペンチで一本ずつ抜かれた説もあるけど、チェット本人は否定してる)
暴漢は売人。
1974年 44歳
入れ歯を手に入れ、16年振りにNYのジャズクラブで演奏。
チェットの復帰へ、資金面での支援をしてたのはディジー・ガレスピー。
チェットに入れ歯を与えたのは、ガレスピーだとも言われてる。
1975年 45歳
本格復帰。ヨーロッパツアーを行い、多数のレコードを残してる
1986年 56歳
実現不可能と言われてた来日公演が実現
1987年 57歳
二度目の来日公演
1988年 58歳
5月13日
アムステルダムのホテルで謎の転落死を遂げる。チェットが大事そうに抱えてた腕の中にはトランペットがあった。
チェットが謎の死を遂げたのは、13日の金曜日だった。
とまぁ、こんな感じ。
チェットはプレイヤーとしては確かに巧いけど、同世代のリー・モーガン、フレディ・ハバード、ウディ・ショウと言った、黒人トランペッターの様に、猛々しい力強さや、ガレスピーの様なハイノートヒッターでもない。
同じ白人だと、ビックス・バイダーベックや、ハリー・ジェイムスの驚異的な運指で疾走感のあるフレーズを吹くわけでもない。
人気を二分したマイルスには緻密に計算されたフレーズがあったけど、チェットにはない。極めてシンプルなフレーズを残してる。
僕は子供の頃、最晩年のチェットをテレビで観た事がある。
決して巧くはないし、同じトランペッター目線で全然吹けてないと感じたけど、シンプルで哀愁を帯びたフレーズは、今も耳に残って離れない。
僕も上唇6針と下唇3針を縫う大怪我をしてトランペットを諦めた。
唇を破壊される事は、トランペッターにとって死の宣告でもある。
作中でチェットが血塗れになりながら吹いてる姿に、過去の自分を投影して辛かったけど、チェットは絶対に諦めないで復帰した。
どうしょうもないダメ人間だけど、圧倒的なカリスマ性で今も絶大な人気があるチェット。どこか憎めない不思議な人。
薬中って事を除いて、不良がトランペットを持つと、こんなに絵になる!って象徴的な人でもあった。
Let's Get Lost





