乳がん検診で最も危険なケースは腫瘍発見よりも見落とし。「あなたは健康です」という結果を受けながら、自覚症状もなく急速に悪化しながら余命宣告を受ける、という悲劇を未然に防ぐ手段はあるのか?
 

一般に行われている3種類の検査方法では、見落としは避けられないという事実がありますが、マンモグラフィー検査の腫瘍発見による獲得余命と被ばくによる損失余命はどちらが大きいのか?
 

見落としによる有名人の死が相次ぐ中、自分が生き残るためにはどの検査を受けてどう対処すればいいのかという問題と、検査被爆について説明しています。
 

 見出し                         /
 
1.乳がん検診は、早期発見が本来の目的ではない
2.腫瘍の大きさ次第で発見率が変わる「視触診」の有効性
3.自治体によって異なる乳がん検診の方法

4.超音波検査等の併用と見落としの責任問題 

5.最も無難な超音波検査とマンモグラフィーの併用

6.マンモグラフィーを始めとするX線検査の被爆とは

7.完全に排除できない乳がん検査の見落とし
8.「検査のX線被爆は安全である」とする検査機関の言い分

9.具体的な被爆の数値と、Gy、Svの都合のいい使いわけ

10.自然放射線以下のマンモグラフィー検査の被爆量(Sv)
11.線虫の嗅覚センサーを利用した発見率95%以上のがん検診 
12.見落としと被爆のない線虫検査実用化への動き
13.数年先に線虫検査(N-Nose)が主流になると・・・
14.モデル線虫(C.elegans)の入手方法と繁殖、保存方法


1.乳がん検診は、早期発見が本来の目的ではない         / 
 
国立がんセンターの統計によると、2015年の乳がん患者数は89,400人、亡くなる患者数は年間13,800人に及びます。患者数は今後も増加すると予想されていますが、年間死亡者数は減少する見込みです。
 
全てのがん検診の根本的な意味は死亡者数を減らすことであって、早期発見による治癒を期待したものではありません。早期発見によって治癒に至った者や、見落としが原因で闘病中の者は統計に含まれず、検診の有効性とは無関係です。全ての検診別有効性は、死亡率減少効果が比較対象になります。
 
定期検診に限らず、乳がん全般の検査方法では、視触診、マンモグラフィー、超音波検査、生検が主に行われて死亡率減少を目的としています。

 

検診以外では医師の判断により、術中のセンチネル生検、FDG-PET、造影MRI、腫瘍マーカーなどが使用され、悪性度の判断、治療効果、再発の状態を把握するための検査が行われます。

 

早期発見を含め、検査で発見された場合の治療効果は、進行度を表すステージや医療機関の違い、標準治療・先進医療の別、医師による薬の選択、リンパ節切除の有無で治癒率・再発率が異なり、5年生存率で表します。早期発見の治療効果は患者と医療機関固有の情報であり、厚労省に報告する義務があるのは死亡者だけです。

 

全ての乳がんを検出することができれば、治療が行われて治癒率や再発率の統計を取る事ができますが、「多すぎる見落とし」というものが統計上の盲点になり、統計結果の数字は意味のないものになっています。

 

結果的に、厚労省としては各自治体の検診において死亡率低下を図るために、早期発見より見落とし率の低下を目的としたガイドラインを作成しています。
  

 

2.腫瘍の大きさ次第で発見率が変わる「視触診」の有効性        /
 
「熟練した医師は、数秒の視触診だけで乳がんがわかる」と言われています。視触診単体では乳がん患者の死亡率低減に役立っていないということが数字上明らかになり、自治体の集団検診では視触診と超音波検査の併用が一般的に行われています。
 
視触診推進派の日本対がん協会によると・・・

 

 「熟練した医師だけでなく、全ての医師による視触診だけの乳がん発見率は54~59%程度であり、視触診で乳がんを発見された患者の5年生存率は94%です」
 
この数字をどう解釈するか?という問題ですが、乳がんを発見された者に対し、見落としにより再検査を受ける者もいます。視触診は医師であれば誰でも行える検査なので、発見率は医師の技量や経験に依存します。

 

乳がんを見落としされた者については追跡調査が行われていません。見落としは「異常なし」に含まれるので追跡することは困難です。発がんした患者ががん検診を受けていたかどうか?という後ろ向きの調査は可能ですが、それも行われていません。

 

ともかく、死亡率は発見率を上回ることが予想され、視触診を受けた全数の5年生存率は不明ということになり、何の意味も持たない統計結果になっています。
 
5年生存率とは単純に5年間死亡しない確率を意味するので、生存者の中には再発を起こして治療中の患者や、副作用に苦しみながら抗がん剤治療中の患者、終末期医療を受けている者まで含まれます。生存者のQOL(生活の質)は関係なく、死亡していなければ生存者扱いです。
 

ちなみに「余命5年」の場合は生存期間中間値のことであり5年後に半数が生存している確率なので、「5年生存率50%」と意味は似ています。生存率は統計上の数字が元になっているため根拠と正確さがありますが、余命は医師の経験が多少は影響します。
 
日本対がん協会では、視触診のメリットとして、「しこりがあると腫瘍を発見することができる」。という言い分であり、実際にマンモグラフィーで検出された3センチ以上の乳がんを視触診で検査したところ、全てを陽性と判別できたという結果もあります。

 

しかし、この表現は誤解を招く危険性があり、「視触診では3センチ以上の乳がんしか発見できず、2センチ未満の早期がんは発見されないため、死亡率減少効果は少ない」と解釈すべきです。

 

 

3.自治体によって異なる乳がん検診の方法              /

 

2013年~2018年の時点では、自治体による地域間格差の大きい検診として視触診単体、または視触診と超音波検査が行われて、40才以上はマンモグラフィー(X線乳房検査)が追加されます。

 

マンモグラフィーはどの病院でも受けられるわけではなく、市町村レベルの地方自治体ではいまだに視触診と超音波検査による判定が行われています。視触診と超音波検査で確定診断を行うことがあるため、「異状なし」と判定された結果、誤診があれば見落としの犠牲になります。

 

当人に見落とされたという自覚はなく、集団検診の場合でも「健康である」と証明されたかのように受け取り、ホッとするのが普通の感覚です。しかし、セルフチェックなどで乳房の左側から腋の下にかけてしこりがあると、再検査を受けた結果、悪性で進行した乳がんが発見されることがあります。

 

見落としによる5年生存率の低下は死亡率の上昇につながり、検査を行う上で意味のない数字が患者に提示されることにも危険性が含まれます。「視触診で乳がんが発見された場合の5年生存率は94%」などと発表するのは勝手ですが、その矛盾点に患者が気付くべきです。

 


4.超音波検査等の併用と見落としの責任問題          /

 

視触診での乳がん見逃しは相当な数に上ることがわかり、超音波と他の検査を併用しようと、検査を行う者の熟練度が上がろうと見逃す確率がゼロになることはありませんが、患者としても見逃しを減らすための努力はある程度必要です。

 

まず、超音波検査を行える者は、超音波専門医、看護師・准看護師・臨床放射線技師・診療放射線技師が「超音波検査士」の試験を合格した後に検査を行うことが推奨されています。とはいっても、超音波検査士は国家試験ではなく学会の専門医制度のようなものなので、従来通り、上記の准看~診療放射線技師が検査を行うことは可能です。

 

見落としの多さが原因でできた超音波検査士制度なのですが、誰の所見が信用できるかといえば、必ずしも検査士とは限らず、乳がんの画像読影を専門に数をこなしている乳腺外科医です。近年では需要の多さから、整形外科医などが乳腺外科医を名乗るケースが増えています。医師免許さえあればどの診療科を名乗ろうと自由なので、当然ながら経験不足の医師が含まれます。

そして、患者側としては誤診を減らすためにも、以下のような質問をすべきです。

 

「どの診療科で何例の検査を行ったか?見落としはどれくらいあったのか?乳がんの手術経験は何例か?」

 

この質問で医師の機嫌が悪くなろうと、患者の知ったことではありません。口コミの情報収集を行って他の病院を探す方が無難です。

医療とは「治癒に向けた最大限の努力をする」という契約で成り立っているため、治療が始まっていない検査の段階では、見落としがあったとしても債務不履行に該当しない可能性があります。集団検診で見落としがあった場合は、明らかな過失による見落としや、必要に応じて再検査・精密検査を指示しなかった場合に限り、注意義務違反になります。

 

小林麻央の場合、人間ドックで「要再検査」の結果を受け、別の病院で触診、超音波、マンモグラフィーの検査を受けたものの、「異状なし」との結果。生検は不要であるという医師の判断が影響した結果、不幸にも亡くなっています。これは典型的な注意義務違反に当たります。


 

5.最も無難な、超音波検査とマンモグラフィーの併用        /

 

 日本では50年以上前から行われてきた視触診ですが、それだけでは不十分という意味で行われているのが、現在の超音波検査とマンモグラフィー検査の併用です。
 
マンモグラフィーのメリットとは、前出の日本対がん協会によると、
「マンモグラフィー単体、または視触診との組み合わせで死亡率減少の効果があり、発見率は80%程度。視触診で見逃されるような石灰化した微小な乳がんを発見できる」とのこと。


しかし、マンモグラフィーが視触診以上の精度を持つ検査であれば、なぜ視触診の併用にこだわるのか不明です。

 

準強制わいせつ罪で誤認逮捕の被害を受けた乳腺外科医の件もあることから、いまでは医師一人で視触診を行いにくいという風潮が漂っています。誤認逮捕に端を発した視触診の是非問題により、不利益を被りたくないという医療機関の主張が勝り、今後はマンモグラフィーと超音波検査の併用が主流になる見通しです。

 

超音波検査単体とマンモグラフィー検査単体の乳がん検診による死亡率減少効果のデータが存在しないので、どちらに有効性があるのかはっきりしない状態です。仮にこれから検査の有効性のデータを集めるとしても、自分が死亡して結果が分かるテストには誰も参加しません。

 

特に乳腺の多い高濃度乳房が多い日本人の場合、マンモグラフィー単体より超音波検査を併用すると発見率が高く、超音波検査ではリンパ節転移や、浸潤性乳がんの発見率が高いという理由で併用することが死亡率低減につながるとして推奨されています。

 

見落としの確率はどちらも明らかになっていませんが、人為的ミスを含んだ見落としによる5年生存率の低下は死亡率の上昇につながり、検査を行う上で意味のない数字が患者に提示されることにも危険性が含まれます。

 

ともかく、乳がん検診の発見率は統計が取れるとしても、見逃し率は長期間の追跡調査が必要なのでデータが無いという状態です。検査を行う上で必要なデータがなければ、患者や医師が検査法を選択することさえ難しくなります。

 

そこで、新しい検査として線虫の嗅覚を利用したものや、尿中のアミノ酸のスコアなど、においで判別するという検査法が最も正確であり、ステージ0の初期ガンを含めた発見率は95%を超える高確率です。しかし、3年以上にわたって治験を行いながら実用化に踏み切れないのが現状です。

 


6.マンモグラフィーを始めとするX線検査の被爆とは     /

 
マンモグラフィー検査を推奨している医療機関に言わせると、放射線の影響に関してはいずれも以下のように共通したコメントです。
 
「X線による被爆がありますが、普通の生活を送っていても同程度の放射線を浴びているので、健康被害はありません」
 

というありきたりの論調です。
 
X線を含めた放射線の被爆の場合、遺伝子変異による将来の発がん率を基準に考えれば、「この数値以上は危険、この数値以下なら安全」という基準はありません。被爆した放射線量に比例して発がんの確率が上がるので「確率的影響がある」と表現します。
 
特に乳がん・子宮がんの発がん抑制遺伝子(BRCA1、BRCA2)に変異がある場合は、放射線被爆の影響を受けやすく、マンモグラフィー検査自体が乳がんの原因になる可能性もあり、確率的影響は大きくなります。
 
これに対して、一時的に浴びる線量を超えると全ての人が発症する「確定的影響」では、線量次第で皮膚障害や白内障などの症状が現れます。遺伝的影響以外の症状は「確定的影響」であり、生涯に受ける線量や事故が原因の緊急時被爆など、場合によっては全数死亡もあり得ます。
 
その結果、異常が見つからない健康体であった場合は何のメリットもなく、単に被ばくによる健康被害を受けたに過ぎないという結果になります。
 
2年に1度の定期検診におけるマンモグラフィー検査は、自覚症状のない健康な者を対象に行われる乳がん検診でありながら確率的影響のある被爆があり、検査結果が偽陽性であれば、リンパ節の生検など侵襲度の高い検査が追加されることがあります。
 
被爆の影響を考慮すると、乳がん検査で使われるCT、造影MRI、FDG-PETなど全て被爆します。被爆のない腫瘍マーカーの発見率は30%程度。

とにかく、検査を受けるうえで最も危険なものが、「異状なしという結果を信用すること」であることを理解して定期検診を受ける必要があります。

 

 

​7.完全に排除できない乳がん検査の見落とし          /

 

高濃度乳房の女性が多い日本では、20~30代の女性の場合、検査被爆による乳がん死亡率で考えるとデメリットがメリットを上回るため、40歳未満のマンモグラフィー検査は推奨されていません。厚労省は「40代以上の女性に限り、乳がん死亡率を15%減少させる」として、マンモグラフィー検査を推奨しています。
 
特に乳房の場合はX線の感受性が高いので、被爆のリスクと乳がん発見による救命効果のメリットを比較すると、30歳未満では損失余命が獲得余命を上回る形になり、被爆のリスクが上回ります。
 
この統計は全体の平均なので、乳がんの見逃しが死亡につながった小林麻央のように30代で発がんする事もあります。腫瘍を見逃した原因は、「この患者は30代だから乳がんの確率は低い」という医師の先入観がリンパ節生検を行わなかった理由と思われます。「これ以上の検査は不要」と言われ、生検を行わなず結果的に見落としがあれば、医師に対する不信感から民間療法に目を向ける事になるのは仕方のないことかもしれません。


乳がん検診全体に言えることは、「異状なし」という検査結果でも見落としの可能性は排除できないため、2年に1度の乳がん検診のペースでは進行性の悪性腫瘍の場合は手遅れになる可能性があります。医師によっては「1年に1回の割合で超音波検査とマンモグラフィーを受けるべきだ」という考えもあります。

 


8.「検査のX線被爆は安全である」と主張する放射線科の言い分    /
 
大阪大学医学部付属病院放射線科のX線被爆FAQによると、「子供がCTスキャンを受けた際の放射線被爆による健康被害がないのか?」という質問と、それに対する回答の言い回しが非常に曖昧です。
 
質問:子供がCT検査を受けるのですが、被ばく線量は大丈夫ですか?
 
回答:子供の放射線への感受性が成人より高いのですが、身体が成人より小さいので、撮影に必要なX線の量も少なくなります。したがって、CT検査でのX線による影響を心配する必要はありません。
 
この質問文も不自然ですが、回答では単位面積当たりの被爆線量が同じであるにもかかわらず、放射線感受性の高い子供の影響の方が少ないという矛盾した論理を展開しながら、影響を心配する必要がないという説明。親が冷静に聞いていれば「逆に危険ですね」と解釈できる回答になっています。
 
放射線被爆の影響については、どの医療機関でも同様の説明なので、取り調べで苦しい言い訳をしている知能犯(でもどこか抜けてる)のイメージがあります。

 

被爆による健康被害、発生確率、根拠もまったく示していないので、どの部分が信用できるのか?という詭弁です。CTスキャンを受けた子供が、30~40年後も健康に生きているのか?ということは、確率的影響なので誰にもわかりません。
 
女性が受ける被爆の影響で考えると、生まれた時から卵子の元になるものがあり、卵子の総数は決まっています。それが加齢と共に、酸化ストレスや紫外線、定期検診の際のX線被爆と自然放射線が重なった結果、卵子の遺伝子変異を引き起こします。
 
生後40年以上経過すると、卵子の遺伝子におきた異状が修復不可能なほど致命的になり、ダウン症などの原因になる遺伝子異常が増加します。女性ホルモンの分泌量低下に伴って放射線感受性がさらに高くなり、放射線の影響を受けやすい乳房や子宮、卵巣の影響が顕著に表れる時期が生後40~50年経過した更年期に当たります。
 
実際に受けるX線被爆に対して、線量を示すこともなく安全性を導く説明に矛盾は避けられません。そこで、放射線の単位にGy(グレイ)を使い、「絶対的な影響があると予想される数値未満なら全て安全ですよ」という説明で全てを片付けるケースも見られます。



9.具体的な被爆の数値と、Gy、Svの都合のいい使いわけ            /
 

人体の吸収線量をSv(シーベルト)と表示、臓器別・放射線別に補正した数値をGy(グレイ)と表示しますが、放射線種をX線に限定して比較する場合はどちらを使っても大差ありません。
 
「臓器の吸収線量Gy=臓器の等価線量Sv×放射線別の荷重係数」
X線の係数が1なので、1Gy=1Svです。
 
被爆によるがんや遺伝子異常の発生率などは、臓器への確率的影響を表すSv(シーベルト)を使い、がんや遺伝子異常以外の確定的影響(必ず影響が及ぶ線量)の場合はmGy(ミリグレイ)を使います。
 
一例として、成人の放射線治療は4週間に60Gyというとんでもない線量を浴びるわけで、正常な細胞や臓器への影響は確定的なので単位はGyになります。
 
または、「100mGy以上が胎児奇形の生じる被爆線量なので、それに及ばないから安全である」などと確定的影響を受ける数値を基準にして、確率的影響を無視した便利な使い方をする場合があります。

 


10.自然放射線以下のマンモグラフィー検査の被爆量(Sv)                    /
 
年間の自然放射線吸収量は約2.1mSvです。マンモグラフィーが0.7~2.0mSvです。偽陽性の場合や良性腫瘍の経過観察などにより検査を複数回受けた場合は2.1mSv以上になります。
 
自然界で受ける放射線量と同程度だから健康被害はない。というのは詭弁で、その場でわかる健康被害がないため、検査後数年~数十年の後に起きる発がんまで考慮しません。乳がん検査で陰性と判定された健康な者に対して追跡調査が行われたことがないので、被爆の後遺症について健康被害がないという根拠はありません。
 
一般的なX線検査(レントゲン)は局部的な照射が行われるため、放射線感受性の違いを無視すれば、0.01Sv~2.0mSvの範囲内です。同様にX線を使うCTスキャンの部分撮影では約10倍の4mSv~20mSvです。
 
フィルムに写った明暗のある部分がX線被爆の痕跡であり、皮膚の浅い部分に影響を及ぼす性質のあるX線は、まさに被爆を肌で実感できる放射線検査です。
 
マンモグラフィーで偽陽性の場合は、確定診断に至るまでに追検査として超音波検査やCT、FDG-PET、造影MRIなどを行います。がん細胞の栄養源はぶどう糖なので、造影剤としてぶどう糖代謝がわかる18F- FDGを使用したPET検査(FDG-PET)も有効です。超音波検査(乳腺エコー)以外はMRIの造影剤を含めて、全て被爆します。
 
マンモグラフィーに超音波検査を追加すると、新たに5%の乳がんが発見されたという例もありますが、超音波検査ではステージ0~Ⅰの乳がん発見が多く、ステージⅡ~Ⅲの発見はマンモグラフィーで事足りるという結果です。
 
これに視触診を追加すると発見率は上がりますが、今後は視触診を除いた方向で検査が行われます。腋窩3か所のリンパ節転移があれば触診で大体の見当はつきますが、マンモグラフィーでは正面と横から2枚の撮影をしたところで、リンパ節転移まで発見できるわけではありません。

 


11.線虫の嗅覚センサーを利用した発見率95%以上のがん検診  /
 
マンモグラフィー検査やCTスキャンの被爆の影響が議論され、乳腺外科医は視触診を嫌い、放射線医は腫瘍を見落とし、腫瘍マーカーも当てにならないという状態ではどれが最良の検査方法なのか、患者に選択する余地を与えるほどの情報や統計結果が残されていません。
 
これらを全て解決するのが、モデル線虫の嗅覚センサーによる腫瘍の有無の判定。犬と同等の嗅覚器官を持つ、C-エレガンス (Caenorhabditis elegans)という線虫の優れた嗅覚によるがん細胞の有無の判定。
 
2015年に九州大学で開発が始まり、日立と共同研究を行っているモデル線虫(C.elegans)によるがん検診「N-Nose」では、患者の尿1滴だけを検体として使用。
 
線虫の嗅覚センサーを利用した形で、がん患者特有のにおいを好む性質を持った線虫の動きで判別します。がん患者の尿に含まれる特有のアミノ酸(RNA)の匂いに引き付けられる性質を利用すれば、95~100%の確率で何らかのがんや腫瘍があることが判明するという仕組み。
 
線虫による検査の発見率は最低95.0%なので、検査を2回繰り返した場合に見落とす確率が0.25%まで減少するという計算です。X線検査は繰り返しても解像度の変化がないので見落としの確率は変わりません。
 
現在の検査では発見できれば治療が始まりますが、見落とされた場合に自分は健康であると思い込み、自覚症状もなくがんが進行していき手遅れになります。リスクが最も大きいがん検査であるだけに、発見確率よりも見逃しの確率低下が重視されます。
 
たとえ95%の発見確率としても、シャーレの上で簡単にできる検査であって、詳しい検査はその後に行われるのだから慎重さを期す必要はないのですが、商業ベースに乗せるのはコスト面が安すぎて実現が難しいのかもしれません。

 


12.見落としと被爆のない線虫検査実用化への動き            /
 
九州大学と日立製作所は線虫を使ったがん検出システムの構築を目指し、実用化は2020年1月頃の予定。すでに確立されている検査方法であるにも関わらず、原価100円未満の線虫検査であり、原価が安いものは医薬品であっても医療機器でも利益率が低いというデメリットがあり、メーカーとしては敬遠する事が多いものです。患者にとってのメリットは重視されません。
 
病院や薬局で線虫による検査が開始されれば、保険収載されて1,000円程度の検査費になる予定ですが、どういう形で提供されるのか、まだはっきりしていません。
 
「がん細胞の有無が分かるのであれば、検査費用が高くても受けたい」という人のために、臓器別のがん患者の尿の臭いを記憶したがん探知犬なるものがあり、犬の嗅覚でどの種類のがんか判別するという検査が行われています。
 
がん探知犬を使用する検査では費用が2万円ほどかかりますが、被験者の尿を用いてステージ0の初期ガン発見率が2016年の時点で93.8%の精度で分かるという意味では、最先端のがん検査です。本人が医療機関に赴くこともなく、郵送でも可能な手軽ながん検診です。欠点は犬の集中力の問題があるので1日に5人の検査しか行えず、数をこなすことは難しいようです。
 
線虫による検査システムは2020年の実用化に向けて治験中ですが、すでに沖縄のクリニックでは実際にモデル線虫(C-elegance)を使った検査を開始しています。全国のクリニックが線虫検査を採用するようになれば、プライマリ・ケアとして有意義な検査になります。

 


13.数年先に線虫検査(N-Nose)が主流になると・・・              /
 
線虫による検査法(N-Nose)が主流になれば、検査は頻回行うことが可能になり、検査間隔が短くなると判明するのは全て良性の初期ガンになります。従来の被爆を伴うがん検診のための医療機器は不要になりますが、腫瘍のある部分特定と悪性度のグレード、進行度のステージ判定のための検査は必要です。
 
腫瘍科医(乳腺外科医)を含む放射線治療医、放射線検査技師なども転職を余儀なくされます。視触診のメリットでもあるリンパ節転移も線虫で判明します。
 
シャーレの無菌培地と納豆菌を使って線虫を養殖しながら冷凍保存。原価はゼロに近く、尿一滴と線虫の動きを観察するだけで済みます。複数の線虫が尿を避ける動きをすれば、ほぼ100%体内に腫瘍が発生している可能性はありません。
 
検査から服薬まで自分で行い、自分の体は自分で管理するというセルフメディケーションの時代の流れにも即しているので、C型肝炎治療薬で保険財政の圧迫を受けている国や、地方自治体の財政負担の軽減を図ることができます。

 


14.モデル線虫(C.elegans)の入手方法と繁殖、保存方法   / 

 

既に現在でも、この線虫さえ手元にあれば、シャーレを使って個人でがん検査を容易に行う事ができます。これに目を付けた業者が違う線虫を利用してがん検診を行って摘発されているほど需要は高まっています。
 
しかし、この線虫は動物に寄生することはなく、世界中の土壌を探しても発見はほんの数例なので、見つけることは不可能です。
 
大学等の研究室では線虫を繁殖させて使用しているので、研究室に直接依頼すると入手でき、培地さえあれば繁殖させることは可能です。雌雄同体で簡単に繁殖する線虫なので、常温で大腸菌や納豆菌さえ与えていれば増やすことは可能で、冷凍保存ができるというもの。
 
教材向け出版社では、高校の生物の教育課程に掲載された線虫(C-elegans)の提供を行っています。乾燥や高温に耐える形の「耐性幼虫」として郵送され、線虫と培養プレート50枚で3000円。冷蔵庫で1か月の保存が可能になっています(こちらの送付先は中学・高校に限定)。検索かけると簡単に出てきます。

教育機関以外では個人でも入手可能です。手数料だけでお分けしているとのことですが、現在は多忙とのことで連絡先を書くのは控えます。しばらくお待ちください。
 

現在行われている線虫検査の治験は、希望者が殺到した結果十分なデータが揃ったため、2018年には受付終了になる予定。今後は研究機関などから購入する必要が出てきます。
 

最も手軽な方法では、胃がん検出の場合は魚類に寄生しているアニサキスも使えます。嗅覚だけで胃の腫瘍やがん細胞に向かっていく性質があるので、シャーレ上でも尿を使用して同様の検査が可能(アニサキスの検出精度は不明です)。

リスクのない検査なので、線虫を使うがん検診を定期的に行うのが合理的というオチです。治験の段階とはいえ数百円の自費で使用すれば自己責任で行える検査です。

結論が雑になりましたが、既に線虫検査が可能であるということです。

 

※自治体が行っている乳がんの集団検診では、厚労省の通達を反映しているとは限らず、視触診と乳腺エコーだけであったり、マンモグラフィーは遠隔地で行うなど、統一感に欠けるのが現状です。


 

ご注意:以上の医療に関する記述は、乳がん検査の信頼性と危険性、新しい検査方法について書いたものです。文責は薬剤師免許しか持たない一介の医療ライターにあります。記載している医療情報には正確さを期していますが、最終的にはご自身でご確認をお願いします。
 
記事内容に関する質問、間違いのご指摘などがあれば、以下のコメント欄からお願いします。