サーモンピンクの恋

「いつかはちゃんと俺の口から言わなきゃダメだって思ってたさ。この通りの奴だからな。武が見届け人として見ててくれるって言うし、はっきりさせるか。」

昭義はコーラを一気に飲み干すと、恵子に向かって言った。

「江川、分かってたと思うけど、今まで逆につらい思いをさせて悪かった。今、この場をもって、俺と別れてくれるか?」

「もちろん。つらい時もあったけど、楽しかったよ。短い間だったけど、偽物だったけど、私を彼女にしてくれてありがとう。これからは、自分の気持ちに嘘をつかないで。」

「ありがとう。で、美琴。良かったら俺の彼女になってくれませんか?」

昭義は美琴に向きなおすとそう言った。

美琴は何が起きているのか分かっていないようで、線と恵子の顔を交互に見た。

「みこ。俺達も別れるんだよ。もうお芝居は終わり。みこの彼氏でいられた事、すごく嬉しかった。今日からは本当に好きな人と一緒にいていいんだよ。」

相変わらずきょとんとしている美琴に、昭義がもう一度言う。

「美琴、俺と付き合ってくれませんか?」

美琴が線の顔を見ると、線は優しく頷いた。

「私でいいの?私、線と・・」

「美琴じゃなきゃダメなんだ。」

美琴の言葉を遮るように昭義が言った。

「入学式で初めて美琴を見た。つまんなそーにしてる女がいるなーって思った。そいつが同じクラスにいて、なんでそんなにつまんなそうにしてるのか気になった。そしたらそいつが吹奏楽部に入部してきた。いつもつまんなそうにしてるけど、たまにめちゃくちゃな笑顔を見せる時があって。『あぁ、俺、入学式でこいつを見た時から好きだったんだな。』って思った。それからずっと、何となく『お前が好きだ。』アピールをしてたんだけど。全く伝わってなかったよな。キーホルダーもそのアピールだったんだけど、気付いてた?」

「何で外さないのかなぁ?とか、臨海のバッグにもついてたから、何でつけてきたのかなぁ?とかは思ってたけど。」

「そう言う美琴も同じ事してたろ?」

「それは・・昭が好きだったから・・」

「おんなじ。俺も美琴が好きだったからそうした。それだけの事。線、さっき渡したやつ、持って来てくれるか?」

「はいよ。」

線は椅子から立ち上がると部屋を出て行った。

「美琴、大好きな昭義が目の前にいるんだよ。もう我慢しなくていいんだよ。昭義の事大好きって大声で言っていいんだよ。」

恵子が美琴の手をとって言った。

「ちょっと待って!」

線は息を切らして部屋に戻って来た。

「その前に振られる事前提だけど、告白くらいさせてあげてもいいんじゃない?」

線は手に持っている物を昭義に渡しながら言った。

「そっか。武、どうぞ。」

「別に俺はいいよ。」

「そう言わずにさ。この雰囲気で逃げられないでしょ。」

線が笑みを浮かべると、観念したように武が口を開いた。

「俺も高橋が好きでした。でも安心していいから。高橋が昭義を好きだってのは一目瞭然だから、今更どうにかしようなんて思ってないし、俺や線が高橋を好きだからって、俺達は俺達のままだから。」

「武、ごめん。でも、こんな私を好きになってくれてありがとう。」

「さ、じゃぁ、昭義先輩、改めてどうぞ。」

「何回言ったらOK貰えるかな?美琴、俺と付き合ってください。」

「はい。こんな私だけど宜しくお願いします。」

美琴は昭義に向かって頭を下げた。

「ほら、いちごオレ。」

昭義は線から受け取った物を美琴に渡した。

「え?買って来てくれたの?」

「好きだろ?」

「うん。」

「やっと落ち着いたねぇ。」

「全くだよ。お陰でどれだけ振り回された事か。」

「てか、お前ら、いつから美琴の事好きだった?」

「俺は新入生歓迎会の時かなぁ。」

「俺、いつだろ。気が付いたら好きだったな。」

「あれ、美琴が倒れた時あんじゃん?あん時は武が美琴に惚れてんの知ってたからさ、美琴の練習場も知ってると思って、通路に行かせたんだよ。」

「分かってたよ。他に秘密の練習場所があるのも知ってたけど、それだけは分からなかったな。」

「ちょっと待って。俺、みこの練習場所なんて一個も知らないよ?」

「はい、彼氏失格。」

「そんなぁ。」

「その内教えてやるよ。ってか、その内みんなでそこで練習しようぜ。今までは俺と美琴の聖地だったんだけどな。」