米連邦準備理事会(FRB)は17日、7月26~27日に開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨を公開した。利上げを減速する可能性を示しつつ、時期のめどを示さない内容ででしたね。

 

先行きの金融政策方針を強くにじませる「決め打ち」路線から、経済成長の減速とインフレの動向に応じた柔軟対応への転換が鮮明になりました。

 

将来の金融政策の方針を示して市場に織り込ませる手法は「フォワードガイダンス」と呼ばれる。5月会合ではパウエル議長が記者会見で0.5%の利上げの3連続実施を強く示唆。長期金利が将来の利上げを織り込んだ水準で安定し、利上げ効果が前倒しで発揮された。9月の次回会合に向け、この手法を封印した。

 

6月会合で直前に利上げ幅の拡大を迫られるなど混乱した反省もあるが、フォワードガイダンスを停止した最大の理由は加速を続けてきた利上げが、減速を探る第2幕に入ったことだ。7月の0.75%の利上げでフェデラルファンド(FF)金利は2.25~2.50%となった。パウエル議長が「迅速に目指す」としていた、景気を熱しも冷やしもしない中立金利に達しました。

 

利上げが金利上昇を通じて企業や家計の動きを鈍らせ、モノやサービスの価格に影響するには半年から2年かかるとされる。3月に利上げを開始した際、パウエル議長は2021年末から先読みして進んだ金利上昇の効果が22年後半から実体経済に表れ始めると説明していました。

 

3月からの利上げ幅は2%を超え、約40年ぶりのハイペースだ。議事要旨によると、参加者は「経済活動やインフレに対する累積的な影響を評価しながら、利上げペースを緩めることがある時点で適切になりそうだ」と指摘。急速な引き締めが後になって経済に必要以上の打撃を与えることへの警戒についても多くの参加者が言及した。

 

一方で、7月会合の議事要旨では利上げペースの減速時期が示されず、0.75%の利上げを継続する選択肢も否定しなかった。物価上昇率がピークを越えたという確証もなく、労働市場は逼迫したまま。次回の9月会合まで経済指標の動向を見極める慎重姿勢に終始した。

 

注目は今後の消費者物価指数(CPI)の動きだ。市場では物価上昇のピークアウトがささやかれるが、議事要旨によると「ガソリンの値下がりを持続的な物価下落だと信頼するわけにはいかない」との慎重な見方で一致していた。遅れて値上がりする家賃への警戒が強く、参加者は「大幅な追加上昇がありうる」とみている。

 

賃金を押し上げる働き手不足が解消に向かうかも焦点だ。8月5日に公表された7月の米雇用統計でも大幅な改善は見られなかった。シカゴ連銀のエバンス総裁は10日、利上げ幅を年末にかけて縮小するシナリオを示したが、実現への道は手探りだ。

 

個人消費や企業の生産活動が減速して経済が減速するなか、市場との対話は今後ますます難しくなる。7月のFOMC後には市場で景気後退への懸念から23年初めの利下げシナリオが織り込まれ、FRB幹部が相次ぎ否定する事態になった。明確な指針を示さなくなったことで、9月会合の利上げ幅についての市場の見方も分かれている。

 

米ゴールドマン・サックスのヤン・ハチウス氏らは議事要旨公表後のリポートで、参加者が「どこかの時点」で利上げペースを落とすと示唆した点に着目。「9月会合は0.5%、11月と12月の会合は0.25%と利上げ幅を縮小するという我々の予測に沿うものだ」と分析した。PNCフィナンシャル・サービシズ・グループのガス・ファウチャー氏も2022年中は同様の利上げペースを想定する。

 

一方、JPモルガン・チェースのマイケル・フェローリ氏は9月も0.75%の利上げが基本シナリオとの立場だ。議事要旨のなかで物価上昇率を目標の2%まで落ち着かせるにはある程度の時間がかかり、インフレの定着は重大なリスクと言及されたことを踏まえ、金融環境の引き締めを急ぐと読む。

 

ただ次回会合前に発表される8月の雇用統計で雇用の伸びが著しく鈍化すれば「0.5%の利上げになる可能性もある」と指摘。雇用市場の過熱感の行方が利上げペースに大きく影響するとの認識を示した。