#459

『Nightwings』

YL 7.5-8.0    76544 words

著者:Robert Silverberg

オススメ★★★★☆

 

Nightwings (Gateway Essentials Book 122) (English Edition)

 知らない単語だらけで読むのに時間がかかった


数十年前に挫折したので日本語訳なのに途中までしか読めなかった本でした


昔挫折した理由は、主人公が暗くて重苦しい(と当時は思えた)老人だったからだと思います



この物語の舞台は、人類が道具を使ったり言葉を話したりと文明社会に突入してから4万年経った地球です


第一サイクルは今の私達が生きてる時代

他の星の人々と交流し出して第二サイクルが始まる

ここで地球人は色々やらかした

他の星から来た人を労働力としてこき使ったり、閉じ込めて見世物にしたり

wether machineというのを稼動させ、大陸を切り刻み橋でつなぎ、小さな島は水没させ、海流を変えて気候も変えて人工の2つめの太陽も空に浮かべた

その結果は世界中の大干魃と大洪水

地軸もブレて地球の自転もスピードアップしてしまった

おまけに宇宙からきた、 体がクリスタル化する致死率100パーセントの伝染病でほとんどの人類は死滅


どうにもならなくなって他の星の人に助けてもらったけど、地球は「アホが住む惑星」として有名になってしまい、最後は借金のカタに地球自体が管理されてしまいました


他の星の人々に管理されるようになって第三サイクル開始

この第三サイクルの最後のあたりから物語が始まります

元々は三つの短編小説だったのをひとつにまとめたのがこの本なので、中は3つのパートに分かれています



パート1からパート3までとにかく徒歩でひたすら旅をする話です

飛行機も列車もない

進化なのか退化なのかよくわからない

人々は皆特技や興味に応じた職業ギルドに所属していて、服装や生活に制約があります


パート1では主人公達はかつてローマだった地をめざす

主人公はWuelligという名の老人

職業は「Watcher」で敵が攻めてこないか、何時間かおきに宇宙空間に意識を飛ばしてチェックするのが仕事

旅の同行者はChangeling(異形の人間)、Flier(夜空を飛ぶ人)


Watcherは結婚が禁じられているので決して恋などしない

主人公は若くて美しいFlierのAvluelaが昔から好きで好きでたまらないけど、年も離れてるし結婚もできないので口には出さない(でも態度で気持ちはダダ漏れ)


夜空を飛ぶ人達は背中に蝶のような羽がついてます

男女ともガリッガリに痩せていて、着ている服を全部脱がないと重くて飛べません

太陽風すら重さを感じるので、飛べるのは日没から夜明けまで


服を脱いで、ゆっくりと蝶の羽を広げて飛び立つシーンを英語で読めて良かった

このシーンがあるから幻想 SFと言われてるのかも


パート1の終わりに地球はあっさり攻め込まれてしまい制圧・支配されて、地球の歴史は第三サイクルが終了して第四サイクル開始

物語もパート2へ


パート2で主人公は新しい同行者「元王子」を伴って「昔パリと呼ばれていた都市」に向かいます

異星人の侵略でパート1の仲間とははぐれるし、Watcherも自動的に失業してしまいました


新しい地で主人公は 「Rememberer」に転職し名前もTomisに変更

Remembererは考古学者のような職で、どうして地球がこんな地獄のような状態になっているのか主人公は(読者も)初めて知ります

他の人も主人公も、地球の歴史はうっすらとどこかで耳にしたことはあるけれど、正確な歴史はRemembererの人々しか知ってはいけないことになってました


真実を知った主人公はなぜか「地球に対して贖罪をしなければ」との考えに至ります

地球をめちゃくちゃにした当時の人はもう何万年も前にいなくなってるのになぜそうなる


で、色々あってパート3に参ります

色々の部分は読んでて登場人物達にムカついたからここには書かない

私は感情に左右される人間だ



パート3には人間を作る工場みたいなのが世界に6か所あり、体の大きな異形の人や、羽が生えた人が普通の地球人である理由が描かれています


この物語には肌の色が青や緑や姿形が違う人が次々出てきて「仲間にして」「旅に同行したい」と主人公に頼んでくるけれど、そのたびに「いいよ」と答えてます

主人公には偏見や先入観が全くない

肌の色が真っ赤で目が縦に並んで付いてる人(地球生まれの地球人。アジアやオーストラリアあたりにはいっぱい住んでるらしい)もフツーに仲間にしてます


もちろん「キモイ」「病気持ってそう」「近寄るな」と大騒ぎする人もいます

主人公は「こいつは大騒ぎする奴か」と淡々と判断するだけ

そこがとてもクールで知的な老人だと思えました


また 「愛情の反対は無関心」って言葉を代弁するような性格なのかとも思えました

一度「こいつ最低のクズだ」と判断すると仲間なのに全く興味を示さず、何が起きても黙ってみてました

作者が後から「クズだけどこんな 良い所もあるよ!」と描写しても、主人公はもう見向きもしないというのは面白い書き方だと思いました

こんなの若い頃読んだ時はわからなかった



パート3ではかつてイスラエルだった地にたどり着き、そこでは望む人にrenewalが施されます

泥の詰まった大きなタンクにプカプカ浮かんでいるうちに若返る


心身ともに若さを取り戻した主人公ははぐれたAvluelaと再会し、しかも前からずっと I love youだったとか告白されます


最後に主人公は「Redeemer」に転職して救済する人になります

支配している異星人に気づかれないように同じ志の仲間を増やして全ての地球人を救い、ついでにボロボロの地球そのものを救う方法があった、さあ始めよう!で物語は終わります


様々な小説マンガゲームの元ネタになっていそうななってなさそうな部分が垣間見えるので、それを探して みるのも一興


使用語彙レベルは英単語一万語を完璧に頭に入れていたら楽に読めるかな?って感じでした

文章は難しくないけどよくわからない単語5連続とかだと、飛ばしたり推測したりもできなくて辛かった


最後まで頑張って読むと、テキトーに傲慢に生きてきた人はそれらしい結末を迎え、真面目に地味に生きてきた老人が 地球を救うヒーローになるので最高のカタルシスを味わえました


2022年9月30日読了     751万語



おまけ


食事シーンは「食べた」だけしか書いてません

旅の途中ではタブレット(端末じゃなくて錠剤)を口に入れるだけ

動物は一匹も出てこなかった

childやchildrenって単語は2か所しか書いてなかった


ブログ記事ってより卒論みたいな長さになってしまった

私はお馬鹿さん