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マッドメン(2010年最終版)
作者 諸星大二郎
出版社 光文社

何年経っても、伝えたいことがはっきりと分かって芯があると感じるマンガ作品は中々ないと思う。神話をモチーフやベースにした作品はその深みを増すことができるけれども、どんな神話を用いることになるとしても、描く側が知識としっかりしたスタンスを持たない限りはおもしろくならない。諸星大二郎はSFと民俗学の知識をふんだんに持ち合わせている(だろう)から、マニアックで、おもしろい。
この作品は、日本とパプアニューギニアに伝わる神話を掛け合わせて、独自の体系で読ませる作品。作品としてずば抜けているのは、神話と作者の「こうだったらおもしろいな」という空想のミックス具合である。
ノアの方舟がパプアニューギニアの神話形成に影響を与えているとか、日本のイザナギイザナミとの共通点がある、地底の国があり、それは世界のどこかとつながっている…書いていると荒唐無稽に感じることも、この作品世界に入ると空想としておもしろくなる。幻想文学みたい。

マッドメンで印象深いシーンはたくさんあるが、その中でニューギニアの森の奥深くで、主人公のコドワという少年と仮面の神様(大いなる仮面)が対峙するシーンがある。コドワが森に向かって話しかけると、次のコマには何もなかった空間に仮面が現れて、普通にコドワと言葉をかわす。実に「不思議さ」が滲み出ていてうまい。目に見えるものしか信じないのは発展国の考え方であって、コドワたち未開の地の人間にとって目に見えない存在は「必要な時に現れる」のであり、全く0の存在ではない。それは日本の神様信仰にもよく似ている。

ところで、マッドメン作品の中でコドワとアエンという神のような存在が闘うシーンがある。それがとても「風の谷のナウシカ(マンガ原作版)」と似通っている。ナウシカが、「死」を名乗る骸骨の化物から、戦争で殺した人間を平気で踏み越えていく残酷な人間だと責められるシーンがある。ここの描写はコドワとアエンとの対峙シーンに、描き方も含めてとてもよく似ている。肉体同士の物理的な闘いではないため、派手さは0だが、心が揺れることで自分をなくしてしまうかもしれない、という精神的な怖さがどちらからも伝わってくる。絵の感じも、どことなく共通点がある。

「不思議」で分からないものを人間は常に恐れてきたし、その恐ろしさから逃れるために確かな世界を作ってきた。森と森が作る暗闇は、きっといつの時代でも「不思議」の象徴なのだと思う。

人間は気持ちで生きていると言うが、そのことを如実に示すような、おもしろい作品をこのマッドメン以外にもたくさん生み出している作者である。何度読んでも飽きないのは、人の心の危うさを描いているからだろう。一生手元に持っておきたいマンガ。

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