みなさま、こんばんわ🌜

今日の大阪は36℃超えの真夏日でした😄💦

 
1 精神科の薬を問い直す―薬を使うこと、やめることに関して知っておいてほしいこと

本日は、シンポジウム「精神科の薬を問い直す―薬を使うこと、やめることに関して知っておいてほしいこと」にオンライン参加しました。

 

イギリスから来日された精神科医の ジョアンナ・モンクリフ(Joanna Moncrieff)先生 と、フィンランドからオンラインで駆け付けられた カリ・ヴァルタネン(Kari Valtanen)先生 の講演会でした。

 

重要なゲストとして、アディクションで有名な 松本俊彦先生 や、ACTで有名な 高木俊介先生 、オープンダイアローグで有名な 村上純一先生 、訳者の 松本葉子さん、がご参加されていました。

 

向精神薬内服ご経験者の方 の貴重な講演もありました。

2 会場の様子

実際の会場の様子はこのような感じでした👆👆👆

 

この講演会は 東京大学駒場Iキャンパス 21KOMCEE レクチャーホール で開催されました。

 

会場参加200名、オンライン参加1,000名の大規模な講演会でした。

3 ジョアンナ・モンクリフ先生の講演

1番最初に ジョアンナ・モンクリフ(Joanna Moncrieff)先生 が講演されました。

モンクリフ先生は、英国の精神科医で、現在は主に大学で研究されておられます。

 

モンクリフ先生の講演は前代未聞の驚くべきお話でした😯

 
Joanna Moncrieff

Moncrieff

向精神薬は脳の神経回路の化学的な不均衡を改善するとされており、この記述は医学書にも載っています。

しかし、どの向精神薬もどのような方法で脳に作用していくかというエビデンスは全く載っていません。

私たちは作用するエビデンスを理解していません。

どの精神治療薬も、疾患や症状の根本的な生物学的メカニズムを標的として作用するというエビデンスはありません。

 
Joanna Moncrieff

Moncrieff

薬が異常な変容した脳の状態を作り出すことを、私は薬物作用モデルと呼んでいます。

有効な効果とは、元からある症状に薬の効果が上書きされたものです。
つまり、余計なことを考えないように、望ましい行動や認識を上書きするんです。
一例をあげれば、社会的不安を持つ方がアルコールを飲用するという例があります。

 
Joanna Moncrieff

Moncrieff

向精神薬は身体と脳の正常な状態を変容させます。
脳を変化させることで、精神状態や行動を変化させます。
向精神薬の作用には、心地よいものとそうでないものがあります。
向精神薬を服用した結果は、だいたいが心地よいものではないものです。
向精神薬の作用は、精神的苦痛やその他の異常な、あるいは望まない精神状態や行動を一時的に上書きすることができます。
向精神薬は依存と離脱症状を引き起こします。

 
Joanna Moncrieff

Moncrieff

統合失調症などには、薬が効果を表しているといったエビデンスはありません。
ドーパミンは抗精神病薬の中心ではありません。
うつに対するセロトニンの効果に対しても、エビデンスはありません。
うつ病の患者のセロトニンを調査しても、健常者と比べてセロトニンの量の違いは見られませんでした。

 
Joanna Moncrieff

Moncrieff

長期服用した場合に、再発率を下げると言われています。
こうした研究のほとんどは中断研究によるもので、ほとんどの研究で、薬を徐々にではなく急に中断していました。
長期服用は初回エピソードの患者さんには有害かもしれません。
抗精神病薬を徐々に減らしていく事例は、回復率が高いです。

抗精神病薬には様々な副作用があるため、もし可能であれば、薬を中断することが重要です。

 
Joanna Moncrieff

Moncrieff

RADAR は徐々に薬を減薬していく研究で、統合失調症を長期的に再発している人を対象に行っています。

2年間の研究の結果、薬をやめても社会的系機能や症状、副作用やQOLに変化は見られませんでした。
患者のうち数名は副作用が減少し、QOLが改善しました。
再発を起こしたのは30%でした。
重い患者さんを対象に研究しましたが、コンディションが良い患者さんで研究をすれば、結果はもっと良くなったと思います。

 
Joanna Moncrieff

Moncrieff

精神的苦痛や精神疾患のために処方される薬物は、根本的な疾患や異常、化学的不均衡を逆転させたり、その標的としたりするものではありません。
身体的・精神的状態の変化をもたらし、特に長期的には、予測不可能で十分に研究されていない影響があります。
服用後も離脱が困難で、中止後も有害作用が持続することがあります。
我々は向精神薬を、今使っているよりも少ない量で、より賢い方法で使う必要があるのです。

 

モンクリフ先生の講演では、向精神薬について以下の 衝撃の事実が明かされました😯

  • 向精神薬は脳の神経回路の化学的な不均衡を改善する薬ではない
  • 向精神薬のエビデンスは不明(なんで作用するのかわかってない)
  • 向精神薬には重篤な有害作用(副作用)があり、服用を中止しても有害作用が持続することがある
  • 初期の精神病性障害(サイコーシス)には効果があるかもしれないが、長期的な服用はむしろQOLを低下させる
  • RADAR研究(抗精神病薬の中止・減量に関する研究)では、重篤な統合失調症患者のうち70%が断薬(徐々に)に成功

 

私は向精神薬について、モンクリフ先生と全く同じ意見でした。

私は向精神薬は即効性があるために、最初期の急性期には効果があるけれども、長期的な服用はむしろ有害だと考えていました。

 

ではなぜ、精神科医の先生方は向精神薬をずっと処方し続けるのかというと、「薬以外の手立て」を思いつかないからだと思います。

あるいは、思いついていても、しがらみや利害関係から従来の方法に黙って従うしかないのかもしれません。

 

モンクリフ先生のお話を聞いて頭に浮かんだのは、アンシャン・レジーム のイメージでした。

社会や世界史の授業が懐かしいですね。

 

アンシャン・レジームとは旧制度、旧体制の意味で、フランス革命前の封建社会のことをいいます。

 

ブルボン王家を頂点とした貴族と教会の支配のもとで農民が重い負担に苦しんでいましたが、社会の矛盾が深刻となった18世紀末にフランス革命が起こりました。

 

ここ数年、海外でも我が国でも、精神科に対する批判が相次ぎ、改革の動きが広まりつつあります。

これまでの精神医学的な診断や治療法では、精神医学と患者さんのQOLの矛盾が大きくなりすぎ、持ちこたえることができなくなっているのかもしれません。

 

これから起こるのは、精神医療革命 かもしれません。

今は革命前夜の夜明け前なのかもしれないと思いました。

4 内服経験者のリフレクション
 

次に、向精神薬を内服したご経験のある患者さんのリフレクションがありました。

 
内服経験者

内服経験者

医師から
「これから能力がどんどん落ちていきます。」
「これまでやってこれたのは、今までに能力を身に着けたこれたからです。
「これからもう一生入院です」
などと言われました。
私を助けてくれたのは訪問看護で、おかげで減薬することができました。

 
内服経験者

内服経験者

認知機能障害と陰性症状は症状ではなく、薬の副作用だと思っています。
私は身なりを整えることが難しくなり、障害者らしく見えたと思います。
感情が鈍麻し、精神障害者らしくなってくると、外出などの機会がでています。
その頃に病院で勉強会などが開かれ、いかに向精神薬が素晴らしいか、いかに大切かなどの洗脳が行われます。

 
内服経験者

内服経験者

主治医の先生に相談すると、さらに副作用止めが増やされ、私は精神障害者としてますます管理されることが必要な人間として差別されていきました。
本当は精神科医の先生も、向精神薬に意味がないことは気づいているそうです。
でも、上級医の先生との関係や、製薬会社との関係で、理解していても口に出すことはできず、悪魔に徹していると聞いたことがあります。
本日は勇気をもって本当のことをおっしゃっていただき、モンクリフ先生には感謝しております。

 

内服経験者の方のお話を聞いているだけで恐ろしくなりました。

 

私も統合失調症と診断され、抗精神病薬による治療を受けていたので、身に覚えがあります。

 

一旦、精神障害者としてカテゴライズされてしまうと、こんなにも簡単に基本的人権と人生そのものを失ってしまいます。

 

「精神科の治療とは、治療という名目で行われている社会的な排除ではないか❓」と感じました。

5 カリ・ヴァルタネン先生の講演

次に、カリ・ヴァルタネン(Kari Valtanen)先生 の講演がありました。

 

ヴァルタネン先生は、フィンランドの精神科医の先生で、オープンダイアローグを用いた治療で有名な先生です。

 

モンクリフ先生と交流されており、『精神科の薬について知っておいてほしいこと 作用の仕方と離脱症状』というモンクリフ先生の本の推薦文を書かれました。

 

ヴァルタネン先生の講演

薬は個人の機能に対して非常に影響を与えるので、その点は苦労しています。
薬について非常に大切なことは、薬がどのような影響を及ぼす可能性があるかについて、クライエントの人と話し合っていくことが大切だと思っています。


モンクリフ先生の研究結果に書かれていることは、非常に重要でバランスがとれたもので、薬を使用することに対するコラボレーションが非常に重要だということで、本当に相談することが重要だと思います。

精神医療では特に、いわゆる症状といわれるものを治すことに対して、薬に頼りすぎることがあると思うんです。
けれども、有害な面に対してはあまり注目が払われていないように思う。
集団という面でも、社会的な機能についても、有害なことについてはあまり注意が払われていないような気がします。

オープンダイアローグでは、コラボレーション(協働)していくことが重要だと考えているんですけれども、治療についてもオープンに対話していくことが重要だと考えています。
薬についてもオープンに対話して、服用を開始する前に有害作業や効果などあらゆる面について話し合っていくことが大切だと思います。

精神医療について独立した批判的な研究というものがあまり行われてきませんでした。
モンクリフ博士が長い間、こうした研究をしてくださったことにとても感謝しています。

まだまだお話したいことはたくさんあるんですが、最後に離脱症状に関する研究が行われていることに心強く思っています。
今長期に薬を服用している人が、離脱していけることを考慮していかなければいけないと思います。

6 高木俊介先生と松本俊彦先生の講演

次に、高木俊介先生松本俊彦先生 の講演がありました。

🍀 高木俊介先生の講演

高木俊介先生は ACT で有名な精神科医の先生です。

 

Assertive Community Treatment (ACT)は、重い精神障害を抱えた人が住みなれた場所で安心して暮らしていけるように、 様々な職種の専門家から構成されるチームが訪問中心の支援を行うことです。

 

高木先生の講演

ACTという医療専門職が24時間地域で支える往診に従事しています。


20年間大学病院で勤務してきました。
1日にハロペリドールを100mg単位でいくこともありました。
遅発性ジスキネジア、突然死、イレウスなど様々な副作用を見てきましたが、抗精神病薬に対する疑問は浮かびましたが、薬物療法自体に疑問を抱くことはありませんでした。


その後、ACTで地域を訪問した時に、強制的に精神病院に入院され、治療を拒否し、人間不信に陥っている患者さんをたくさんみました。
我々との人間関係さえあれば、治療を受け入れてくれる魅力あふれる患者さんとの出会いましたが、彼らは医学的には重症とされる方々でした。


2000年代からこうして精神科の薬物療法を批判的に学ぶようになりましたが、その時知ったのは、精神科の薬物療法に対して見直そうとする世界の潮流でした。
特に統合失調症の長期予後が、薬物療法時代になっても実際には変わっていないこと、薬物療法を受けていない患者の方が長期予後が良いことも知りました。


過感受性統合失調症の話も聞きましたが、これは私は新薬開発の言い訳にしか聞こえません。
日本だけ世界の潮流に逆らっていますが、薬物ファーマの新自由主義的な経営方針に、大学も追従しているように見えます。
精神障害者に対する社会の目も、収容主義のまん延に伴って、スティグマ化されたものになっていると思います。

そのために、薬物療法に頼る以外に社会資源も、社会的関係もありません。
精神障害者とカテゴライズされた瞬間に、多剤大量療法が行なわれ、生物・心理・社会的な抑圧が行われるんです。


こういうことからの解放の1歩が、適切な薬物療法の研究ですが、私はそういうことをするには、薬物による悪事をたくさんやってきました。
薬物療法に対する治療を確立するためには、年を取りすぎ、無力になってしまいました。
ここで勉強されている若い方が、新しい治療を確立してくれるように祈っています。

🍀 松本俊彦先生の講演

松本俊彦先生は、アディクション(依存症)の治療で有名な先生です。

 

松本先生は、国立精神・神経医療研究センターで依存症治療の研究をされています。

 

松本俊彦先生の講演

2000年代は精神科の曲がり角でした。
かつて、抗うつ薬を投与することはドキドキすることでした。
この頃から副作用の少ないSSRIやSNRIが販売されるようになり、気軽に処方されるようになりました。
2005年に精神科通院医療公費負担制度が廃止となり、支援の対象が大幅に縮小されました。


それまでは診断名さえついていれば、公助が受けられたのですが、2005年以降は「統合失調症」や「うつ病」や「双極性障害」などの有名な障害に限定されるようになりました。
なので、患者さんの負担を減らすためにも、うつなどの診断名を多用するようになりました。

また、精神医学があたかも精神薬理学かのように誤解して、新薬を投与し続けることに夢中になる医師たちもたくさんいました。
大学における精神病理学や精神力動的なカンファレンスがなくなっていき、操作的診断と薬物療法検討の場になっていきました。

しかし、この時期、もう1つ新しい動きがありました。
新しい精神ユーザーたちが登場しました。
まるで向精神薬のソムリエのように、様々な向精神薬の効果をネットにあげ、ドクターショッピングをして薬を集め、ときにはオーバードーズなどで乱用していました。

その当時のヒーローだったのが南条あやさんで、この人は高校卒業後まもなく自殺してしまうのですが、ブログが書籍化されています。

政治的に都合が悪いエビデンスは集めらません。

これからは本気の人間学的精神医学が重要になると考えています。
すなわち、症状をリストアップし、人生の物語・文脈から「症状の意味」を考えることです。
治療トラウマに配慮し、トラウマ・インフォームド・ケアとハームリダクションの観点からの支援を考えることが重要だと思います。

松本先生の講演の途中で、J:COM の方が工事のお知らせに私の自宅を訪問されたので、残念ながらシンポジウムを途中で抜けることになりました😅💦

 

今でも松本先生の講演内容がめっちゃ気になります💧

7 訳者松本葉子さんと村上純一先生の講演

まず、松本葉子さん の講演がありました。

松本さんは本の訳者で、薬剤師と精神保健福祉士の資格をお持ちです。

 
松本葉子氏

松本氏

統合失調症になった時に、病名も薬の作用も何も知らされないで薬を飲まされている患者さんがおられます。

後で薬のことを勉強すると有害作用もたくさんあって、何かの拍子で騙された感覚だけがあって、その感覚に苦しんでいる患者さんもおられます。
モンクリフさんのドラッグセンターの考え方を教えてもらって、私の考えことや私の思いが実現するかもしれないと思って、嬉しく思いました。

 
松本葉子氏

松本氏

アディクションの領域の方々は自分で薬を選んで飲まれるとお聞きしていますが、アディクションの領域の方々に共感することが多かったのですが、オーバードーズをするとメンクリからお断りされたり、違法薬物を服用すると逮捕されたり、依存症で社会から排除されてしまうことにとても共感していたんだとわかりました。

 
松本葉子氏

松本氏

抗精神病薬を飲んでいない統合失調症患者は存在してはいけないのではないか、と思いました。
今日本では、ハームリダクションや人とのつながりの回復とかが見直されていますが、排除ではなくてつながりの中で回復を目指せるような場所を作れるようなヒントをもらいたいと思っていたので、今日はこのような会に参加させていただいて良かったと思います。

 

 

次に、村上純一先生 の講演がありました。

村上先生は 琵琶湖病院(精神科)の精神科医の先生です。

 
村上純一氏

村上氏

普段病院では話されないテーマが話されていました。
今、松本葉子さんが言ってくださったように、そのことに光が当てられて、話し合うことができていることが公正なことだし、希望のように感じています。
なぜ見てみぬふりをされているかというと、自分たちがとんでもないことをしてきているということを振り返らないといけないから、でも自分たちはとんでもないことをしてきているという感覚があります。

 
村上純一氏

村上氏

精神科の薬を強制されるという理由として、現場では病識がないという言い方をします。
この考え方をきちんと直すことなく、ご本人がきちんと向き合おうとされていることを、こっちがラベリングをしていることもあると思います。
都合が悪いことはなかったことになっているというか。
振り返っていても表面的だけだと思うので、こういう場に製薬会社の人にも来ていただいて、ちょっとずつでも話し合っていくべきだと思います。
薬を止めたい人が止められるように、こうした取り組みが少しでも広まっていくといいなと思います。

 

お2人のお話と温かさが胸に響きました😊️

8 気になった話

あっという間に講演予定時間の3時間が過ぎ、17時20分になっていよいよ講演会がお開きになりました。

 

講演会が終わった後、まだしばらく会場のカメラが回っていて、Zoomの画面には会場の映像が映し出されていました。

たくさんの人がモンクリフ先生に駆け寄り、モンクリフ先生が気さく話しかけている映像が流れていました。

 

ある1人の会場参加者の方(画像手前の紺色のスーツを着て黒いリュックを背負った女性)のお話が聞こえてきました。

 

参加者の方はモンクリフ先生や会場の方に話しかけていました。

 
ショートカットの女性

参加者

モンクリフ先生、今はナイチンゲールの時代ではありません。

ビッグデータの時代です。

ビッグデータを集めるのを手伝ってもらえませんか❓

WHOとかで開示されているから、結構簡単にデータが取れるんですよ。

色んなデータがあって、普通の人に比べ、トランスジェンダーの方が糖尿病になりやすいというデータもあるんです。

 
Joanna Moncrieff

Moncrieff

ビッグデータ❗

今は何でもサイバーの時代ね(笑)

 

モンクリフ先生は気さくにお話されていました。

 

私はこの参加者の方の「ビッグデータ」という言葉が耳に残りました。

 

私は Python の勉強を進めていますが、精度の高いアプリを作るには、いずれビッグデータの問題に直面することになります。

私と同じように、テクノロジーによる障害者支援を目指している人は、私のほかにもたくさんいるんだと思いました。

9 本をレンタル

講演会が終わった後、どうしても『精神科の薬について知っておいてほしいこと 作用の仕方と離脱症状』の本が読みたくなって、閉館間際の図書館にひとっ走りして本をレンタルしてきました。

 

様々な思いが去来した充実の講演会でしたが、今度は本を読んで、心と頭の中に活字で落とし込んでいきたいと思います😊️

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました😄

また来てね~😄👋