また迷子の話です。
今をさかのぼること〇十年前。
新入社員の私たちが、各部署に配属されて
間もなくのことだった。
その日は科学館の見学に出かけた。
数十人の新入社員が一斉に会社を出る。
社会人なので、現地の集合時間を指定されるのみ。
私は集団で電車に乗ることが、なんだか小学生みたいで恥ずかしく、
集まるとつい大きな声で騒いでしまう懸念もあって、
みんなと離れた車両に乗り込んだ。
電車の乗り換えくらい何のことはない。
科学館の最寄りの駅に着いて辺りを見渡し、
すぐに出発しようとしたが、
念のため方向を確認しようと思った。
地図は頭に入っていたけれど、
こんなところで迷子になったら恥ずかしいから。
キ〇スクに行って、おばちゃんに尋ねた。
「すみません。〇〇科学館はこっちの方向ですよね?
」
「ちがうよ、こっちだよ
」
え?
おかしいな。
反対だったの?
訊いて良かった!
ところが、駅から10分と書いてあったのに、
もう7~8分歩いてきたけれど科学館らしき建物は無い。
途中の道を間違えたのか?
誰かに聞きたいが、通りを歩いている人は誰もいない。
やばい。わからない。
すると、大きな門の前に警備員が一人立っていた。
「すみません。○○科学館はどこですか?」
「○○科学館?・・・知らないなぁ」
えーーーーー?!
知らないってことは、近くないってことだ。
やっぱり、最初に思った方向で良かったんだ!
尋ねる人を探して、さらに駅から遠ざかってしまっていた。
急いで駅に引き返した。
やばい、やばい。
もう集合時間をとっくに過ぎちゃった。
科学館へ着くと、新入社員が館内に散らばって
各々のペースで見学していた。
人がたくさんで上司を探せない。
早く探して、遅れて付いたことを伝えなきゃ。
階段を上って行くと、部長が私をみつけて降りてきた。
「お~、無事着いたんだね。心配したよ。」
「すみません。キヨスクで訊いたらあっちだって言われて・・・」
焦りと不安で、なかなか息切れが落ち着かなかった。
みんなで会社を出たのに、ひとり迷子になるなんて。
ほんとに恥ずかしかった。
ここで得た教訓 ―――
キ〇スクのおばちゃんは
信用しちゃダメだ
え、そこですかい。
当時はそう思っていたけれど、
いま思い返すと違う。
もっと自分を信じよう
おばちゃんはお上りさんの私を
からかったのかもしれないし、
勘違いして方向を教えたのかもしれない。
キ〇スクのおばちゃんだから
絶対信用できる
という思い込みで判断してはいけない。
いつも信用できていたから、全部言うとおりにしよう。
じゃなくて、自分の勘と経験も信じて決めよう。
世の中はたくさんの情報にあふれている。
新聞に載ったから、テレビで言ってたから、と
鵜呑みにする時代は終わった。
誰かが「右」って言ったら「左」っていう説は無いのか、
両方調べて、
自分で納得できる答えをみつける。
みんな、目を覚まそう。