長い長い「Monster」シリーズをずっとお読みになってくださっている方々どうもありがとうございます。またまた長い記事ですが、お疲れにならない程度に、適度に読み飛ばしてくださいませ。
このお正月から音楽系の本を3冊(ブルース、演奏理論、音楽理論)を読み、坂本龍一の「スコラ」も見てな~る~ほ~ど!と思ったことからいろいろ発見が続いていっぱい書いてしまいました。書かないと忘れるんです~~~~。すみません。
「Monster」の出だし2連の発見には鳥肌が立ちました。
もうまるで音楽が言葉を得て喋りだしたかのよう。。。。。
やっぱりマイケルの作曲の仕方というのは凄いです。とことん細部まで拘った集中力と探究心に驚きます。
どうして、この曲に拘るかというと、この曲自体がFAKEだなどとつつかれてるからというのもあります。聞いた感じはとても良いのにそんな話があると
き~も~ち~わる~い!
じゃありませんか。
だからつい調べだしたら深みにはまりました。
はい、やっぱり素晴らしい曲です。リズム以外もとことん拘りつくして作ってあります。きっとマイケルが書いてますよ(曲も歌詞も)。「Monster」のあの音節を少しずつ増やす手法は、「Threatened」でも使われています。
マイケル以外誰が書くの?という感じです。マイケル以外だったら、かなり実力のある実績のある作曲家しか書けないです。じゃあそんな作曲家が偽マイケルの曲を書くほど暇があるか?ないでしょう。
で、マイケル作曲=マイケルが歌ってる
です。
マイケルは譜面を書かない人だったので、歌いながら作曲してたのです。
百万分の一ぐらいの何かの事情で(声がつぶれてたとか)譜面を書いたとしても
自分以外の誰か(それも自分と声の似てる人)に歌わせる必要性はゼロですからね。。。。。。。
だからこの曲とか他のカシオトラックのボーカルが○○だとか××だなんて
言っちゃあだめなんですよね~。
外国のブログでこの曲を「trash」(駄作)とか言い放って消えたのがありました。
なんだかなあ。。。
ま、いいか。どちらにしろ100%の証拠なんて無いので。
さて、前の記事で少し触れた黒人音楽と白人音楽の違いについてです。
いろいろな違いがあると思うのですが、リズム(グルーブ)に焦点を当てるとこんな感じです。(丸の大小は音の長さ、大きさを表します)
白人音楽 (イギリス民謡、ミュージカルナンバーなど)
●●● ●● ●● ●● 強い拍と弱い拍の比が約2対1なので
3拍子系の曲が多い。
黒人音楽
● ● ● ● ● ● ● ● 8ビート、16ビートの曲
これはそのまま白人英語と黒人英語のリズムの違いを反映しています。
白人音楽はアクセントの差で意味の違いを表し、黒人音楽は音の高低で意味の違いを表すからです。
例
白人音楽系
「スカボローフェア」
Are you/ going to// Scarborough/ fair? // /
●● / ●● // ●● ● / ● // /
●● / ●● // ●● ● / ● // /
☆Parsley,/ sage, rose//mary and/ thyme. / / /
☆ ●●/ ● ● //● ● /● // / /
☆ ●●/ ● ● //● ● /● // / /
☆ Re//member/me to// one who lives //there. /
☆ ●// ●●/ ●● // ● ● ● // ● /
She once/ was a// true love of /mine.
●●/ ●● // ● ● ● / ● //が小節の区切れ 8分の6拍子
「グリーンスリーブズ」も同じような拍子とリズムを持っています。これらの曲は
イギリスからの移民してきた人たちがアメリカの南部で歌っていたもので、サイモン&ガーファンクルはこのようなイギリス民謡(バラード)を調べて歌を作りました。
イギリスの詩は強拍と弱拍の組み合わせ、●●、 ●● 、 ● ●● 、などで
リズムの変化を楽しみます。
伝統的な白人系音楽では必ず動詞、名詞、形容詞を中心にした内容語(意味の上での重要語)は強拍にあたり、楽譜では小節の第一拍目に来ています。
マイケルの中でもバラード系やアンセム系の曲にはこの特徴が見られます。
特にアンセムは世界中の人々が理解して歌えることを意識しているので、標準的な英語のアクセントを取ったのだと思います。
There's A Place /In Your Heart
● ● ● / ● ● ●
And I Know /That It Is Love
And I Know /That It Is Love
● ●● / ● ●●●
and this place/ could be Much
● ● ● / ● ● ●
Brighter Than Tomo/rrow
and this place/ could be Much
● ● ● / ● ● ●
Brighter Than Tomo/rrow
●● ● ●●/●
メロディーは強拍と弱拍が組み合わせられているのですが、曲自体ののビートはバックビート(裏拍)が強くて、白人音楽と黒人音楽の特徴が折衷しています。メロディーのリズムは白人系で、曲のノリは黒人系と言えると思います。現代の白人系の人が歌うバラードも同じようなことが言えそうです。
黒人系のリズムの例
マイケルの曲の中でもいわゆる「黒っぽい」といわれるファンク系の曲は
メロディーのリズムも黒人系(8ビート)、曲のリズムも黒人系(バックビート)になっています。
そして、ヒットした曲(売り上げの多かったもの)はこの系統のものが多いです。
(Billie Jean, Black or White, Beat It, Rock With Youなど)
I took my baby on a Saturday bang
●● ● ● ●● ●● ● ●
Boy, is that girl with you? Yes, we're one and the same
● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●
But, if you're thinkin' about my baby
● ● ● ●● ●● ● ●●
● ● ● ●● ●● ● ●●
It don't matter if you're black or white
● ● ●●● ● ● ● ●
● ● ●●● ● ● ● ●
長い単語も、弱い音節も強い音節もみんな8分音符が当てられています。「Monster」もこの部類に入ります。とても歌うのが難しいと思います。単語の数も物凄く増えます。
白人的なアクセントはabout、 black or whiteですが
●● ● ● ●
ここではabout、 black or whiteになります。
●● ● ● ●
ラップがこの曲に入るのですが、ラップの入り易いリズムだといえると思います。
音の高さ低さが無ければラップになるようなメロディーですが、比較的上下の激しい
覚え易いメロディーラインがあるので、ここにはやや白人音楽的要素を取り入れてますね。
マイケルは「メロディーの重要性」をつねに意識していましたが、ラップ的な要素も取り入れて曲作りをしていたのだと思います。ラップは80年代後半以降主流になってきましたからね。曲のノリとしてはニュージャックスウィングの撥ねるビートです。
このリズムの違い。これは普段喋っている英語のアクセントの違いがそのまま出ているのです。その民族に固有の音楽のリズムは、しゃべっている言葉のリズムと関連性があるというのは沢山の人が研究して発表しています。しゃべりにもノリがありますものね。
ところで、このマイケルの物まねの人。マイケルに似ているといわれていますが、この人のノリを調べてみました。
I remember you calling singing
●●● ● ● ●● ●●
まさに、典型的な白人系のリズムで歌っていることがわかりました。
この人の歌が「マイケルのもの」と間違えられたのは、声が似ているだけではなく、曲の作り方もかなりマイケルを意識しているからだと思います(いやらしいね!)音域とか、使う音とかキーとかいろいろ似せてます。この曲の最後は「Leave Me Alone」のメロディーをそのまま使ってるようです。
私も最初戸惑ったのですが、この記事を書き始めてから、「そうだ、リズムを調べてやろう」と思い立って、調べたらこうでした。
基本的にマイケルとはグルーブ(ノリ)が違うのです。あの「モンスター」みたいに8分がダダダダダッと続く歌はこの人には歌えません。歌えるのだったらそこも真似して曲を作るだろうし。
この人は2007年にいかにもマイケルっぽいタイトルをつけた「7even」というアルバムを出しています。日本でもヤオフクあたりで買えるそうですが、騙されないようにしてくださいね。
No one will ever fill his shoes!