「Off The Wall」1978年
「Off The Wall」は私が最初に出会ったマイケルのアルバムなので、今も一番のお気に入りです。華やかだった70年代のディスコミュージックが懐かしく、マイケルのキャリアの中ではターニングポイントになった作品だし、ちょっと語ってみたいと思います。
 
off the wallというフレーズはtraditionalと反対の意味を持ちます。何か人とは違う、突拍子もないということ。「Off The Wall」という曲はロッド・テンパートンがマイケルの人柄や、性格を考えて作って提供しました。
     (歌詞と和訳はこちらで: http://blogs.yahoo.co.jp/cyerry0405/14957467.html
「僕は“オフザウォール”が採用されるって予想してたよ。あの曲はマイケルの性格をよく考えて作ったんだ。彼がチャップリンが好きなのを知っていたからね。“オフザウォール”はマイケルにぴったりだと思ってたんだ」。テンパートンは当時まだ若手ながら敏腕プロデューサークィンシージョーンズに見出された、新鋭の作曲家、演奏家でした。
 
テンパートンはあの「スリラー」を作った人でもありますが、マイケルの性格だけではなく、ボーカルスタイルの特徴もきちんと把握して、最大限に魅力を発揮できる曲を作りました。マイケルのリズム感のよさを生かすために、スタッカートの多いメロディーを作ったのです。
 
「昼間の仕事のうさを忘れて気楽に踊りまくろう」。表の意味はこれで十分な
ファンキーなディスコナンバーですが、マイケルの性格や生き方、その頃置かれていた状況に照らすと違ったとり方ができますよね。
 
「型にはまらず自分らしく生きよう」。マイケルをこの曲の主人公だと考えると、こんなふうに訳ができるかなと思います。チャップリンもマイケルも、既成概念にとらわれず、常に新しい物を創作し、挑戦を続ける人生でしたから。
 
Off The Wall の頃はまだマイケルはジャクソンズの一員として、ソロ活動もするという立場でした。「9時から5時までの仕事はとりあえず棚にしまって」というのは、グループの仕事とは別に、自分の個性や才能を生かすソロの仕事もやりたいということかなと思えば意味深です。
 
「Just enjoy yourself」。
家族とやる仕事と、自分のソロキャリアの間で悩むマイケルへの励ましのようです。
 
アルバムのジャケットの写真の撮影についてはこんなエピソードがあります。
始めはマイケルがカウボーイスタイルで藁山の上に座っているというアイディアでした。しかしデザイナーのマイク・ソリズベリーはあのタキシードスタイルを提案しました。
 
「彼は父親のコントロールから自立したばかりの若者だ。だから彼がジャケット写真は、マイケルのソロデビューはシナトラのラスベガスデビューと同じぐらいビッグなものなんだということを知らせるものにしたかったんだ。」ソリズベリーはこう語っています。
 
「Off The Wall」アルバムの製作はマイケルが大人の歌手として新たなスタートを切るための出発点になるように、スタッフが皆意気込んでいたことがよくわかります。
 
「人とは違うことをやってみよう」というのはマイケルの創作活動の大きなテーマであり続けたと思います。「誰もがあっと驚くものを作りたい。」というのと同時に、正しいことと信じることであれば人がやりたがらないことでもやり通すというところもありました。このあたりもチャップリンと共通していると思います。
 
チャップリンはヒトラーの独裁政治に反対する「独裁者」という映画を作りました。
当時のアメリカはヒトラー政権に対しては容認する政策を採っていて、これがきっかけでチャップリンはFBIのフーバー長官に目をつけられ、後のアメリカ追放につながったという説があります。
 
チャップリンが「独裁者」を作ったのは、そのような危険も承知した上だったのではないかな。優しさ哀しさと、表現者としての意志の強さ。そこにマイケルは心酔したのではないだろうか。そう思えることがあります。
 
「独裁者」の中でチャップリンが地球のボールで踊る有名なシーン。これをオマージュしたのがヒールザワールドの地球ボールかも?
 
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             チャップリン扮するヒムラーが地球儀のボールと踊るシーン
 
いろいろ考えてしまいましたが、とにかく「Off The Wall」のノリノリ感、今でも私にとってはツボです。それにやっぱりスズキの宣伝ですよ~~~~。
最後の眼をパチクリがウィンクだったとは知らなかった!それに詞の意味なんて考えたこともなかった!
(参考文献:Michacl Jackson For The Record, Beatleg6月号レインボーブリッジ社
「Off The Wall ボーナストラックインタビュー)