生きてさえいれば、医学は着実に進歩するはず。


まだ息子が抗がん剤治療や分子標的薬の治療をしていた頃。
なかなか腫瘍が小さくならず、まだ見ぬ未来に怯えていた頃。

先生方の口からは軽はずみに大丈夫!なんて言う言葉は聞けず。
毎回のレントゲン検査や血液検査の結果に怯えていた息子に、何にも声をかけれなかった。

ただ私の中には、生きていればきっと新しい治療や知見が見つかるはずというぼんやりとした希望があった。
なんの根拠もないから、口に出すことはあまり無かったけれど。


グレーゾーンというどの型にも属さず、標準治療が受けられなかった息子。
過去のエピデンスが採用されなかった。
病気の原因もわからず、どこにその怒りをぶつければいいのか。

ただ目の前の現実を受け入れるしかなかった。



そこから、

少しずつ状況は上向いて寛解しその後の経過観察期間を経て、現在はなんの問題もない。



ただ、風邪を引いて体調を崩したり職場の健康診断を受けることになると病院に足が向かない。

やっぱり再発の怖さが先に立ってしまうのだ。

恐怖に思うことほど、人を動けなくしてしまうものはない。


生きてさえいれば。

なぜ今頃この言葉を思い出すのか。


息子の不安な気持ちを聞きながら、相変わらずそばにいることしか出来ない私だ。