映画化されたのを知って読み直した本
内館牧子 著 幻冬舎文庫
 『十二単衣を着た悪魔 源氏物語異聞 』



59もの会社から内定が出ぬまま大学を卒業した二流男の伊藤雷。
それに比べ、弟は頭脳も容姿も超一流。ある日突然『源氏物語』の世界に
トリップしてしまった雷は、皇妃・弘徽殿女御と息子の一宮に出会う。
一宮の弟こそが全てが超一流の光源氏。雷は一宮に自分を重ね、光源氏を
敵視する弘徽殿女御と手を組み暗躍を始めるが・・・・。
(文庫裏より)


初めてこの本を見たとき「・・・プラダを着た悪魔・・・?」を連想した。
があながちそれは間違いではなかったようで、実際この映画のメリル・
ストリープ演ずるキャリアウーマンを見て感じるところがあったようで。

正直、源氏物語をちゃんと読んだことがない。ないが光源氏や桐壺更衣
藤壺・夕顔や六条御息所などは知ってる、どちらというと光源氏を巡る
絢爛豪華な女性絵巻・・・という印象だろうか。
だがこの本の要は原作ではあまり登場していない「弘徽殿女御」。
桐壺帝の正妃として第一皇子の一宮を産んだ人である。
そんな「弘徽殿女御」に光をあて輝かせたのがこの本。
著者の後書きにも、この本は『弘徽殿女御コード』で読む光源氏であると
書かれている。

実際読んでみて、いや~彼女の台詞が小気味いい。
今でいうキャリアウーマンタイプである。
逆に言うと平安時代の女性としては考え方が斬新すぎた、時代が早すぎた
という感じだろう。

本の中での弘徽殿女御の台詞で印象に残った言葉
「『可愛い女』にはバカでもなれる。しかし『怖い女』になるには能力がいる」
「女が幸せな人生を勝ちとるのに必要なものは二つだけ。決断力と胆力だ。
 それさえあれば、たいていのことはどうにでもなるわ」
なんともかっこいいではないか。

そんな弘徽殿女御の語り部的立場のような主人公の伊藤雷。
それまでは二流男として自信もなく生きてきたが、源氏物語へトリップし、
またそこに生きる人たちと接することで人として成長していく。
トリップした世界で26年もの年月を過ごす事になるのだが、後半がとても
切ない、切なすぎる。
何が切ないかって・・・・言わない、言えない。
そして伊藤雷が果たして現世に戻れたのか・・・・これも言わない。
いやだって、これから映画公開だし、ネタバレ(充分してるか)なるし?

原作では味わえないであろう?とても人間くさい・・・いや人間らしいこの本
私は非常に好きである。






映画「十二単衣を着た悪魔」予告PV


http://youtu.be/VUWX4AtrZ8o




by鬼灯