この時の記憶をクリアに掘り起こすと、芳醇だ。たとえ俺みたく後悔満載で薄っぺらい青春だと思ったとしても、それ自体は楽しかった記憶が蘇る宝物だ。自分だけにしか分からなくても。



いや、やっぱ可哀想だったな。あの時のおれ。

特に中野に越してからは。

だって、中野の時で楽しかった記憶が出てこないもん。

あん時、酷くは辛くないにしても楽しくもなかった。そんな感じだ。

そういえばあん時、おれひたすら寝てたような気がする。日中も。特に大学の授業もなくて予定もない日は朝になっても起きられる気がしなくてただひたすら眠かった。


なんなんだろ?あれ。

だって今より圧倒的に若い2122じゃん?

普通だったら元気いっぱいな盛りじゃん。

たしかに、今思えばピロリ菌で慢性的な腹痛だったけども。でも、あんなに疲れ果てて一日中ぐっすりなんて、仕事もしてない自由な学生のクセに、どんだけプレッシャーを感じてたのか。今思えば空恐ろしい程の窮屈さと苦痛を感じていたのだと思う。講義のときも白昼夢かすぐ寝てしまうかだったから。


あーあ、細かく思い出せばやっぱり地獄だったな。俺の前半生は。傍目にはわからないとしても。



たぶん、要町の時はまだ楽しかったんだと思う。辛いこともあったけどそんな中でも奇跡的にいい人達と知り合いになれて楽しかったんだと思う。