プリンちゃんとお別れになり、アンティーク業界に足を伸ばすのが、辛かった。私達が付き合ってたことは有名で、彼が元気か私に聞いてくる人もいる。そうしたことを聞かれるのも、答えるのも心が痛くて、次第に足が遠のいた。

ある日、知人に誘われて、現代アートのギャラリーのオープニングパーティーへと向かった。現代アートの顧客層は、アンティーク家具とは違って、年齢層が少し若く、「今」ちょうどバリバリ働いている人たち、という感じだった。

知人は、彼の顧客でもあり、可愛がっている妹的存在でもある大手スーパーチェーン一族のお嬢さまと来ていた。その彼女が、「あらアントワン！」といって声をかけたのが、彼。真面目そうな、あまりアートとは縁のなさそうな雰囲気の男性だった。さらりと名刺交換をして、その場はおしまい。

パーティー終了後、彼女の家でドリンク。結婚しないで1人で子どもを産んだ彼女には、小さな息子がいた。７区の大きなアパルトマンに、息子と2人暮らし。執事の役目の男性が、住み込みか通いかわからないけれども、控えていた。

翌日、昨晩会った男性から連絡があり、お食事をすることになった。

彼は、日本でいえば東大の法学部の院みたいなところを出て、自分で経営コンサルタントをしていると言った。

車が通ったからか、私がその頃すごく気に入っていたプジョー607が通ったとき、

「私、この車、すっごくセクシーだと思うの。😻」と言ったら、「そんなこと言った人は初めてだよ。おじさんに伝えとくよ。」と言われた。彼は、プジョー氏の甥だったのである‼️

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日本で言えば、トヨタの社長の甥っ子のようなもの？

びっくりしたけれど、その時はそれでおしまい。

ディナーをしていて、週末バルビゾンに行かないか、という話しになった。絵画のバルビゾン派が生まれたバルビゾンである。行ったことはないけれども、名前だけ知っているその村に行くのに反対なんてあるわけない。週末、パリから１時間で着いたところは、田園風景が広がっていて、おいしいレストランもある小さなかわいい村。きれいな田舎を楽しんでパリに戻ってくると、なぜか私のアパルトマンとはセーヌ川の反対の７区寄りの１５区の住宅街に行った。不思議に思ってると、車を止めて駐車。ますます不思議に思ってると、「弟のアパルトマンがあるんだ。」という。会いにきたのかと思って、一緒に車を降りて階段を上がって中に。すると、「弟は、ここで自殺したんだ。」と。自殺？！

聞いてビックリでしたが、実は、フランスは自殺率がかなり高いのです‼️

彼の弟が、どんな理由で自殺したのかはわからないけれども、名家ならではの問題があったかもしれません。自殺以来、アパルトマンをそのままに　しているとのことでした。なぜ私に見せたのかはわかりません…

こうして始まった彼とのお付き合いでしたが、不可解なことがありました。

彼の家によんでくれないのです。フランスは、親しくなったら、すぐに人を招待します。アパルトマンが広いとか狭いとかは関係なく、それがエチケットのようなものです。私の方としても、早い段階で経済状況や趣味が一目瞭然にわかるので、

機会があれば、なるべく早く伺うようにしていました。学校や職場が同じというわけでもなく、共通の知り合いが多いわけでもない場合、「家は人となり」を表しているものなので、その人物を理解する大きな手がかりとなります。私みたいな外国人の場合は別。「仮住まい」ですから。親・親類の所有物件があるわけではないし、出身国での資産状況を反映するもの、とは明確には言えません。

彼は、私を呼んでくれないし、私は人を自分のアパルトマンには呼ばないマイルール。

必然的にホテルとなるのですが、あるとき、一緒にパリのお隣の市、ベルサイユにあるタラソセラピーのあるホテルに行くことになりました。日本の雑誌で発見したのです。パリから１時間弱のベルサイユ。一緒に泊まると思っていたのに、彼は帰ってしまいました。え❓‼️

帰らなくてはいけない用事があるとかで。突然のことに驚きながら、1人でタラソセラピーを受けて、次の日彼が迎えにきてくれるのを待ったのでした。

なんだか不可解なことがいっぱいですが、とりあえず彼とのお付き合いは続きます。

今度は、憧れのオテル…リッツ。

今のように改装する前の、ココ・シャネルが愛したリッツの香りがする内装。シャネルが愛用したスイートは、彼女が好きだった漆を用いた黒と金の家具などがありますが、他は、クラシックな、フランスらしい、ヴェルサイユ宮殿時代を思わせる独特のパステルブルーを基調にした内装でした。私からすると、ザ⭐︎フランス🇫🇷です。

淡いブルーを基調にして、他のホテルとは一線を画したインテリア。逆にリネンは、ピーチオレンジ色で、そこも独特で、リッツらしさを演出しています。

一目惚れするインテリアでした😻😻

それもそのはず。リッツは、このインテリアデコレーションに大層力を入れていて、リッツオリジナルのリネン・タオルをはじめとした商品は、ホテル内ブティックで販売していました。

朝、窓からの太陽の光とその影が作る光景があまりにも美しくて、何枚も写真を撮ったのを覚えています。

彼がこんな不可解な行動をとった理由がわかりました。彼には、面倒を見ている、「腐れ縁」ともいえる彼女がいたのです。彼にとっては、もう恋愛感情のなくなった、恋人としては「終わった」関係でした。兄と妹のような関係。ですけど、彼女にとっては、全くそうではありませんでした。

もともとの希望だったのか、一旦彼から離れた方が良いと思ったのかは知りませんが、彼女はスペインのビジネススクールに行きたいと彼に言いました。彼は、そこで彼女が新しい人に出会えるとよいと思って、授業料などを払ってあげて送り出したのです。

私からすれば、そんな優しい彼氏がいたら、他の人に目が向かないと思うのですが。逆効果だと思うのですが。

いずれにしても、彼のアパルトマンには、きっと彼女のものがまだたくさん置いてあって、だから私を呼べないのでしょう。

毎週のように高級ホテルに泊まっていたら、結構な出費になります。それで、こうしたことが明るみに出るのが早くなったといえるので、自分の家に招待ではなくて、お相手の家に行くこの方法、おススメです🤠

プジョー氏の悲観的な甥っ子