話の途中で黙りこみ、急にため息を付いたかと思うとうっすら苦笑するキョーコを蓮はずっと見ていた。キョーコの横顔はまだあどけない少女の面影を残している。化粧ッ化のない頬は透き通るように白くてきめ細かい。その頬にほんの少し赤みがさしたようにみえるのは気のせいなのだろうかと、蓮はそんなことを考えながら、でも、キョーコから目が話せすにいた。
蓮はキョーコの頬に触れたいという衝動を一生懸命理性で抑えでいたが、なけなしの理性は恋する男の本能には抗い続けることなどできるわけもなかった。無意識にキョーコの頬を目指す指先。ついさっきまでキョーコを傷つけてしまったことを必死に誤っていたのと同一人物の所業とは思えないその行動...。
蓮の指先があともう少しでキョーコの頬に触れそうな時、キョーコがまたひとつ小さなため息を付いた。その息遣いに蓮はハッとして我に返り、不自然に伸びていた自分の右手をみて驚いてしまった。
キョーコはこんな蓮に気づくことなく未だに施行の小部屋に滞在しているようだった。
『京子さん、どうしたの?』と声をかければ『ふぇっ?』っと素っ頓狂な返事が帰ってきて、思わず蓮は笑ってしまった。呼ばれたことで施行の小部屋から出てきたキョーコは自分の名前を読んでおいてくすくす笑っている蓮に抗議を試みる。
『つ...敦賀さん!』
『クスクス、ごめんょ....君の反応が(クスっ)あまりに天然で....(クスっ)ついて...くすくす』
『ひどいですよ、敦賀さん。そんなに笑わなくても......』
『うん....もう...大丈夫....(クス)おちついて...北から....クスクス....だ、ダメださっきの!の顔を思い出したら...くっ、くっ、ぐはははは!!』
とうとう蓮は噴出し、大きな声を出して笑い始めた。キョーコは『もう、知りません!』と怒って背中を見けてしまうが、蓮はなかなか笑いの呪縛から抜けだせない。さっきとはまた別の意味で『敦賀蓮』のあるまじき姿に背中を向けたままのキョーコはホッとまた小さなため息を漏らす。
連が目に涙を浮かべて笑っている間、キョーコは背中を向けたまま蓮の存在を身近に感じていた。こんな風に笑ってくれるならいいかもと思う。設定上、いつもクールで大人で春風のような人『敦賀蓮』が心の底から面白いと涙を浮かべながら笑っている。この人にもこんな素の時間が必要なのだと思う。そして、その素の時間を共有腕着ている自分を嬉しく思う。その喜びを幸せというのだと、今のキョーコは素直に受け止めることができる。こんな時間が誰もが欲しがる幸せな時間なのだろうと、漠然とだが感じて、キョーコは起こっているはずの顔が緩むのを止められない。
ようやく笑い疲れた連がキョーコに声をかける。
『京子さん、ごめん。機嫌直してくれないかな?』
『嫌です!』
連があまりに素直にお願いしてくるのでちょっと意地悪を言ってみる。
『そんな....、お願いだから機嫌直して....ください?』
『ダメです。笑いすぎですからっ!』
怒っているセリフなので全然怒りが言葉に乗らない。これではばれてしまうとキョーコは内心焦る。
『お願いs、京子さんの言うこと聞くから....』
キョーコの背中に何かが当たる。多分蓮の頭だろう。
『反省してますか?』
『はい』
『もう笑いませんか?』
『大丈夫、もう落ち着いた。』
蓮の方に体の向きを変えると、連が大きな体を出来るだけ小さく縮めて、「待て」の姿勢で座っている。
大きく垂れた耳とふさふさで大きな尻尾の幻が見えるのがきっとキョーコだけだ。
(レトリバーみたい....可愛すぎる....)
キョーコは頭のなかで絶叫するがそんなことお首にも出さずにじっと蓮を見る。
『本当ですか?』
『本当に。』
『本当に、本当ですか?』
『本当に本当です』
『本当に、本当に、ほんと...『あんたたちいい加減にしなさいよ!!』....モー子さん?』
突然会話に割り込んできた怒鳴り声に声の主を探せば、階段の下に仁王立ちになってこちらを睨んでいる奏江がいた。
『もう結構遅い時間なんだから、さっさとご飯食べてキリキリ寝るっ!』
『うん、分かった、すぐ行く!』
そういうとキョーコはすっと立ち上がり、奏江の元へ向かおうとした。あまりの切り替えの早さに連が戸惑っていると、『敦賀さんも早く行きましょう。モー子さん怒らせると怖いんですから。』とウィンクを飛ばす。そんなはしゃぎ方をするキョーコにつられて蓮の気持ちも軽くなる。ゆっくり立ち上がるとパタパタと先に階段を駆け下りていったキョーコに続いて階下のリビングを目指す。
階段を駆け下りたキョーコは甘える子猫のように奏江にまとわりつく。
『ねぇねぇ、モー子さん。今夜は泊まってくれるんでしょ?』
『もう、じゃれないで、気持ち悪いからくっつかないでよ、モーっ!なんでよ、モーっ!ご飯を食べたらちゃんと帰るの!』
キョーコはめげずにまとわりつく。
『なんでぇっ?もう遅いし、お泊りしようよ。朝食は私が作るからね!!』
『いらないわよ、あんたのご飯食べたら太るでしょ!』
奏江は無駄と解りながらも必死にキョーコを剥がそうとする。だがキョーコはなかなか剥がれない。
『えっ、そうなの?これからはカロリー計算頑張りから、お泊りしてぇっ!!』
「そうよ、結局食べ過ぎちゃうのよ!だから太るのっ!私は年中ダイエット生活なんだから!』
『ん~、一日ぐらいいいじゃない、お泊りしようよ!』
一瞬、奏江を取り巻く空気が冷たくなった。
『あんた、それ以上しつこいと親友やめるわよ...』
今までの怒鳴り声とは違うひんやりした低い声はキョーコを固まらせるには十分だった。
『ほら、早くご飯食べて、私は変えるわよ。明日も仕事はやいんだから。セバスチャンが送ってくれるらしいから。』
奏江はキョーコが固まった瞬間を逃さずにキョーコを剥がし、そのままずんずんリビングに入っていった。残されたキョーコは棒立ちで、少し体が震えている。
『....怖かった.....』とても小さな独り言
『親友やめる・・・・いやぁぁぁぁぁぁ!!』
養成所仕込みの絶叫がゲストハウスを揺るがした、
キョーコはバタバタとリビングに駆け込み、今度はまとわりつく一歩手前で奏江に涙目で尋ねる。
『親友....ヤメるの?』
『あんたがしつこくすれば、ね。』
『しないから....』
『本当かしら?』
『しない、しない!絶対にしない!』
『なら考えとく。』
『考えるの?考えなきゃならないことなの?』
『あんた次第よ。』
『.....頑張る...から...(グスン)』
『泣いたら絶好よ。』
『絶好いやぁぁぁん!!』
『ならおとなしくご飯食べなさい!』
『はい。』
おとなしくテーブルの定位置につくキョーコ。今日はいつの間にか帰ってきていたセバスチャンが三人分の食事を用紙してくれていた。遅れてリビングに入った連は奏江の横に座ってニコニコ顔でいるキョーコを見て思わず嫉妬していた。じゃれてなつくキョーコとそれを拒んでうまく交わしながらもまんざらでもない奏江。奏江が男でなくて本当に良かったと思う蓮だった。
蓮はキョーコの頬に触れたいという衝動を一生懸命理性で抑えでいたが、なけなしの理性は恋する男の本能には抗い続けることなどできるわけもなかった。無意識にキョーコの頬を目指す指先。ついさっきまでキョーコを傷つけてしまったことを必死に誤っていたのと同一人物の所業とは思えないその行動...。
蓮の指先があともう少しでキョーコの頬に触れそうな時、キョーコがまたひとつ小さなため息を付いた。その息遣いに蓮はハッとして我に返り、不自然に伸びていた自分の右手をみて驚いてしまった。
キョーコはこんな蓮に気づくことなく未だに施行の小部屋に滞在しているようだった。
『京子さん、どうしたの?』と声をかければ『ふぇっ?』っと素っ頓狂な返事が帰ってきて、思わず蓮は笑ってしまった。呼ばれたことで施行の小部屋から出てきたキョーコは自分の名前を読んでおいてくすくす笑っている蓮に抗議を試みる。
『つ...敦賀さん!』
『クスクス、ごめんょ....君の反応が(クスっ)あまりに天然で....(クスっ)ついて...くすくす』
『ひどいですよ、敦賀さん。そんなに笑わなくても......』
『うん....もう...大丈夫....(クス)おちついて...北から....クスクス....だ、ダメださっきの!の顔を思い出したら...くっ、くっ、ぐはははは!!』
とうとう蓮は噴出し、大きな声を出して笑い始めた。キョーコは『もう、知りません!』と怒って背中を見けてしまうが、蓮はなかなか笑いの呪縛から抜けだせない。さっきとはまた別の意味で『敦賀蓮』のあるまじき姿に背中を向けたままのキョーコはホッとまた小さなため息を漏らす。
連が目に涙を浮かべて笑っている間、キョーコは背中を向けたまま蓮の存在を身近に感じていた。こんな風に笑ってくれるならいいかもと思う。設定上、いつもクールで大人で春風のような人『敦賀蓮』が心の底から面白いと涙を浮かべながら笑っている。この人にもこんな素の時間が必要なのだと思う。そして、その素の時間を共有腕着ている自分を嬉しく思う。その喜びを幸せというのだと、今のキョーコは素直に受け止めることができる。こんな時間が誰もが欲しがる幸せな時間なのだろうと、漠然とだが感じて、キョーコは起こっているはずの顔が緩むのを止められない。
ようやく笑い疲れた連がキョーコに声をかける。
『京子さん、ごめん。機嫌直してくれないかな?』
『嫌です!』
連があまりに素直にお願いしてくるのでちょっと意地悪を言ってみる。
『そんな....、お願いだから機嫌直して....ください?』
『ダメです。笑いすぎですからっ!』
怒っているセリフなので全然怒りが言葉に乗らない。これではばれてしまうとキョーコは内心焦る。
『お願いs、京子さんの言うこと聞くから....』
キョーコの背中に何かが当たる。多分蓮の頭だろう。
『反省してますか?』
『はい』
『もう笑いませんか?』
『大丈夫、もう落ち着いた。』
蓮の方に体の向きを変えると、連が大きな体を出来るだけ小さく縮めて、「待て」の姿勢で座っている。
大きく垂れた耳とふさふさで大きな尻尾の幻が見えるのがきっとキョーコだけだ。
(レトリバーみたい....可愛すぎる....)
キョーコは頭のなかで絶叫するがそんなことお首にも出さずにじっと蓮を見る。
『本当ですか?』
『本当に。』
『本当に、本当ですか?』
『本当に本当です』
『本当に、本当に、ほんと...『あんたたちいい加減にしなさいよ!!』....モー子さん?』
突然会話に割り込んできた怒鳴り声に声の主を探せば、階段の下に仁王立ちになってこちらを睨んでいる奏江がいた。
『もう結構遅い時間なんだから、さっさとご飯食べてキリキリ寝るっ!』
『うん、分かった、すぐ行く!』
そういうとキョーコはすっと立ち上がり、奏江の元へ向かおうとした。あまりの切り替えの早さに連が戸惑っていると、『敦賀さんも早く行きましょう。モー子さん怒らせると怖いんですから。』とウィンクを飛ばす。そんなはしゃぎ方をするキョーコにつられて蓮の気持ちも軽くなる。ゆっくり立ち上がるとパタパタと先に階段を駆け下りていったキョーコに続いて階下のリビングを目指す。
階段を駆け下りたキョーコは甘える子猫のように奏江にまとわりつく。
『ねぇねぇ、モー子さん。今夜は泊まってくれるんでしょ?』
『もう、じゃれないで、気持ち悪いからくっつかないでよ、モーっ!なんでよ、モーっ!ご飯を食べたらちゃんと帰るの!』
キョーコはめげずにまとわりつく。
『なんでぇっ?もう遅いし、お泊りしようよ。朝食は私が作るからね!!』
『いらないわよ、あんたのご飯食べたら太るでしょ!』
奏江は無駄と解りながらも必死にキョーコを剥がそうとする。だがキョーコはなかなか剥がれない。
『えっ、そうなの?これからはカロリー計算頑張りから、お泊りしてぇっ!!』
「そうよ、結局食べ過ぎちゃうのよ!だから太るのっ!私は年中ダイエット生活なんだから!』
『ん~、一日ぐらいいいじゃない、お泊りしようよ!』
一瞬、奏江を取り巻く空気が冷たくなった。
『あんた、それ以上しつこいと親友やめるわよ...』
今までの怒鳴り声とは違うひんやりした低い声はキョーコを固まらせるには十分だった。
『ほら、早くご飯食べて、私は変えるわよ。明日も仕事はやいんだから。セバスチャンが送ってくれるらしいから。』
奏江はキョーコが固まった瞬間を逃さずにキョーコを剥がし、そのままずんずんリビングに入っていった。残されたキョーコは棒立ちで、少し体が震えている。
『....怖かった.....』とても小さな独り言
『親友やめる・・・・いやぁぁぁぁぁぁ!!』
養成所仕込みの絶叫がゲストハウスを揺るがした、
キョーコはバタバタとリビングに駆け込み、今度はまとわりつく一歩手前で奏江に涙目で尋ねる。
『親友....ヤメるの?』
『あんたがしつこくすれば、ね。』
『しないから....』
『本当かしら?』
『しない、しない!絶対にしない!』
『なら考えとく。』
『考えるの?考えなきゃならないことなの?』
『あんた次第よ。』
『.....頑張る...から...(グスン)』
『泣いたら絶好よ。』
『絶好いやぁぁぁん!!』
『ならおとなしくご飯食べなさい!』
『はい。』
おとなしくテーブルの定位置につくキョーコ。今日はいつの間にか帰ってきていたセバスチャンが三人分の食事を用紙してくれていた。遅れてリビングに入った連は奏江の横に座ってニコニコ顔でいるキョーコを見て思わず嫉妬していた。じゃれてなつくキョーコとそれを拒んでうまく交わしながらもまんざらでもない奏江。奏江が男でなくて本当に良かったと思う蓮だった。