俺は最上さんの頬を包んでいた手を離し、また彼女の前に跪いて、出来るだけ優しく笑いかけて彼女の答えを待つ。さりげなく彼女の右手を取る事も忘れない。彼女は何度か瞬きをして、俺を何か言おうとして息を吸い込み、少し固まって俯いてしまう。そして目を閉じて息を吐く。また俺を見上げて息を吸い、また固まって俯いて…と何度か繰り返して、それでも意を決したように俺をみた。彼女が椅子から立ち上がったので俺もつられて立ち上がる。今度は彼女が俺を見上げる形になり、彼女は呟く。

「私の…王子…様…」

それが限界とばかりに彼女の体がぐらりと揺れた。俺は掴んでいた彼女の右手をぐっと引き寄せてその華奢な体を受け止める。意識を手放してしまった彼女を横抱きに抱き上げてパーティー会場を後にした。先程までいた控室に入ってソファに彼女を横たえる。その前に座り込んで彼女の柔らかい髪の毛を弄んでいると意識を取り戻した彼女の目がうっすらと開かれた。

「やぁ、お目覚めですか、お姫様?」
「つ、敦賀さん…、私…?」
「俺の告白が刺激的過ぎて気を失ったんだよ。ゴメンネ?」
「えっ、私…。」
「出来れば返事を聞かせて欲しい。」
「…私でいいんですか?」
「君がいいんだ。」
「私は…」
「うん」
「こんな素敵なプレゼントをいただいちゃっていいんですか?」
「貰って…くれるの?」
「はい、もう返したりできませんから。」
「返品も受け付けないよ?」

そういうと彼女はクスッと笑った。俺もつられて笑う。小さな笑い声は大きくなって、二人で一頻り笑った。笑いが落ち着くとソファから体を起こそうとする彼女を手伝ってソファに座らせて俺も隣に座る。彼女の肩を抱き寄せると彼女は俺に体重を預けてくれる。その重みに今まで知らなかった幸せを感じた。

今日のこの日が俺達の恋人記念日。これから毎年今日の出来事を思い出して二人で笑えるであろう未来を想像するだけで俺は幸せな気分になる。隣にいる愛しい彼女と歩むこれから。
今日は君のお誕生日。そして俺達の大切な記念日。俺は君の傍で、君は俺の傍で、新しい毎日を重ねていこう。

そして毎年願うんだ。
『お誕生日おめでとう。これからの一年が俺達にとって素敵な毎日でありますように。』

End