主役二人の登場にパーティー会場は盛大に盛り上がる。
蓮とキョーコは最初に新開監督の所へ挨拶に行き、共演者やスタッフ達のところを回って予め指定されたテーブルに落ち着いた。
貴島と逸美も同じテーブルについて、暫く談笑していたが、司会者の言葉をきっかけに打ち上げパーティーは開催された。

「今回は皆さんお疲れ様でした。俺もかなり楽しく撮影できたよ。色々あったがしっかりここまでたどり着けた事を関係者みんなに感謝します。」
新開監督の挨拶に会場が沸き上がる。そして、参加者全員が立ち上がり、新開監督の声に合わせてグラスを重ねる。

「乾杯っ!」

あちこちでグラスを合わせる音と笑い声、会場全体に響く拍手。大きな仕事を終えた達成感と次の仕事に向けての意気込みを胸に楽しい一時を過ごした。

番宣の収録も終え、パーティーは二次会へと舞台を移そうとしていた。キョーコは逸美に誘われて二次会に参加するかどうかを悩んでいたが、すっと近づいたセバスチャンにローリーからの呼び出しを告げられて蓮と二人帰る事となった。
テンのワゴン車の中で蓮とキョーコに戻る。キョーコは一気に緊張が解けて備え付けの椅子に深く座り込んでため息をついた。

「疲れた?」
そこにやってきた蓮が気遣わしげに声をかける。
「あ、いえ、あの…少しだけ。」
「クスクス、たくさん人がいたからね。さぁ、ぞろぞろ社長宅につく。行こうか?」
すっと差し出された蓮の右手にキョーコは自分のそれを重ねる。すると蓮がその手を掴んですっと引き起こしてくれる。立ち上がり足元をふらつかせたキョーコを蓮が咄嗟に抱き寄せて、自分の胸の中にキョーコをすっぽり納めてしまう。
「あ、あの、すみません…」
「大丈夫。やっぱり相当疲れてるんだろう。支えててあげるから俺にもたれているといいよ。」
というとキョーコの腰に手を回して体を寄り添わせる。「そんな…、自分で歩けますから…」と最初は抵抗して離れようとしたキョーコだが、蓮に腰をとられて身動きできない事と、蓮の安心できる香に体の力が抜けてしまった事で、諦めて蓮に凭れかかったままエスコートされる。蓮はキョーコの体の温もりと程よい重みに満足してゆっくり歩き始める。
二人は口にこそ出さないがローリ―に呼ばれた事に不安を抱いていた。今度は何を言われるのか、どんな指示が出るのか検討まらつかない。いや、考えるゆとりがない。だからこそお互いにお互いの温もりを感じていたかった。