蓮の優しい仕草と優しい言葉にキョーコは涙が止まらなくなってしまった。

「勘違い…しても、いいんですか?」やっと聞き取れるほどの小さな声でキョーコはそう問いかける。
「うん、もちろん。でもね…」
「…っ、でも…?」キョーコの背中には冷たい汗が伝う。今期待してしまった分奈落の底まで突き落とされるのではないかと、キョーコは一気に青ざめる。

「うん。でも、勘違いじゃないから…。」蓮はそう言って、キョーコの手を取る。そしてその掌に唇を押し当てて上目遣いでキョーコを見上げる。

「わた…、私なんて…、「ん?」地味で…色気の欠片もなくて…「うん」なんの取り柄も…なくて「うん」、バカで、…」
「うん、知ってるよ。」
「こんな私の…どこが…何が…」キョーコは溢れつは頬を伝う涙を拭う事もせずに自分を卑下する言葉をならべようとする。
そんなキョーコに蓮はニッコリと神々しいまでの笑顔を見せる。
「それ全部を含めて君だろう?」
「えっ?」
「俺が感じてる君の魅力ならたくさんあるよ。どこが好きかと聞かれたらちゃんと答える事もでしる。でも、三日三晩は覚悟してもらわなくちゃいけないけど、大丈夫?」
「…っへっ?!」
「そう、例えば今の驚いて涙まで引っ込んでしまった顔も大好きだ。」
そういうと、蓮はとっていたキョーコの左手をかるく引いてキョーコの目尻に残っていた涙を唇で拭う、そしてそのままキョーコ自分の胸に引き寄せて、その腕の中にすっぽり収まってしまう華奢な体を、蓮は壊さないようにそっと包み込む。
キョーコは不意に感じた引力と衝撃に驚き、次に与えられた温もりと軟らかい香にほぉっと小さくため息を溢す。惜しげもなく与えられる蓮からの温もりに溺れそうになりながら、蓮の行為のスマートさに悔しさを否めない。けれど、蓮の腕の中はとても居心地が良くて、ほんの少しだけ…と目を閉じて蓮の胸に体を預ける。すると聞こえてき蓮の鼓動があり得ないほど速鐘を打っている事に気づく。自分の感情に振り回されて今まで気付かなかったが、蓮の手が少し震えている。腕の中から見上げるとキョーコの反応を待ちながら甘えるような許しを乞うような蓮の顔に出会う。
そういえばさっき、手に受けたキスは手の甲ではなく掌にだった。懇願の意味を表すキスの後に見上げてきた蓮の目は少し不安げだったような気がする…。

「私で…いいんですか?」
「君でなきゃダメなんだ。」

キョーコは蓮の胸の中でまた泣いた。