side社

「蓮がね、お嬢さんが共演者だって知った時に言ってきたんだ。一組だけのペアにしてくれってね。」
蓮はばつが悪そうにそっぽをむいた。
「シリアルナンバーを見てごらん?」
キョーコちゃんは鞄からiPoneを出してナンバーを見る。
『armandy 00000-F Kyoko』
意味がよく解らない。
「連のもみせてやれよ?」ジョンに言われて蓮は渋々iPoneを出す。
『armandy 00000-M Ren』

同じものをナンバーで性別の区別になっている。これだけでは何が一組だけなのかが解らない。
ジョンが続けたんだ。
00001からは全部続き番号で2万個作って続き番号で発送するんだ。」

そうか、蓮とキョーコのペアが正真正銘唯一のペアって事か。蓮、お前は…。
キョーコちゃんは自分のケースと連のケースを交互に見比べてアダプタしだす。
「これって本当に敦賀さんとお揃いなんですか…?」と蓮を見上げる。すると蓮は「迷惑…かな?」としゅんとした顔のままに問いかける。キョーコちゃんはハッとしてフルフルと首を横にふる。
「それならいいんだけど…。」とボソッと呟いく蓮はまだしゅんとしている。
「いえ、迷惑だなんて…。私ごときには勿体無いです!」と恐縮している。
「迷惑で無ければ使ってね。」とやっとにこやかに言う蓮にキョーコちゃんは「はい。」と答えてうっすらと頬を染めた。キョーコちゃんのその顔は蓮じゃなくても見惚れてしまうよ。お願いだから蓮以外には見せないでね、キョーコちゃん。

「ギャラ代わりに今日のその衣装は持って帰ってくれ。カジュアルだけどとりあえずは高級品だ。俺の見立てだからおしゃれだろ?」とのジョンの言葉に蓮は素直に受け取る事にしたようだ。その理由の一つに、今のキョーコちゃんが着替えをするのが大変そうだという事も含まれているはずだ。
「それから…、次のCM、またお嬢さんが共演してくれたら嬉しいな。考えといてくれよっ。」と言ってジョンは立ち去った。

ジョンの背中を見送った後、蓮はキョーコちゃんに尋ねる。
「まだ足は震えてる?」
「えっ、いえ、あの、…はい。」キョーコちゃんはまた俯いてしまう。
「なら、送るよ。」と言って蓮はひょいっとキョーコちゃんを抱き上げて歩き出した。
「おい蓮、俺はここで解散だ。ちゃんと送ってあげてくれよ?」と言ってその場を離れた。蓮、そろそろ頑張れよという言葉はあえて口には出さなかった。