sideキョーコ
「敦賀さん、ありがとうございました。」とお辞儀をすれば「お疲れさま」と優しい声が返ってきた。
「もう少しだけ恋人気分でいてもいいかな?」と言うが早いか、敦賀さんの腕が私の腰をしっかり捕まえてスタジオの出口の方へ歩き始める。私は凄く動揺して、でも、拒む事はできなかった。
「あ、ありがとうございます…」と俯いたまま小さな声でお礼を言って付いていくのがやっとな私。でも、尊敬する大先輩に凭れたりしてはいけないと必死に体制を建て直そうとする。するんだけれど、どうしても上手くいかなくて敦賀さんに凭れる格好になってしまう。
うわぁ、どうしよう。凄く失礼よね、私!それに、敦賀さんのこの香にあてられてこのまま離れたくなくなりそう。ダメよダメ、早く一人で歩きなさいっ、キョーコっ!
頭の中でぐるぐる考えていたら優しい声が降ってきた。「大丈夫だよ、お嬢さん。体預けて。」
どうしてわかっちゃったんだろうな。一気に緊張が解けて足にうまく力が入らないって事。
私は無駄な努力を諦めて敦賀さんの居心地のいい腕に甘える事にした。これも役得よね。
いっそいつまでも楽屋にたどり着いたりせずにずっとこんな風に敦賀さんに寄り添っていたいと思うくらいは許されるのかしら。
敦賀さん、もし私がそう言ったらあなは二度とこんなふうに優しくしてくださらないかもしれませんね?
そんな事を考えて、胸の奥がちくりと傷んだけど、気のせいと決め込んで、今しか味わえない温もりに全てを預けた。
「敦賀さん、ありがとうございました。」とお辞儀をすれば「お疲れさま」と優しい声が返ってきた。
「もう少しだけ恋人気分でいてもいいかな?」と言うが早いか、敦賀さんの腕が私の腰をしっかり捕まえてスタジオの出口の方へ歩き始める。私は凄く動揺して、でも、拒む事はできなかった。
「あ、ありがとうございます…」と俯いたまま小さな声でお礼を言って付いていくのがやっとな私。でも、尊敬する大先輩に凭れたりしてはいけないと必死に体制を建て直そうとする。するんだけれど、どうしても上手くいかなくて敦賀さんに凭れる格好になってしまう。
うわぁ、どうしよう。凄く失礼よね、私!それに、敦賀さんのこの香にあてられてこのまま離れたくなくなりそう。ダメよダメ、早く一人で歩きなさいっ、キョーコっ!
頭の中でぐるぐる考えていたら優しい声が降ってきた。「大丈夫だよ、お嬢さん。体預けて。」
どうしてわかっちゃったんだろうな。一気に緊張が解けて足にうまく力が入らないって事。
私は無駄な努力を諦めて敦賀さんの居心地のいい腕に甘える事にした。これも役得よね。
いっそいつまでも楽屋にたどり着いたりせずにずっとこんな風に敦賀さんに寄り添っていたいと思うくらいは許されるのかしら。
敦賀さん、もし私がそう言ったらあなは二度とこんなふうに優しくしてくださらないかもしれませんね?
そんな事を考えて、胸の奥がちくりと傷んだけど、気のせいと決め込んで、今しか味わえない温もりに全てを預けた。