side キョーコ

黒崎監督って無茶ぶりしすぎよね。場所と状況と条件だけでアドリブだけなんて、こんな私ごときには高すぎるハードルだわっ。でも、相手が敦賀さんなら敦賀さんに誘導されちゃえば軽くクリアできるのかしら…。
って、だめよキョーコっ!そんな他力本願で薄っぺらい演技なんてできないわ。誰がいいと言っても敦賀さんに見透かされて見捨てられちゃう。
敦賀さんはきっかけは作るっておっしゃってくれたけど、あの人を満足させる事の出来る演技で応える事ができるのかしら…。
この彼女、彼に不安と不満があるんだ。ても、上手く聞き出す事も出来ずにいるのね。男の人ってあんまり自分の気持ちを言わないものなのね。だからといって態度で表してくれたりもしないし、不安になるのも仕方ないわよね。彼女はどうしたいのかしら?
彼のことは大好きなのよね?でも彼に好きって思われてる自信がない。そんな時期が長くなれば気持ちが重くなっちゃうわよね?
なんだかうまく表現できないけど、もやもやばかりが積もってきてるんだろうなぁ。一体私の事どう思ってるのよって聞きたい。でも、そんなこと悔しくて聞けやしない…。そんな頃にクリスマスパーティーに出かけたんだわ。特に何も期待はしてなかったはず。プレゼントも特別なものなんて考えもしない。そんな彼女に彼から手渡されたものは本当にシンプルなもの…。

そこまで考えて、私は自分がプレゼントをもらった事が殆どない事に気付いてしまった。ん~、解らない。どんなふうに感じてどんな気持ちになるんだろう。考えても解らないし想像するにもそんな要素が私のこれまでの人生ではなかった事だけにさっぱり解らない。ここまで考えて私は考える事を放棄してしまった。役作りなんてできそうにない。

最上キョーコが敦賀さんからプレゼントを貰ったら…あり得ないけど…今回は役得よね?
私は素の私が、最上キョーコが感じるままに動いてみようと決めて、腹を括った。