「蓮が『こんなのが欲しい』なんて言ってきたのは今回が初めてだからな。しかもかなり具体的だったからすぐに形にできたよ。」と笑うジョン。最近ではなかなか見ない全体をカバーするケースでクリアパネルをつけるってだけで分厚くなるのに背面をカードケースにするって事は二重になるって事だから素材を薄く強度を保つのがかなり難しかったと話すジョンだが、頼んでから一週間程度でサンプルを送りつけてきた彼の能力は底知れないと感じてしまう。
「いっそドッグタグか名札みたく首からぶらさげられるように紐でも付けてやろうかとも思ったんだが、敦賀蓮が首からiPoneなんてイメージ悪すぎるだろう?」と付け足すジョン。俺は自分がそうしている姿を想像して、首を横に振ってすぐにかき消した。
「それから、最初は1000個の予定だったんだが、20000個に変更だ。しかもペアな(笑)」とさらりと発せられたジョンの言葉に思わず目を見開いて「えっ?!」と声をだしてしまった。
「この企画が面白いって話になって、CM入れてペアのiPoneケースとしてクリスマス用にキャンペーン張ろうって事になったんだ。悪くないだろ?」
ただ驚いている俺の隣で社さんは至って冷静だ。この話を初めて聞くのは俺だけのようだ。
「悪いな、蓮。社長が黙ってろっておっしゃるもんだから…。」と申し訳なさそうな社さん。あぁ、なるほど、そういう事奈良よく解る。あの人は俺で遊ぶのが大好きだからなぁ。
「ちゃんとアポルさんにも内々で認証とってあるから堂々の正規品だ。細かいデザインとかはお前の意見を聞いてからって話になってたから、これでいいならすぐに取りかかる。」
俺はそのまま話をすすめてもらうようにジョンに伝え、ジョンはその旨を内線で指示してからソファに座り直した。
「蓮、お前の送ったのはサンプルなんだが、CMではシリアルナンバー00000を使ってもらうよ。」
「はい、ありがとうございます。」
「それと…、相手役の女優さんには…、蓮からの発案だから選ばせてあげるよ。」とにんまり笑われてしまった。も、もしかして…まさか、この人は俺の思惑を見透かしているのか?!
「あ、蓮。相手役の女優なんだけど、キョーコちゃんだからな。」「えっ…」
俺は頭の中が一瞬真っ白になった。頑張って再起動をかけて必死に考えを巡らせる。
「それならシリアルを…」
俺は今まで気づかなかったがお揃いが嬉しいようだ。