撮影中****
講義を受け終えて学舎内のカフェでまゆみは一息ついた。そんなまゆみの前にみのるが現れた。「やぁ」と声をかけてくるみのるに「こんにちは」と返すと自然な動きでみのるはまゆみの向かい側に腰を下ろす。「今日の講義は終わったの?」と聞けば「今日は一つだけだったから。」と返る。「俺も今日は終わりなんだ。」「そうなんだ。」「二回生まででかなりの単位をとっちゃったから受けなきゃならない講義は意外と少ないんだよ。」運ばれてきたコーヒーを一口飲んでみのるが話しかける。「私もそんな感じかな。」「空いた時間で就活とかしてるの?」「してないわ。今はあまり先の事が考えられなくて…。」「そっか。うちに来ない?」「クスッ。上野くんにも言われたわ。起業するんですってね。」「うん。もう基礎は大方出来上がりなんだ。クライアントもいくつか出来てるし。本格始動は卒業してからだけど、今も少しずつ仕事をしているんだ。」「凄いのねぇ。」「そんな事ないよ。俺は組織には馴染めないだろうからこういう形しか出来ないだけだよ。高橋さんを是非ともスカウトしたいんだけど、考えてくれないかな?」「……」「私には特技も才能もないから、貴方達と一緒にいても足手まといになるだけよ…。」「そんな事ないさ。高橋さんには俺達にない広い視野がある。俺達が見落としがちなものを見てくれる人材が欲しいんだよ。」みのるの口調は穏やかだがいつもより真剣な視線。今は本気で仕事の話をしているのだと解る。「俺は創る。クライアントの要望を形にするのが仕事さ。上野は俺の荒削りな形を綺麗に整えてくれる。高橋さんが来てくれたら、クライアントとの架け橋になってもらえると思ってるんだ。」「……。」まゆみは俯いてしまった。
「是非とも前向きに考えて欲しいんだ。」
まゆみは俯いたまま独り言のような小さな声で呟く。「…、私は…。……お…、するの…。」まゆみのその小さく消え入りそうな言葉をうまく聞き取れずにみのるは聞き返す。「えっ?今なんて?」
まゆみは俯いたまま黙っていたが、小さなため息をついて、意を決したように上を向いてみのるに視線を合わせた。
「私、お見合いするの。」
講義を受け終えて学舎内のカフェでまゆみは一息ついた。そんなまゆみの前にみのるが現れた。「やぁ」と声をかけてくるみのるに「こんにちは」と返すと自然な動きでみのるはまゆみの向かい側に腰を下ろす。「今日の講義は終わったの?」と聞けば「今日は一つだけだったから。」と返る。「俺も今日は終わりなんだ。」「そうなんだ。」「二回生まででかなりの単位をとっちゃったから受けなきゃならない講義は意外と少ないんだよ。」運ばれてきたコーヒーを一口飲んでみのるが話しかける。「私もそんな感じかな。」「空いた時間で就活とかしてるの?」「してないわ。今はあまり先の事が考えられなくて…。」「そっか。うちに来ない?」「クスッ。上野くんにも言われたわ。起業するんですってね。」「うん。もう基礎は大方出来上がりなんだ。クライアントもいくつか出来てるし。本格始動は卒業してからだけど、今も少しずつ仕事をしているんだ。」「凄いのねぇ。」「そんな事ないよ。俺は組織には馴染めないだろうからこういう形しか出来ないだけだよ。高橋さんを是非ともスカウトしたいんだけど、考えてくれないかな?」「……」「私には特技も才能もないから、貴方達と一緒にいても足手まといになるだけよ…。」「そんな事ないさ。高橋さんには俺達にない広い視野がある。俺達が見落としがちなものを見てくれる人材が欲しいんだよ。」みのるの口調は穏やかだがいつもより真剣な視線。今は本気で仕事の話をしているのだと解る。「俺は創る。クライアントの要望を形にするのが仕事さ。上野は俺の荒削りな形を綺麗に整えてくれる。高橋さんが来てくれたら、クライアントとの架け橋になってもらえると思ってるんだ。」「……。」まゆみは俯いてしまった。
「是非とも前向きに考えて欲しいんだ。」
まゆみは俯いたまま独り言のような小さな声で呟く。「…、私は…。……お…、するの…。」まゆみのその小さく消え入りそうな言葉をうまく聞き取れずにみのるは聞き返す。「えっ?今なんて?」
まゆみは俯いたまま黙っていたが、小さなため息をついて、意を決したように上を向いてみのるに視線を合わせた。
「私、お見合いするの。」