撮影中****
港から馬車道を通って国道を超え、少し進んだところにそのお店はあった。ひっそりとした佇まい、レトロな雰囲気のカフェ。入口の扉を押し開くと、カランカランと柔らかな音が出迎えてくれた。窓に面したテーブルに案内されて向かい合わせに座る。ちょうとあと二人分になったモーニングサービスを勧められるるままに注文して一息ついた。
「この道は私の散歩道なのにこんなお店があるなんて知らなかったわ。」と苦笑いするまゆみ。「地元なんてそんなもんだよ。」と上野が笑うと「そんなものかしら?」とまゆみは首を傾げる。「わざわざ自分の街のガイドブックを買う人も少ないんじゃない?」と笑い返す上野。まゆみはその言葉になんとなく納得してクスッと笑った。
程なく運ばれてきたトレイを見てまゆみは「美味しそうっ!」と嬉しそうに呟く。小皿に一口サイズのサンドイッチが数個、大きめの皿にはスクランブルエッグと彩りのいいサラダ。小さなカップにフルーツヨーグルト。そして飲み物があった。上野はサンドイッチを摘まんで口に放り込むともぐもぐと口を動かしている。その仕草にまゆみはクスッと笑うと自分の皿にあるスクランブルエッグにフォークを立てる。しばらくそんなのんびりした食事がすすむ。ある程度食事が進んで、先に話しかけたのはまゆみ。「仕事って言ってたよね?」「あぁ、そうだよ。」「何かアルバイトとかしてるの?」「いや、本業だよ。卒業したら本格始動するんだ。」
まゆみはよく解らないという顔で上野を見上げる。
「起業するんだよ。」「えっ?」「うん。割と前から企画してたんだけど、やっと具体的なビジョンが出来てきたから、このビジネスチャンスを活かそうと思ってるんだ。」上野はコーヒーを一口含んで続ける。「みのるとの出会いが起爆剤になったんだよ。あいつの企画、アーキテクチャ的センスは凄まじい。最初に会った時は『こいつムカつくっ!』って思ったものだよ。それはあいつもそうだろうけど。ゼミの共同課題であいつと組む事になって、俺達は渋々話をするしかなくなったんだけど…。」
まゆみは楽しそうに頷く。「喧嘩になったとか?」
「いや、あいつはいきなり課題の最終形態に思考が向かってて、すぐにフローチャートまで出してくるんだよ。俺は面食らいながらそれに目を通したらかなりハイレベルなんだよ。」「そうなんだ、凄いのね。」
上野は当時を思い出しながら話を続けた。
港から馬車道を通って国道を超え、少し進んだところにそのお店はあった。ひっそりとした佇まい、レトロな雰囲気のカフェ。入口の扉を押し開くと、カランカランと柔らかな音が出迎えてくれた。窓に面したテーブルに案内されて向かい合わせに座る。ちょうとあと二人分になったモーニングサービスを勧められるるままに注文して一息ついた。
「この道は私の散歩道なのにこんなお店があるなんて知らなかったわ。」と苦笑いするまゆみ。「地元なんてそんなもんだよ。」と上野が笑うと「そんなものかしら?」とまゆみは首を傾げる。「わざわざ自分の街のガイドブックを買う人も少ないんじゃない?」と笑い返す上野。まゆみはその言葉になんとなく納得してクスッと笑った。
程なく運ばれてきたトレイを見てまゆみは「美味しそうっ!」と嬉しそうに呟く。小皿に一口サイズのサンドイッチが数個、大きめの皿にはスクランブルエッグと彩りのいいサラダ。小さなカップにフルーツヨーグルト。そして飲み物があった。上野はサンドイッチを摘まんで口に放り込むともぐもぐと口を動かしている。その仕草にまゆみはクスッと笑うと自分の皿にあるスクランブルエッグにフォークを立てる。しばらくそんなのんびりした食事がすすむ。ある程度食事が進んで、先に話しかけたのはまゆみ。「仕事って言ってたよね?」「あぁ、そうだよ。」「何かアルバイトとかしてるの?」「いや、本業だよ。卒業したら本格始動するんだ。」
まゆみはよく解らないという顔で上野を見上げる。
「起業するんだよ。」「えっ?」「うん。割と前から企画してたんだけど、やっと具体的なビジョンが出来てきたから、このビジネスチャンスを活かそうと思ってるんだ。」上野はコーヒーを一口含んで続ける。「みのるとの出会いが起爆剤になったんだよ。あいつの企画、アーキテクチャ的センスは凄まじい。最初に会った時は『こいつムカつくっ!』って思ったものだよ。それはあいつもそうだろうけど。ゼミの共同課題であいつと組む事になって、俺達は渋々話をするしかなくなったんだけど…。」
まゆみは楽しそうに頷く。「喧嘩になったとか?」
「いや、あいつはいきなり課題の最終形態に思考が向かってて、すぐにフローチャートまで出してくるんだよ。俺は面食らいながらそれに目を通したらかなりハイレベルなんだよ。」「そうなんだ、凄いのね。」
上野は当時を思い出しながら話を続けた。