サイド蓮
俺は定位置でスタンバイする。貴島くんとキョーコちゃんが駅の方から歩いてくるのを待っている。なんだか俺は質の悪いストーカーみたいだ。学内から姿を消したまゆみと上野。それを知ってあちこち探し回るみのるの姿はみっともなくて情けないほどだった。そして通る確率の高い道で待ち伏せ。この男は危険だと思ってしまう。が、もしキョーコちゃんが同じような状況だったら…、俺は狂わんばかりの勢いで探しまくるだろう。みのるの気持ちがよく解る。
俺の乗った車は二人が通る道からは死角になっている路地。そこに頭から突っ込む形で停めている。シートを軽く倒して助手席側のサイドミラーで駅への道を確認している。そこに、仲良く歩いてくる二人を見つけた。キョーコちゃんのすぐ後ろで絶妙な距離を保つ貴島くんと、楽しそうに話しかけるキョーコちゃん。貴島くんが作る近すぎない距離がキョーコちゃんをリラックスさせて彼女をより自然にまゆみらしく演技させているようだ。俺がここで待機している事を知らせられていない二人は勿論俺に気づく事もなく通り過ぎる。車内に少しだけ二人の笑い声が聞こえる。内容までは聞き取れない。ただ、キョーコの鈴を鳴らすような可愛い声が俺の意識を支配する。俺はいったいどこまで彼女に溺れているのか…。正直なところ、役柄とはいえ、キョーコちゃんの隣に貴島くんがいる事からして不愉快だ。そこは俺が立つべき場所で、他の男は…いや、女性も…、何人たりともそこにいてはいけないっ!そんな理不尽な怒りを抱えてしまう。
こんな汚い感情や独占欲、キョーコちゃんが知ったら退かれてしまうんだろうな。それが怖いから俺は紳士を演じているんだ。こんな臆病者にしたのもキョーコちゃん、君なんだよ。
俺は小さくため息を吐き、出る準備を始める。車内でのみのるの様子は別撮りで、今はミラー越しの二人の姿をカメラが追っているそうだ。ただ、俺は『みのるとして待て』と指示を受けている。二人の様子を見てタイミングよく追いかけるのが俺の役目だ。この後二人は道なりに緩やかなカーブを曲がって俺の視界から消える。そうすれば車のエンジンをかけてゆっくり滑り出して二人を追いかけ、クラクションを鳴らしながら追い越して停まる手筈だ。運転席側のサイドミラーで二人を眺めていた。俺は今すぐにでも二人を追いたい気持ちを抑えてハンドルを握りしめていた。
俺は定位置でスタンバイする。貴島くんとキョーコちゃんが駅の方から歩いてくるのを待っている。なんだか俺は質の悪いストーカーみたいだ。学内から姿を消したまゆみと上野。それを知ってあちこち探し回るみのるの姿はみっともなくて情けないほどだった。そして通る確率の高い道で待ち伏せ。この男は危険だと思ってしまう。が、もしキョーコちゃんが同じような状況だったら…、俺は狂わんばかりの勢いで探しまくるだろう。みのるの気持ちがよく解る。
俺の乗った車は二人が通る道からは死角になっている路地。そこに頭から突っ込む形で停めている。シートを軽く倒して助手席側のサイドミラーで駅への道を確認している。そこに、仲良く歩いてくる二人を見つけた。キョーコちゃんのすぐ後ろで絶妙な距離を保つ貴島くんと、楽しそうに話しかけるキョーコちゃん。貴島くんが作る近すぎない距離がキョーコちゃんをリラックスさせて彼女をより自然にまゆみらしく演技させているようだ。俺がここで待機している事を知らせられていない二人は勿論俺に気づく事もなく通り過ぎる。車内に少しだけ二人の笑い声が聞こえる。内容までは聞き取れない。ただ、キョーコの鈴を鳴らすような可愛い声が俺の意識を支配する。俺はいったいどこまで彼女に溺れているのか…。正直なところ、役柄とはいえ、キョーコちゃんの隣に貴島くんがいる事からして不愉快だ。そこは俺が立つべき場所で、他の男は…いや、女性も…、何人たりともそこにいてはいけないっ!そんな理不尽な怒りを抱えてしまう。
こんな汚い感情や独占欲、キョーコちゃんが知ったら退かれてしまうんだろうな。それが怖いから俺は紳士を演じているんだ。こんな臆病者にしたのもキョーコちゃん、君なんだよ。
俺は小さくため息を吐き、出る準備を始める。車内でのみのるの様子は別撮りで、今はミラー越しの二人の姿をカメラが追っているそうだ。ただ、俺は『みのるとして待て』と指示を受けている。二人の様子を見てタイミングよく追いかけるのが俺の役目だ。この後二人は道なりに緩やかなカーブを曲がって俺の視界から消える。そうすれば車のエンジンをかけてゆっくり滑り出して二人を追いかけ、クラクションを鳴らしながら追い越して停まる手筈だ。運転席側のサイドミラーで二人を眺めていた。俺は今すぐにでも二人を追いたい気持ちを抑えてハンドルを握りしめていた。