二人は手早く支払いを済ませて、恥ずかしさから足早にドリンクコーナーを出て車に戻った。蓮が持つ想定外に大きな袋に社が笑う。「いったい何人分買ったんだよ?」
「キョーコちゃんが限定品に迷ったので…」「だから限定ものを全部買ったんだな。お前は相変わらずキョーコちゃんにメロメロだなぁ。」と苦笑を漏らす社。
「敦賀様、先日事故に会われた時もミネラルウォーターと限定の飲み物が二本ずつ車にあったそうですが…。」
「「「えっ!?」」」
蓮とキョーコ、そして社の驚きの声が重なる。社は蓮が持ってきたドリンクの袋を見て、嬉しそうな笑顔を浮かべる。いや、ニヤニヤ顔だ。蓮とキョーコは顔を見合わせて、さっきまでドリンクコーナーで交わした会話を思い出す。
「デジャブーっていうんですか?」「そうかもしれないね。」「でも、まんま同じ事をするなんて…クスクス」「俺達、本質は変わってないって事かな?」「はい、そうみたいですね?」「それに俺達…」「私達、本当に同じ時を過ごしてたんですね。」
「「ゴホン」」
あと少しで蓮とキョーコの距離がゼロになりかけた時、運転席と助手席から咳払いが聞こえて、二人はハッと我に返った。
「その限定のジュース、早く飲みたいんだけどな。キョーコちゃん、紙コップに分けてくれないかなぁ?」と人懐っこい笑顔を向ける社、後ろに座っている二人はばつが悪そうに苦笑いを浮かべている。キョーコは少し頬を赤らめながら社のリクエストに答えて紙コップに『限定』の飲み物を分け入れて社とセバスチャンに差し出す。それとミネラルウォーターを一本ずつ。その後に蓮に紙コップを手渡して飲み物を注ごうとすると、ボトルを蓮に奪われてしまった。どうするのかと見ていると、紙コップに飲み物を注いでキョーコに手渡し、自分はそのままボトルから直に飲み物を味わう。その流れるような仕草にキョーコは見とれていた。
蓮がボトルをくわえたまま目だけをキョーコに向けて『ん?』と首を傾げるとキョーコはぽっと頬を赤く染めて俯き、紙コップの飲み物を口に含む。ふわっと広がる果実の香りと喉を通る爽やかな炭酸の刺激に思わず「美味しい!」と蓮の方に笑顔を向ければ、蓮はその笑顔に射抜かれて無表情で固まってしまう。

そんな二人のやり取りをルームミラーで眺めながら、前列の二人はあからさまにため息をついてしまった。

「で、何があったんだよ。蓮、俺に解るように説明してくれるよな?」社の声に蓮は快諾した。