撮影中****
(上野の回想)
俺の中でまゆみちゃんが『特別』だって気付いたあの合コンの二次会に参加した時だ。カラオケに行くのに人数合わせで付き合わされた。女の子はそれなりにレベルの高い子達だったから、残りの二人はノリノリだった。女の子達もまんざらではなさそうな雰囲気だったので、それなりに付き合っておけばいいかなって程度に参加した。俺の隣に座ったのはショートヘアが結構似合う子。ちょっとまゆみちゃんに似てるかなって思って見ていた。残りの四人もそれぞれカップリング出来ているようなので俺は隣の彼女の相手をする形になった。
「上野くん、あのね?」「上野くん、これは?」「上野くん…」「上野くん…」
彼女は色々話しかけてくる。俺はいつものようににこやかに相手をしているが、やっぱり最近はうまく盛り上げられない。それどころか少しずつ不愉快を感じ始めた。彼女はちょっとまゆみちゃんに似ている。なのに仕草は全くの別人だ。行儀がよくないんだ。短めのスカートから伸びる長い足は必要以上に大きな動作で組み替えられる度に男どもの視線を集める。それを計算しているのか、視線が集まったタイミングで意味ありげにクスっと笑ったりもする。いつもならそれを糸口にしてうまくお近づきになるところなんだが、どうしてもそんな気になれない。逆に、そんな態度に嫌悪さえ覚える始末だ。
そして、気づけば違う事を考えていた。
『まゆみちゃんならどんなふうに座っているんだろう…』『まゆみちゃんならどんな表情でどんなものを飲んで…』
思考がそこに至った時、俺は驚いて、声にならない悲鳴をあげた。でも、そんな思考がとめられないままだった。
いきなりマイクを渡されて我に返った。流れてきたのはいつも歌わされている曲。俺がこの曲を歌うとかなりの確率でカップリング成功するのだそうだ。曲はバラード調で、想いの丈を歌に込めて歌う曲。俺はついさっきまで考えていたまゆみちゃんを思い浮かべて歌いきった。俺の歌は思いの外好評で、カラオケボックスを出てから他の二組のカップルは夜の街にそれぞれ消えていった。俺は隣にいた彼女と奴らを見送って歩き始めた。普段なら俺もお持ち帰りのパターンなんだけど、なんとなくまゆみちゃんに似ている彼女とこれ以上一緒にいたくないと思ってしまった。
「送るよ」
「えっ?」
彼女はこの後を期待していたようだが、俺はそのまま彼女の最寄駅まで送って家路についた。
(上野の回想)
俺の中でまゆみちゃんが『特別』だって気付いたあの合コンの二次会に参加した時だ。カラオケに行くのに人数合わせで付き合わされた。女の子はそれなりにレベルの高い子達だったから、残りの二人はノリノリだった。女の子達もまんざらではなさそうな雰囲気だったので、それなりに付き合っておけばいいかなって程度に参加した。俺の隣に座ったのはショートヘアが結構似合う子。ちょっとまゆみちゃんに似てるかなって思って見ていた。残りの四人もそれぞれカップリング出来ているようなので俺は隣の彼女の相手をする形になった。
「上野くん、あのね?」「上野くん、これは?」「上野くん…」「上野くん…」
彼女は色々話しかけてくる。俺はいつものようににこやかに相手をしているが、やっぱり最近はうまく盛り上げられない。それどころか少しずつ不愉快を感じ始めた。彼女はちょっとまゆみちゃんに似ている。なのに仕草は全くの別人だ。行儀がよくないんだ。短めのスカートから伸びる長い足は必要以上に大きな動作で組み替えられる度に男どもの視線を集める。それを計算しているのか、視線が集まったタイミングで意味ありげにクスっと笑ったりもする。いつもならそれを糸口にしてうまくお近づきになるところなんだが、どうしてもそんな気になれない。逆に、そんな態度に嫌悪さえ覚える始末だ。
そして、気づけば違う事を考えていた。
『まゆみちゃんならどんなふうに座っているんだろう…』『まゆみちゃんならどんな表情でどんなものを飲んで…』
思考がそこに至った時、俺は驚いて、声にならない悲鳴をあげた。でも、そんな思考がとめられないままだった。
いきなりマイクを渡されて我に返った。流れてきたのはいつも歌わされている曲。俺がこの曲を歌うとかなりの確率でカップリング成功するのだそうだ。曲はバラード調で、想いの丈を歌に込めて歌う曲。俺はついさっきまで考えていたまゆみちゃんを思い浮かべて歌いきった。俺の歌は思いの外好評で、カラオケボックスを出てから他の二組のカップルは夜の街にそれぞれ消えていった。俺は隣にいた彼女と奴らを見送って歩き始めた。普段なら俺もお持ち帰りのパターンなんだけど、なんとなくまゆみちゃんに似ている彼女とこれ以上一緒にいたくないと思ってしまった。
「送るよ」
「えっ?」
彼女はこの後を期待していたようだが、俺はそのまま彼女の最寄駅まで送って家路についた。