撮影中****
(上野の回想)
上野は今までまゆみの事を『みのるが気にしている相手』としか思ってなかった。いや、それ以上に思ってはいけないと思い、一定の距離を保っていた。それは、ずっと人を遠ざけて来たみのるが初めて心を許した女性だからだ。これまでみのるとは長い付き合いになるが、上野でさえある一定のところからはみのるのコアには近づけなかった。だが、まゆみはその見えない障壁をあっさりと越えて、上野よりもみのるに近い位置に立っている。いや、何よりそれをみのるが望んでいる。その事実に上野は嫉妬めいた感情さえ抱いていた。だが、まゆみを含めて三人でいる機会が増え、折に触れてまゆみを知る内にまゆみに興味を持っている自身に気づいてしまった。上野は焦る。友達と同じ相手に興味を持つなどという事は今までなかった。自分が狙っている女性を気にしている友達がいれば一線を退いて後方支援にまわったりする程にいつもゆとりを持っていた。なのに、今目の前で初めて来るのだという場所でオロオロしながら楽しそうにしているまゆみから目が離せない。みのるの思い人だと解っている。これまで、二人がはやく纏まるようにと後方支援に徹してきたはずの自身が信じられない。もしかして自分はこの状況を予想して、そうなる前に二人が纏まる事を望んでいたのかもしれないと思う。そうでなければあれほどみのるを煽るような事はしなかったのではないか、と…。なのなみのるは『大切な相手は作らない』とまゆみとの距離を詰めようとはしない。まゆみはまゆみでみのるの気持ちを知ってか知らずかみのるとの『いい関係』を保っている。そんな二人に焦れつつ、上野だけが自分の気持ちと向き合っていた。
そんな上野でさえ、まゆみの存在が大きくなっている事に気づいたのはつい最近の事。今までと同じように合コンだ飲み会だと出掛けてはいるが、そこにいる女性に全く興味を持てなくなってしまった。女性側から二次会に誘われたり連絡先の交換を申し出られたりすれば応じるが、自分の方から声をかけたり連絡したりする事はなくなった。最初は自分でも不思議に思っていた。体調のせいか、面子のレベルのせいかとも思っていた。周りの男性陣からも贅沢者扱いされる。うまくまとめ役に回るので感謝される事も多くなった。だが、上野自信は自分のノリの悪さの理由が解らずにかなり困惑していた。『俺、どっか悪いのかなぁ』と一人でごちる程度には悩ん