台本が大きく路線変更をしたにも関わらず撮影は順調に進み、ほぼ予定通りの時間に終わった。蓮もキョーコもまだ仕事をセーブしているため、午前中のドラマの撮りだけで1日の予定を終了。セバスチャンの運転する車でゲストハウスにってきた。セバスチャンと社は事務所に戻ってスケジュール確認をするといって出ていった。キョーコは遅めの昼食の支度をする。蓮が何気なく点けたテレビではワイドショー番組が始まっている。

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リポーター『スクープですっ!先日、不運にも事故にあわれた敦賀蓮さんですが、復帰会見直後に受けた雑誌の取材で凄い発言をされていた事が判明いたしました!』

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リビングのソファでゆったりとテレビを眺めていた蓮はクスッと苦笑を漏らした。そこにキョーコが昼食の乗ったトレイを持ってやってきた。
「ありがとう」とキョーコからトレイを奪い、蓮はお皿をテーブルに並べる。テレビではスクープだと言って熱っぽく伝えるリポートが続いている。

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今からお聞かせするのは、ファッション雑誌の取材場面でのボイスレコーダーに残された内容です。当初、出版社側からは直ぐにでも公表したいと事務所側に交渉したのですが、事務所の方からなかなか許可が降りず、半ばお蔵入りを覚悟していた沿うです。しかし、今話題のドラマも放映が始まりまして、巷の評価も変わってきただろうという事でやっと公表の許可を得ました!

まずは当時の復帰記者会見の模様からご覧いただきましょう。******

リポーターがそういうと、あのキョーコにとっては辛いだけだった記者会見の映像が流れた。あれから約2ヶ月、今でさえ記者達の心ない質問の言葉はキョーコの胸をしめつける。そして、画面では徐に立ち上がる蓮、そしてそれに続いて立ち上がるキョーコと主任達。謝罪の言葉を述べて逃げるように壇上を後にする四人の姿がまるでリアルタイムの映像のように映されている。

蓮は見るではなくその映像を見ていたが、少し離れて座っているキョーコがあの日のように固まっている事に気づいて、その震える肩をそっと抱き寄せる。キョーコは蓮のその行動に一瞬大きく肩を揺らしたが、それでも離れようとしない蓮の温もりに身を委ねるように凭れかかった。
「嫌なことを思い出させてしまったね…、ごめん。」「い、いえ…っ、はぃ」力なく返事を返すキョーコを蓮はそのまま支えるように抱き締めていた。